四天王
「なぁ、何でウチには四天王とかがいないんだ?」
「……四天王、ですか?」
「そう。やっぱり勇者が魔王を倒すって言ったら、その前に幹部とか四天王とか、そういうのを倒すもんだろ?」
「確かに、何代か前まではそのような者もいたようですが……100年に一度勇者が来る度に戦わないといけないので、志願者がいなくなって廃止したとか」
「むぅ……そういえば、今までの歴代魔王は勇者に勝ったことあるのか?」
「ありますよ」
「え、あるの!?」
「大体、一人の魔王が勇者と戦うのは四回から五回くらいで、そのうち半分は勝っていたようですね。無敗伝説を築いた魔王もいます」
「ええっ!? もしかして、勇者にあっさり負けたのって俺だけ!?」
「そこまでは分かりませんが、少なくとも、全敗だった魔王はいないですよ」
「まずいな……このままだと俺は全敗王になってしまう!」
「一戦一敗なら、それほど残念な戦歴ではないと思いますが」
「それならまだいいけど、もし次に来た勇者に負けたら流石にやばい気がする」
「ですから、勇者はもう来ませんよ」
「いや、分からないぞ。まだ条約を結んでない国の方が多いし、この間だって数百年ぶりに突然来たんだし……こうしちゃいられない! 次の勇者が来る前に四天王を復活させないと!」
「自分が強くなるという発想はないんですか。それに、そんな面倒な役職に就きたがる物好きはいませんよ」
「二人くらいどうにかなる!」
「二人? 四人じゃないんですか?」
「ん? お前と弟と、あと二人」
「私は頭脳労働担当なので、遠慮します。それに、弟君はやめた方がいいですよ」
「なんで」
「弟君が勇者と戦ったら、むしろあの方が魔王として人間の歴史に名を残しますよ。それでは意味がないでしょう」
「あー……じゃあどうすればいいんだ?」
「ご自分が強くなるために99年間特訓するか、早く全ての国と平和条約を結ぶか、どちらかですね」
「むぅ……前者は続けられる気がしないし、後者だとやっぱり全敗王に……」
「いいじゃないですか、全敗王。後世に名が残りますよ」
「嬉しくない!」