完結編
「どうでした? 勇者との戦いは」
「酷い目にあった……魔王一人に対して四人で来るのは卑怯じゃないか?」
「勇者は大体いつも4人パーティですからね。でも善戦してたじゃないですか。一度惜しいところまで行きましたし」
「うーん……装備が整ってればもしかして勝てたんじゃ……」
「それはないでしょう」
「酷っ!」
「それに、勇者が卑怯なのは今に始まった事じゃありませんよ。常に四人で中ボスをタコ殴りにし、不法侵入と窃盗を繰り返し、道で出会った魔物からはカツアゲ等々……」
「むぅ……人間に危害を加えてない俺よりよっぽど悪人だな……」
「世界征服しようとしてたでしょう」
「まだ未遂だから、セーフだろ?」
「ですが、世界征服するならあの勇者一行を倒さなければなりませんよ。出来るんですか?」
「うーん……よし、俺今から勇者を倒す旅に出る!」
「魔王が勇者討伐の旅、ですか……ちなみに、何をどうやって旅していくつもりです?」
「そうだなぁ……三年かけて奴らを見つけ出して、その間にずっと詠唱を続けて、見つけた瞬間バーン! と……」
「いい加減その魔法から離れてください。自分も燃えますよ」
「だって、魔王にしか使えない禁断の魔法なんてカッコいいだろ!?」
「実用性は皆無ですけどね。詠唱は無駄に長いし、範囲は無駄に広いし」
「くそっ、分かったよ。ちゃんとレベル上げしつつ真っ当に旅するよ」
「魔物と戦う代わりに何と戦ってレベル上げするんですか」
「えー……その辺の盗賊とか、山賊とか……」
「ただの人助けの旅になってますよ。世界が平和になりそうですね」
「あれ? おかしいな……」
「いっそ、これを機に本当に人間と平和条約でも結びますか?」
「世界征服から遠ざかってないか?」
「いいじゃないですか、別に。平和条約が認められれば、いつでも好きなときに人間の国に行けますよ?」
「いや、別に人間の国に行きたいわけじゃ……」
「人間の国はいいですよ。食べ物は美味しいし、観光地もたくさんありますし」
「!!」
「どうします?」
「よし、俺は今から世界平和を目指す! すぐに書類の用意! あと、近隣の国に会見を申し込め!」
「はいはい」
完結編というサブタイトルですが、まだ続きます。