必殺(?)の魔法
「分かったぞ、世界征服の方法が!」
「……まだ諦めてなかったんですか」
「当然だろ。俺の長年の夢がもうすぐ実現しそうなんだぞ?」
「思いついたのはつい先日でしょう。それに、もうすぐどころか何もしてないじゃないですか」
「細かいことは気にするな。それより、この古文書を見ろ! 確かこのページに……ほら、『魔王のみが扱える禁断魔法』! これを使えば、一瞬にして一つの国を焼き払えるとか!」
「はあ」
「この魔法を連発すれば、世界征服なんてあっという間だな。ただ欠点は、呪文の詠唱一回に三年かかるんだよなー」
「普通に攻めた方が遥かに早いですね。一度その魔法を使ったら、次までの三年の間に人間が攻めてきて終わりですよ」
「やっぱりそう思うか」
「大体、焼き払ったら意味ないでしょう。征服したあと、統治するのは焼け野原だけですか?」
「……そ、そこまで考えてなかった……」
「だと思いました。そもそも突然世界征服なんて言い出したのも、世界の支配じゃなくて征服までの過程がやりたいだけでしょう」
「うん」(きっぱり)
「そんなことで無駄に人間の恨みを買わないでください。また100年に一度勇者が来るようになりますよ」
「それは困る……むぅ、じゃあどうすればいいんだ……」
「本当に世界征服がしたいなら、まず財政をどうにかして、征服後もちゃんと統治する覚悟を決めてください」
「金か……金なら何とかなるな。よし、今から時給のいいバイト探してくる!」
「魔王がバイトしてどうするんです?そこは人間から奪うとか家臣から搾り取るとか」
「なるほど。よし、小遣いくれ」
「……アホですか、あんたは」
「え、まずお前という家臣から金を巻き上げようと」
「根本的に色々と間違ってます。私から小遣いをもらっても潤うのは国の財政じゃなくてあなたの財布だけでしょう。やる気あるんですか?」
「当たり前だ。やる気が溢れて困ってるくらいだぞ。というかやる気しかないから何をどうするか分からないんだけどな!」
「自信満々に言うことですか。……はぁ……もういいです。今日は疲れたので帰ります」
「え、ちょっ、どこ行くんだよ!? 冗談だって!お――――い!」