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灯りが揺れていた

作者: お茶

灯りが揺れている。

ほんの少し揺れている。

吊るされた灯りが、よく見ると揺れている。

一日なにもしないで家でじっとしている罪悪感から逃げるため、相当な気力をもって外出してようやく入った喫茶店で小説を読むのに疲れて目を上げたとき、目の前で灯りが揺れている。電球を、茶碗で覆ったような型の灯りが四つ揺れている。


四つの吊るされた灯りはたまに同期して揺れる。かと思えばそれぞれ勝手に揺れる。あまり揺れたくなさそうな一つでも、ふと見ると一番大きく揺れている。でもやっぱり揺れるのが好きそうな一つがあって、そいつはだいたい揺れている。平均振幅なんて測ってみればきっとしっかり順位がつくだろう。


揺れているのは紐的なもので吊るされた灯りだけのようだ。

鎖的なもので吊るされた、麦わら帽子のような笠を着けた灯りは揺れていない。本当は揺れたいのに重い帽子が邪魔をしているように見える。じっとしているのは辛いだろうに。


四つの灯りに目を戻すと、なんと円を描くように揺れている!

左右に揺れているだけではなかった!

完全な正円ではなく楕円に見える。

人が歩くと大きく揺れる。

貧乏揺すりをしてみたり、念力を送ってみても揺れに変わりはない。やはり人が歩くと揺れる。しばらく人が歩かないでいてもほんのわずかに揺れている。


発見した当初の感動が一番大きいようだ。その後は確認的な意味での面白味があったり、新たな発見があったりするものの、初めが一番衝撃が大きかった。灯りが揺れていることに気がついたときが最も感動した。役に立つとはとても思えない無駄な発見であるのに感動したのだ。


他人の些細な発見は本当につまらないと思う。有用であるとか偉大であるとかの発見ですら、聞いた当初はそれを認めたくない。それが完全に無駄と思えるようなものならばもはや拒絶しないわけにはいかない。

「お腹を触るとだいたい冷たいんですよ!」なんて言われて触ってみると確かに冷たかったが、ふーんとしか言わなかったし思わなかった。

自分で発見したのならきっと感動したと思うのに。

今思えば、帽子を無理矢理被って揺れないふりをしていたのかもしれない。


既に私の興味は「他人の発見への無感動」へと移った。「灯りが揺れている」ことに対してふーんとしか思えない。少し前の自分の発見は他人の発見と等しいのかもしれない。

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