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6 ピクルスとスイカマシュマロ④~おまけ~

第3~6話【ピクルスとスイカマシュマロ】は、銘尾 友朗様主催「冬のドラマティック」企画の参加作品です。


 あるふたりの男たちの電話での会話。

 男たち、のはずなのだが、ひとりは薄桃色のひらひらのレースの服を纏っている。


――やあ、ステファン、俺の息子はどんな様子かな?

「もうステファニーよ、チャールズ」


――いつまでたっても慣れんものは慣れん。

「そう? ……あなたの所のレディック坊やは、頑張ったわよ」


――え!? じゃあ、もう誰か嫁候補を見つけたのか?

「ええ。奇跡的に良い女を落としたと思うわ。私が欲しいくらい」


――おい!?

「嘘よ~冗談よ~」


――少し脅してでも送り出して良かったな。俺は病気で時間がないから、今のままなら嫌でもビリーのとこの娘と結婚させると言ったら、青い顔してすっ飛んでったからなあ。あのわんころは。

「そりぁ、ビリーの娘って聞いたら奇跡でも起こしたくもなるわよね。熊を猟銃で仕留めたとか、あの男勝りの噂を聞けばね」


――ステファ……ニー、色々ありがとう。助かったよ。

「まあ、昔のよしみですもの。それにしても、男30にしてあの子は何なの? ピーターパン? 2ヶ月でピーターパンを大人の男にしてくれって、無謀なお願いをしてくるんだもの。最初はどうしようかと思ったわ」


――あれは、森の中で頭のネジを1本か2本落としてしまったんだろう。どうしてあんな育ち方をしたのか、まったくもって謎だ。まあ、俺にとってはおまえも謎だがな。……フック船長よ。鋭い鉤を隠して美形の手下を従え、ふんぞり返っているだろうが。ピーターパンにはフック船長がおあつらえ向きかと思ってな。

「せめてティンカーベルって言ってよ。この見た目なんだから」


――オッサンがティンカーベルって、ありえねェだろうよ。

「ま、ひどいわね。オッサンの人生は止めたんだから。……さあ、ピーターパンのほうは才女のウェンディを手に入れた。でも、冒険は終わらないわよ。これからが本番。現実よ」


――そうだな。少しは見届けられるかな。

「なに言ってんの!? 酷いなら早く治療しなさいよ。大痔主!! ちょっと尻から出血したくらいで大騒ぎしやがって、おまえのほうがレディックよりよっぽど気弱なわんころだ!! 痔くらいで死ぬか、アホ!」


――アホって、おまえ、男に戻ってるぞ~。痔はなあ、すさまじいほど痛いんだぞ~動けなくなるんだぞ!! 毎日トイレに行くたびに地獄の苦しみを味わうんだぞ!!!……




◇◇◇◇◇◇



 そのころ、マリサとレディックは……。

 レディックがマリサの部屋に泊まることになり、寝室に移動した所だった。

 ベッドに腰をおろしたふたり。


「今さらだけど、あなた大事なこと私に言い忘れてない?」

「へ?」

「わからない?」

「なんだろう?」

「とぼけてるんじゃ、ないわよね」

「ん?」

「もう! 本当はキスする前に言って欲しかったけど!?」

「え!? あれ? ぼく、あなたに愛してるって言ってなかった?」


(やっと察して、思い出してくれたわね、レディック)


「ええ」

「ごめん、もう心の中で何度も叫んでたから、言ったと思ってた」

「う……」


(この、30男~)


 マリサは悶えた。


「愛してる、マリサ。ぼくと結婚してください!」

「え!?」


(今度は指輪も無しで突然流れでプロポーズ?)


「あれ? 何か変だった?」


 レディックは面食らったマリサの表情を見て、キョトンとしている。


(だめだ、この人。何か……おかしい)


 クスクスとマリサは笑い出した。


「マリサ? 何がおかしいの!? ここは笑うところじゃないよね~」


 レディックは、身体を揺らすマリサの両肩を掴んだ。


「そうね、レディック。あなたと結婚してあげる」

「やった~、ありがとうマリサ!」


 レディックに抱きつかれたマリサは、バランスを崩しベッドにふたりで倒れこむ。


「じゃあ、マリサはどう? ぼくのこと好き? 愛してる?」

「愛してるわ。レディック」


 ベッドに倒れこんだというのに、大型犬は女主人の言いつけを清く守り、彼女を抱き枕のように抱えながら、ひとり柔らかな夢の世界へ旅立った。


「は~、なんておりこうなわんころなのよ。あなたは……」


 現実世界にひとり残されたマリサは、明るい茶色の毛並みを愛しそうに優しく撫で、長いため息を吐いた。


銘尾 友朗さま、この度は素敵な企画に参加させていただきまして心より感謝申し上げます。


企画からおいでいただいて、20000字越えのエピソードを最後までお読み下さった皆さま、どうもありがとうございました!


※ご興味がありましたら、本編【いつの日か、きみとサンタクロースと】もどうぞよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 仕事に誇りもあるしやりがいも感じているけれど、まっすぐで純粋で情熱的なレディックの言動にペースを乱されていくアラサーのマリサの心情描写が丁寧で引き込まれました! 筋が通って自立心があるけれ…
[良い点] 甘い!! 私には描けない世界観。 たっぷりと堪能させていただきました。 レディックのなんとも憎めないキャラクターがいいですね。 ふたりの掛け合いはもちろんですが、 台詞回しにもわざとら…
[良い点] まだ他のお話しを読んでいる最中ですがとても素敵なお話しでした。静かな雰囲気から可愛い展開にくる名木さまの構成がいつも好きで、今回も浸ってしまいました。 木のスプーンの渡すシーン。お礼はし…
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