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初めての金ペン

 初めて万年筆を手に取り数日後だっただろうか、父は書斎にわたしを呼び出した。

 そこで手渡されたのは─片手ほどの大きさの青い箱。


 「あけてごらんなさい。お前にやるよ」


 父の声に、その箱を恐る恐る開けてみる。


 中から出てきたのは、少し透き通った美しいワイン色の万年筆だった。

 ペン先は綺麗な黄金色をしている。M、と刻印がしてある。太さは中字を選んだらしい。


 万年筆を初めて手に取ってから、わたしも父親も万年筆に興味を持ち、万年筆について多少のことは学んでいた。

 だからこそ、その万年筆を見て、わたしはそれがすごい代物だと言うことに気づき、思わず声を上げた。


 「これ、金ペン!?」


 そうだよ、と父はあっさり首肯する。



 万年筆、と一口に言っても、ペン先の材質には大きく分けて2種類存在する。


 1つは「鉄ペン」と呼ばれるもので、その名の通り、ペン先が鉄をメインにした合金でできているため、安価に作ることができる。私が最初に購入したカクノも鉄ペンだった。

 一方、「金ペン」のペン先の素材のメインは金である。金は柔らかく劣化しにくいため万年筆として長持ちするし書き味がよく、使えば使うほど持ち主になじんでいく。しかし、当然金は高価なので(金の配合率にもよるが)、金ペンになると値段は最低1万を越す。


 そのワイン色をした万年筆のペン先には、「14K」と刻印がしてあった。


 そして父は同じ箱を取り出し、わたしに見せた。

 私に買ってくれた万年筆の色違い、限定品のスケルトンだった。

 

 父は併せて買ってくれたコンバーター(インク瓶のインクを吸入し、万年筆で使うためのもの)を万年筆に差し込み、父の愛用する黒のインクを吸入してわたしに渡した。

 そばの紙で試し書きをさせてもらう。


 今まで使っていたカクノの細字とは全く違う書き心地がした。

 ペン先は適度にしなり、柔らかい。筆跡に強弱もつけやすい。中字ゆえにインクの出が良く、全く引っかかりを覚えない。サラサラ、というよりも、ぬらぬら、と形容すべき、心地のいい書き心地。

 感動を覚えた。


 わたしはますます、万年筆の魅力に取り付かれていた。


万年筆の魅力に取り付かれてばかりです。


これからも万年筆の魅力に取り付かれていく話が続きます。

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