選定の炎
五国同盟から十一ヶ月。
人間界では第二の巨大生物を各国で相手にしていた。
一ヶ月前に現れた巨大生物は各国に辿り着く前に活動を停止した。そのため、被害は無いもののゼムレヴィンとの戦争を中断し各国は防衛に集中することとなった。
活動を停止したものを調べるとそれは、生物ではなく植物であることに気付いた各国はそれぞれの対応策が講じられた。そして、少しずつ国同士で協力し合う形ができ始めていた。
各国に階申を配置し、時間を掛けながら確実に巨大植物を迎撃することに成功していた。
しかし、ゼムレヴィンにはレナード以外の強者はいなかった。すぐにでも階申の誰かを呼び戻し、同じように迎撃することを強く勧めるべきだった。だが、それは必要ないとレナードが独断で判断した。
一人の強者が遠征を終え、帰ってきたのだ。
能力、聖炎。
手が届くまでに接近した巨大植物に対抗し、ロムはゼムレヴィン全体を白炎で覆った。薙ぎ払おうと手を振るうがそれよりも先に腕を焼き尽くした。巨大植物は攻撃を止め、空高く跳び跳ねた。全身でゼムレヴィンを押し潰そうと試みたのだ。
ロムは冷静に向き合い、意識を集中した。
「聖、真一文字」
対象の正面に高温高密度の白炎を生み出し、巨大植物を真っ二つに焼き切った。
「お見事です」
「はぁ、はぁ…。いいや…まだまだだ」
「遠征では魔法騎士団とともに、境界線での戦闘で多くの戦果を挙げたと聞いてますが?」
「それでもこの能力を完全には使いこなせてない」
「そうですか。では、これからはゼムレヴィンの防衛に専念してください」
「あぁ。…待て。もし、自分が戻っていなかったらどうするつもりだった?階申は誰もいないんだろ?」
「さぁ、その時になったら対処しますよ」
ロムの質問をレナードは受け流した。
◇◇◇◇◇
ロムはアイゼンの元を離れた後、敵地でひたすら戦い続けた。考えることを止め、ひたすら持っている力を振るった。
幾戦かして、ようやく気付いた。
いくら敵を倒そうが、虚しいだけだと。
ならば、自分が何のために生きるのか。何のために力を使うのか。
その答えは分からなかった。だが、その答えに近い者は知っていた。そして、その答えを知るためには力が必要だった。
過去にレナードの言葉を思い出し、ゼムレヴィンにいる天才魔法使いに力の使い方を教わった。扱うのは結局のところ炎であることには変わりない。ならば、炎を特性を知り魔法の使い方を学べば強くなれると考えた。ゼムレヴィンに協力することを条件とし、戦い方を学び今に至る。
強くなれたかは分からないが、前の自分よりは大分マシになったと思っている。あとは、本当の強敵に出会ったときどこまで戦えるだろう?
ロムは自分の強さを試したくなった。
◇◇◇◇◇
その頃。ロブロン・ランスに近い魔人界では、人間界の異変に気付き、それに便乗しようとする動きが見られた。
魔人界カーサス領副長、パラジエルは能力を発動した。
能力、ブラスター・ショック!
パラジエルの能力は視界内の狙った箇所を爆発させることができる。
「行くぜ…!」
「ちょっと待ちな!」
パラジエルの進軍の合図を遮ったのは蛙の悪魔、ザックだった。
「誰だ?」
「おれぁ、ザック。おめぇらに恨みはねぇが、これ以上先に進むっていうなら」
止めるぜ。
ザックは強烈な殺気を放った。
同じ悪魔としてその力量を察したパラジエルは軍を引かせ、一人でザックに近付いた。
「お前が誰かはどうでもいい。そう、その辺にいる虫ぐらいどうでもいい。けどよ、オレは仕事の邪魔をされんのが一番っっ嫌いなんだよ!!」
能力、ブラスター・ショック!!
パラジエルはザックの体を木っ端微塵に吹き飛ばすつもりで能力を放った。
しかし、ザックの背後にある岩が弾け飛んだ。
「…何をした?」
「おれぁ、あんたと同じように能力を使っただけだ」
「そんなことは見なくても分かんだよ!!」
次は吹き飛ばす!狙いが定まらないならその周りを爆発させて殺す!
集中してザックを狙うも、今度は上空で爆発が起こった。
「いちいち危ねぇんだよ。逸らすのも結構大変なんだぜ。それより、さっき下っ端の話聞いたけど、おめぇ、副長らしいじゃねぇか」
「それがどうした…!」
「いや、大したことねぇなって」
その言葉はパラジエルを激怒させた。方法なんてどうでもいい。必ず殺すと、それだけを考えた。
闇雲に能力を放ち、様々な場所が爆発するもザックには届かなかった。
「分かんねぇ奴だな。効かねぇって…言ってねぇか。でも、見りゃ分かんだろ」
能力、デスニベル。
「おれぁ、最初からお引き取りくださいって言ってるだけなんだよなぁ…。いや、言ってねぇか」




