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B MAIN  作者: 半半人
人間界編
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第三の太刀


 五国同盟から十ヶ月。


 ゼムレヴィンはジェストレイン、ロブロン・ランス、レブーフモルゲン、ヴェントガーデンからの攻撃を凌いでいた。


「ボクとしたことが…。この時まで天空魔法をとっておけばよかった」


 莫大な魔力を消費する天空魔法を使ってしまったため、貯めていた魔力がほとんど無くなっていたのだった。


「ケイニーはレブーフモルゲン、シナはジェストレイン、ケイニーはヴェントガーデンを魔法騎士団と一般兵を率いて撃退してください」


 レナードは指示を出し、残りのロブロン・ランスをどう対処するか考えた。


 人選の相性はこれが最良です。ですが、一人に二国を相手にさせるのは無理がある。僕自身が出向くべきか…。それでは指揮系統の質が下がってしまう。


「…魔法騎士団をロブロン・ランスに戦わせて時間を稼ぎます。戦闘が終わり次第すぐに応援に行くようにしてください」


 全員の戦いが一段落するまでにどれだけの時間を要するか考えた。


 どう考えてもロブロン・ランスの進撃を止めることはできない。


「仕方ありません。ここは僕が…」


 案ずるな。



 一閃の太刀筋がロブロン・ランスとゼムレヴィンの間に刻まれた。


「ゼムレヴィン国務第三階申、ヘイヴェンス。只今帰還した」


 ヘイヴェンス様ぁ!!!


 思わぬ登場に敵軍が怯み、味方の兵が沸き立った。


「フリッドフランに滞在するよう命令したはずですが?」

「ふん。窮地を救われていながらそう問うか。答えなど決まっておろう。我が国の窮地に立ち向かう。それが階申の任だからだ!」


 ヘイヴェンスはロブロン・ランスの多くの強化人間の前に立ちはだかった。


「何だよ。このオッサンが第三階申かよ。この人数に勝てると思ってんのか?」

「てめぇの仲間はみーんなあそこで死んでるぜ!」


 ヘイヴェンスを囲みながら強化兵は嫌らしく笑った。


「…今だ!」


 一人の合図で全員が様々な武器でヘイヴェンスに襲いかかった。


 後方のスリンディオは、人一人が身体能力が高く、洗練された連携にヘイヴェンスがどう対処するのかを見物した。


 さっきみたいに派手に出るか、技で翻弄するか?どっちにしろ一度見れば対応できる。オレと戦う時には十秒も掛からないだろう。


 しかし、ヘイヴェンスはそんなスリンディオの期待を裏切った。順序に攻撃を避け、強化兵の囲いから抜け出した。


「何だこいつ。ただ避けてるだけじゃねぇか」

「上手く逃げても次は無理だぜ!」


 スリンディオもヘイヴェンスの動作にがっかりした。ゼムレヴィンの第三階申と言われるが、その程度の戦い方かよ。


 次の攻撃が始まるの見届け、スリンディオは目を背けた。


「…貴様は目の前の敵から目を離すのか?」


 急いで視線を戻した先に、襲いかかった全員を切り伏せたヘイヴェンスが立っていた。


 何だ?何をした?


 スリンディオは別の強化兵をヘイヴェンスと対峙させた。


 しかし、ヘイヴェンスは教本通りの立ち回りで攻撃を避け、刀を振るった。型にはまった一連の動作だった。


 それだけであの図々しい態度かよ。なめてんじゃねぇ!


「…ムクツクんだよ!」


 スリンディオは強化兵をすり抜け、ヘイヴェンスに殴りかかった。突然のことに反応が遅れるも、冷静に攻撃を避け構え直した。


「つまんねぇ野郎だ。ただ年食っただけのくせによ」

「貴様は見ていただけだろう。その身でつまらぬか決めばいい」


 剛剣一閃。


 ヘイヴェンスがスリンディオとの間合いを詰め、高速の居合い切りを放った。斜めに切り上げた刀はスリンディオの胴体をしっかりと捕らえた。


「…手応えはあるが、何か仕込んでいたな」


 ヘイヴェンスは刀を撫でた。肉を切る感覚ではなく、硬度の高いものにぶつかるような…。以前、アイゼンの硬化で刀が折れた時のことを思い出した。

 踞るスリンディオは切られた箇所を押さえながら、ヘイヴェンスを睨んだ。痛みはあるが出血はしていない。繊維防護服でなければ真っ二つにされていた。


「何の技術かは知らんが、次は切る」

「…くそがっ!」


 スリンディオは近くの仲間が持つオーガット鉱石の棍奪った。


 互いに付かず離れずの距離を保ち、好機を伺った。戦い方が全く異なるため二人はその時が来ることを待った。


 先に動き出したのはスリンディオだった。大きく一歩踏み出し、棍を突き出した。それに合わせて何人かの強化兵が投げナイフを投擲した。


「貴様…!」

「ハナっから()()にしかこだわってねぇんだよ!!」


 卑怯な手ではあるがスリンディオの言う通り、結果が全てを決める。戦争に綺麗事を求めることの方が間違っている。


 投げられたナイフを避けられないと察したヘイヴェンスは戦争であることを改めて理解し意識を集中させた。攻撃を食らうことは仕方ない。その次が大事だと分かっていた。


 柄を軽く握り、接近するスリンディオとの間合いを計った。手の延長である刀が届く距離を感覚で探した。

 その間に体にナイフが突き刺さる。鋭利な刃が何の抵抗も無く体に刺さり、思考が痛みに支配された。だが、刀を握る手に力は込めない。無駄な力みは太刀筋を鈍らせるからだ。


 スリンディオの突き出した棍がヘイヴェンスの胸を強打した。高い身体能力から繰り出される一撃は棍の重量も付加され、体表およびに体内に多大な傷害を与えた。


 しかし、それでもヘイヴェンスは待った。


 食らった矮小な一撃ではなく、最高の一撃を繰り出すために。


 スリンディオが攻撃をし終え、完全に対応できない体勢に入ったと瞬間。


 剛剣一閃。


 極限にまで研ぎ澄まされた一太刀が放たれた。

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