激震の開闢
天元界のとある古城。
そこには相容れぬはずの三種が集っていた。それぞれの意思や文化が全く異なる敵であるにも関わらず、全員に敵意は無い。それは一つの共通点があったからだ。
「全員、揃ったか?」
アイゼンはさっと人数を確認した。
「皆に声掛けてきたから、多分大丈夫!」
「そうか。無茶をさせてすまなかったなノーリア」
「全然!」
少し言葉を交わし立ち上がった。
天使四人、悪魔三人、人間一人。
「レニア、マファリス、ボルート、ノーリア、ザック、ホバック、ピリアルト。お前たちの力を借りる」
全員が真剣の面持ちでアイゼンの言葉に耳を傾けた。
「ホバック。お前の能力で人間界全体に圧力を掛けてくれ」
梟の悪魔、ホバックが目を細くしてアイゼンを見た。
「全体にとなると完全な状態で場を操ることは不可能になるが、それでもいいのならやろうか」
「手加減はいらない。他の六人もホバックの補助を頼む、それと天元界と魔人界に嘘の情報を流せ」
アイゼンの指示に七人全員がそれぞれ表情を変えた。
「最悪、殺しちゃってもいいんかい?」
狼の悪魔、ピリアルトが楽しそうな笑みを浮かべた。
「分かっているだろう?」
「あぁ。聞いてみただけさ」
そこにいる全員がアイゼンの意思を受け入れていた。三年前に出会った時から何一つ変わっていなかったから。
「二年、いや三年ぶりに会ったんだ。ツラ貸せよ」
蛙の悪魔、ザックがアイゼン睨んだ。
「…まさかとは思うが皆も同じことを考えてるのか?」
集まってもらったことには感謝しているが、それに対しての対価を払うつもりは無かった。
「ビビんなって。ちょっと話そうぜ」
全員が何も言わず、私は上の階の廊下でザックと向かい合った。
「そっちも大変だったらしいじゃねぇか。大丈夫か?」
「それは気にするな。お前たちを仲間にした時からこれぐらいの苦労は覚悟していた」
「天魔大戦を止めた次は三界戦争か?笑えるな」
「ザック…」
「おれぁ笑わねぇよ。あんたが本気だって分かってっからよ。それより、あれだ。これから好きに暴れて良いってんだ。乗るに決まってんだろ」
ザックは三年前の出来事を思い出した。
前もそうだっけな。突然やってきて、おもしれぇこと言って、すげぇことやってみせて。あんなに驚いたのも面白かったのも他にはねぇ。
「今回もそれと同じなんだろ?」
「さぁな。ただ、先に言っておくがこれから死ぬかもしれないうえに、それ以上に苦しい思いをするかもしれない。それでも…」
「分かってる。そんな確認はいらねぇだろ?」
「…そうだな。後はお前の好きにしろ。ただし」
「死ぬな、だろ?分かってるって。んじゃ、おれぁは行くぜ。他の奴にもよろしく言っといてくれ」
ザックはアイゼンの背中を強く叩き、窓から飛んで行った。
アイゼンはザックの言葉に少しだけ励まされた。自分の行いを肯定してくる仲間はとても心強い。
「…あいつらのために頑張らないとな」
下の階に降りようとすると、扉の後ろに隠れている少女、天使のレニアがいた。
「何だ。そこで見ていたのか」
「う、うん…。三年ぶりだから……我慢できなくて……」
「突然で悪かったな」
「ううん…。大丈夫…多分……」
「…隠れてないでこっちに来い。話しづらいぞ」
「ううん…!ここで…いい。…ここで……」
「そうか。お前がそう言うなら強制はしないが。だが、大事なことだ。しっかりとお前にも伝えたい」
「うん…!」
レニアは三年前のことを思い出した。
前に会った時から…すごいと思ってた。誰もできないことに挑んで、失敗しても諦めなかった。その時からアイゼンを……。ううん。今も、少し後ろであなたのことを見ているだけで…。
「同じ意思を持つ仲間を失いたくない。だから、死ぬな」
「…うん!」
レニアはアイゼンの瞳をじっと見た。
今は…これが限界…。
しばらく見つめ合った後、レニアは頬を赤くして階段を下っていった。
しばらくすると入れ替わるようにボルートとノーリアがやって来た。
「アイゼン、オレらめちゃ強くなったからさ。頼ってくれよな。あと、貸した能力もガンガン使ってくれよ」
「ノーリアのも使ってね!」
「そう、だな。考えておく」
二人の無邪気な向けられるとはっきりと断れないな。いずれな、と付け加えた。
「で、これが終わったら本当の戦いになるんだろ?お前は」
「アイゼンは順序を大切にするって言ってたもんね」
「オレの台詞…」
「ふっ、そうだな。なら、言うまでもないな」
ボルートとノーリアは三年半前のことを思い出した。
アイゼンが二人を助けた時、その行為に善悪や損得といったものは一切感じられなかった。理由もなく助けたいと思った、という衝動的な理由に二人は感動し、深く感謝した。表に出さないアイゼンの優しさを感じた、数少ない出来事であった。
「当たり前だよバカ野郎。お前は、オレらの全部を信じてりゃいいんだよ…。今のカッコ良くね?」
「…そうだな。では、ホバックと連携を取って、人間界を襲う素振りを見せろ」
「「了解!!」」
「絶対に死ぬなよ」
「気にすんなって。オレらの二人の能力はそういうんじゃないしね」
「うん!でも、アイゼンも死なないでね。もし、死んじゃったら…すっごい悲しいから!」
「…私もだ」
らしくないな。アイゼンはそう思いながら二人を見送った。見送られた二人はアイゼンの照れのようなものを感じとり、少しだけ笑った。




