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B MAIN  作者: 半半人
人間界編
92/173

思考の先

 五国同盟から八ヶ月。


 ゼムレヴィンの高度は少しずつ下がっていた。


 ヴィンガーとスリンディオは今夜、もしくは明日中に開戦すると考えた。


「灯りが必要だ。用意させておけ」

「…馬鹿か。よく考えてみろ。もし、夜になれば灯りを狙えるあっちが有利だ。一晩、様子を見ようぜ。二ヶ月以上ぶっ続けで魔法を使えるわけがねぇんだ。次に同じように浮くことはもうねぇだろ」

「確かにそうだ。魔力が持つならわざわざ降りたりしないからな」

「警戒しながら交戦準備だ。日が上ってからが勝負た」


 覚悟を決め、集中力を高める。相手は人間界最大の国だ。一切の油断も許されない。


 最も手強いレナードが何をするのか。二人はそれぞれ思考を巡らせた。


 時間が過ぎ、夕方を迎える頃には大分近い位置まで下がってきた。日を跨ぐ前に着地する。誰もがそう思った。


 ゼムレヴィンを囲むようにジェストレイン兵が配置し、その後方でロブロン・ランス兵が待機していた。


 朝を迎えると同時に一気に攻め落とす陣形であった。


◇◇◇◇◇


 翌朝。全兵士の指揮は少し下がっていた。


 ゼムレヴィンが一定の位置で高度を保ち、着地していなかったのだ。それに加え、深夜あたりから降る雨で兵が少しだけ疲れていた。


「まさかまだ浮けるとは。だが、時間の問題だろう。もう少し待つか」

「このままあいつらが降りないで精神的に疲れさせるつもりなんじゃねぇか?」

「それもあり得ると思ったが、この雨という好機をあいつらが逃すと思うか?視界は悪いうえに、銃器の火薬も湿気る可能性がある。奇襲を仕掛けるとしたら今だ」

「あいつらは防衛戦をしなきゃいけねぇんだ。わざわざ攻めてくることはねぇだろ。それに、てめぇのとこは火薬の管理もまともにできねぇのか?」

「問題ない。この程度の雨は想定内だ」

「なら、オレたちは待つだけだ。兵には悪りぃがこのまま警戒体勢を…」

「報告です!!ゼムレヴィン西部で兵が襲われました!」

「情報を正確かつ迅速に伝えることを怠るな」

「来た、か」


 場の空気が一瞬で熱くなった。これからの戦が生ぬるいものではないと全員が分かっていたからだ。


 西部か。オレたちの拠点とは反対か。


 ヴィンガーとスリンディオがいる場所からは大分離れている。指示が通る前に接近される可能性が高い。


「ヴィンガー…!」

「兵をここに呼び戻せ!ここで迎え撃つ!だろ?」

「はっ。分かってんならいいんだよ」

「本当に奇襲を仕掛けるならこちらに悟られないようにするはずだ。あれは囮、ということだ」


 何かを仕掛けるためにわざと目立った行動をしたと考えられる。ならば、それに誘われず守りを固めるべきだ。



 そんな二人を嘲笑うように奇襲が行われてから半刻が過ぎた。依然何も起こらないでいる。


 何が目的だ?いや、それよりも、どうやって兵を降ろした?上と下で兵を分けたのか?


 二人の出した答えは分からない、だった。いくら考えても正解とは程遠い。


 ゼムレヴィンを囲み、先手を取っていたはずが気付けば後手に回っている。これが階申の戦い方か。掴み所が無く対策がしにくいな。

 ヴィンガーは少しだけティエナ将官の戦術を思い出していた。


「…おい。何笑ってんだ?」

「いいや。何も」


 ヴィンガーは無意識に微笑んでいた。


「進軍を確認!こちらに迫って来ます!」

「銃兵用意。敵影を確認後射撃せよ」

「はっ!」

「いくぞ、てめぇら!ぶっ潰せ!!」

「「おぉぉ!!」」


 互いの兵に指示を送り、迎撃態勢に入った。


 それに対し、ゼムレヴィン兵は囲むように襲いかかり退路を分断した挟撃を展開した。しかし、銃の射程距離に敵うはずがなく、接近することもできないでいた。遮蔽物に潜むがスリンディオの指示で的確に潰されていった。


 この程度かレナード?まだ何か隠しているんじゃないか?


 立っている者がいなくなり、視界が開けた。そこで、二人は警戒心を高める。次が来ないということは、何か罠を仕掛け終わったからだと考えられるからだ。


「離れんな!警戒しながら集まれ!!」


 次の敵襲に備え指示を出し、守りを固めた。


 徐々に人が集い、万全の態勢が整った時。



 一人の魔法使いが始動した。


 否、すでに終えていた。



「リブルスの海原」


 ケイニーと声と共に水の魔法が二軍を襲った。突然現れた水の壁を認識した時にはもう遅かった。壁を満たす水が瞬時に発生し、二軍は巨大な立方体に閉じ込められた。


 そこで誰もが驚愕する。


 陸上で溺れるというあり得ない経験に加え、ぼやけた視界の先ではっきりとした異変に気付いてしまったからだ。


 宙に浮くゼムレヴィンが少しずつ形を変え、雨に溶け、崩れて消失した。



「あ。あれ?もういらないし、魔力使って疲れるし。解除しただけだよ」


 それぞれの顔色から何を考えているのかが分かった。そこでケイニーは先に答えを発した。

 

「あと、雲って水でできてるの知ってる?」


 その言葉でヴィンガーとスリンディオは察してしまった。


 今日の雨雲はケイニーの意思で作られたものだ、と。


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