第三者の協力
ゼムレヴィン対ジェストレイン・ロブロン・ランスが開戦した頃、アイゼンは天元界のボルート領にいた。
「止まれ人間!それ以上踏み込めば迎撃の対象と見なすぞ!!」
「分かった。私はここにいるから、お前たちのボスに“借りを返せ”と伝えてくれ」
「ボスが人間に借りを作るか!嘘はやめろ!」
「本当だ」
「誰が信じるか!」
「分からない奴だな。人間一人に何をビビっているんだ?」
「挑発しようとしても無駄だ。その手には乗らないぞ」
「全く…」
こちらは急いでいるんだ。これ以上待たされるようなら突破するか…。
「ねぇねぇ。ノーリアが報告行ってくるからついでに兄ちゃんに言っておこっか?」
「お前は…駄目だ」
「ねっ、いいでしょ!いいでしょ!」
「…行ってこい!」
「やったー!じゃ、行ってきまーす」
「おい、何かあるのか?」
「喜べ。使いを送った」
「そうか。感謝する」
「ふん。ボスが来るまでが地獄だぞ」
「何だって?」
「何でもない」
そこへ大人数の天使が上空から現れた。
「なるほど。私に暴行を加え鬱憤を晴らしたい馬鹿共の相手をしろということだな」
能力、ディック・アイアン。
少し遊んでやるか。
◇◇◇◇◇
「兄ちゃーん!」
ノーリアは凄まじい速度で窓を突き破った。
「バカこのっ!部屋に入るときはノック三回した十秒後って言ってんじゃん!!」
半裸のボルートは固めた髪を元に戻しノーリアを睨んだ。
「で、何で来た?」
「アイゼンが来てたよ」
「あ、あ、あぁ、アイゼンだって!?マジかよ!何年ぶりだって!」
「多分三年半ぐらいかなー?」
ボルートとノーリアは顔を会わせニッと笑った。
「すぐに行く」
「じゃ、先行ってるねー」
二人は能力を発動すると同時にその場から消えた。
アイゼンが現れてから僅か一分未満の出来事である。
◇◇◇◇◇
能力、ディック・アイアン。
「お待たせー!」
能力を発動し戦闘体勢に入ると同時に一人の天使が間に割り込んだ。まさに一瞬。目で捉えることすらできなかった。
「コラァ!!ノーリア!ボスにちゃんと伝えたのか!!」
「ちゃんと伝えたもん!すぐ来るって言ってたもん!」
「嘘つけ!こんな早いわけないだろ!」
「嘘じゃないもん!!」
「今、ノーリアと言ったか?」
会話の内容はどうでもいい。それよりも、今のは本当か?
「そうだよ。久しぶりだね、アイゼン」
「…あぁ。しばらく見ない間に成長したな」
「でしょでしょ!」
「ところでボルートは?」
「兄ちゃんならすぐ来るって言ってたよ…」
「待たせたな!」
少し遅れてボルートがアイゼンの目の前に現れた。
「ホンっっっト久しぶり!たまにじゃなくてもっと遊びに来いよバカこの野郎。で、今日は何の用で来たんだ?」
「それは…」
話したいことがあるが他の天使がいる所では話しにくい。
それを察したボルートは、
「あー、お前ら解散解散。持ち場に戻れこんにゃろー」
適当に追い払った。
「オレんとこに来いよ」
「大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。お前は黙ってもてなされてろって」
「そんな言葉は聞いたことがないが」
「いいじゃん。それより、ノーリアはアイゼンの話が聞きたいなー」
「ちゃんとして話してやるから少し待ってろ…。いや、お前にも協力してもらおうか」
アイゼンはボルートとノーリアに絡まれ、ボルート領の中心部に誘われた。
やはり人種が違うと文明も全く違うな。アイゼンは歩きながら街並みを観察した。
「おい!ボス!そいつ人間じゃないか!」
「そうだけど」
「何でここにいるんだよ!?」
「こいつは友達だから良いんだよ。ほら、話したろ?天魔大戦のアイゼンだよ。こいつがその本人」
「アイゼン…。本当か?」
「ホントホント」
「まぁ、ボスが良いなら良いんだが…」
「じゃあ、解散解散」
途中何度か同じやり取りがあったが大きな問題になることはなかった。
「天魔大戦のアイゼン、か」
「あん時はホント助かったぜ。お前がいなかったら多分オレら死んでるしな」
「ノーリアもそう思う」
「…そうか。だが、再戦が近い。お前たちは覚悟できているのか?」
「任せとけって。それに、前は停戦にしたけど今度は完全に止めるんだろ?だったらオレはそれに付き合うだけだよ」
「ノーリアも頼っていいからね!」
「あぁ。悪いな」
エスティアーナでの敗戦後で私は多くのことを学んだ。
そしてこう考えてしまう。天使と悪魔を仲間にできれば誰にも負けないのではないか、と。




