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B MAIN  作者: 半半人
人間界編
89/173

天空魔法

 五国同盟から半年。


「シナ様!レナード様!東より行軍とのことです!」

「来ましたか」

「魔法騎士団は警戒体制に。私も向かうわ」


 ゼムレヴィンへの進行が始まった。


「数はどうですか?」

「ジェストレインの兵装が五…六…七千!ロブロン・ランスが四千です!」

「フリッド・フランで一般兵を投入しなかったことがここで功を奏すとは思いませんでした。魔法騎士団、二千五百。一般兵、九千。戦闘準備……」

「待った、待った」


 レナードの指令をケイニーが遮った。


「ケイニー?」

「まさか、真っ正面からぶつかるつもりですか?」

「そのつもりですが」

「そんなことしなくていいよ。()()()()()、見せてやるよ」


 ケイニーはそう言うと、全方位に魔力を展開した。


「はぁぁぁぁぁ……っ!!!」


 すると地鳴りとともに大地が揺れた。


「これは…?」

「風の流れが変わった…?」

「ここじゃ分かりにくいかもね。まぁ、もう少し待ってなよ」


 この時、ゼムレヴィンにいる者だけが何が起こっているのか分からないでいた。


◇◇◇◇◇


「籠城戦なら勝てるとでも思ってんのかねぇ。あのバカ共は」

「こちらには砲台がある。並みの魔法では何の役にも立たないだろう」


 行軍中のヴィンガーとスリンディオはゼムレヴィンとのどう交戦するかを考えていた。


 遠距離はジェストレインが、白兵戦はロブロン・ランスがそれぞれ専念すればいい。下手に連携を組むより、各々が好きに動かせた方がいいかもしれないと二人はすぐに気付いた。


「後ろから撃つんじゃねぇぞ」

「はい。邪魔なら別ですが」


「失礼します!ゼムレヴィンに動きがありました!」


 二人は顔を見合わせた。


 派手に行軍し、ゼムレヴィンが焦ればよし。焦らなくても、こそこそして疲れるよりも兵の体力を温存できる。


 さて、どう動いたか。


「ゼムレヴィンが、浮きました!」

「浮く?」

「おい、何ふざけたこと言ってんだ?」

「事実です!ゼムレヴィンが地盤ごと宙に浮きました!!」


 先行隊からの声色からかなりの驚きが伝わって来た。


 ヴィンガーは双眼鏡を用いて先を見た。


「…どうやら本当の様だ」

「マジかよ!?」


 想像外。いや、都市一つを丸々宙に浮かすなんて思いつきもしない。思いついたところで実行しようとすら思わないだろう。


 これを実行した奴は一体…?


「ははっ。やってくれんじゃねぇか。これじゃあ兵はもちろん砲弾も届かねえな」

「確かにこちらの攻撃は届かないが、それはあちらも同じだ。高度は今も上がっているし、銃に勝る狙撃など……」


 ヴィンガーが話している最中、スリンディオは何かを感じた。それは音であり、空気の些細な振動であった。


「危ねぇな。どけ」

「うぉ。何をする?」


 スリンディオは馬上のヴィンガーを突き飛ばした。


 その瞬間、鋭い風と共に一矢が二人の目前を横切った。


「しっかりいるじゃねぇか。風の狩人が」



「…外した?いや、避けられた、か」


 傷が癒え、万全の状態で二軍を見下すシナは舌打ちをした。


 感覚は以前と変わらないはずだが…。魔法の練りが少しあまかったか?


「次は外さないわ」

「落ち着いてよ。あっちから仕掛けられることはないんだからさ。気楽にいこうよ」

「余裕があるうちに少しでも数を減らした方が良いと思うのだけど」

「まぁまぁ。まさか、国ごととは言いませんが都市一つを丸々浮かせられるとは思ってませんでした。風魔法の応用、浮遊魔法がこれほどのものとは。ちなみにこの魔法はどれだけの期間続きますか?」

「浮遊魔法は無し。それはカッコ悪いんで、これからは天空魔法でお願いします。何もなければ最大で二ヶ月かな」

「二ヶ月、ですか…その先が不安ですが戦わずに時間を稼げるならよしとしましょう。ですが、いきなりのことで住民がパニックなっていますが」

「それもちゃんと考えてるから。ボクに任せてよ」


 ケイニーは足に風を纏うとゼムレヴィン中央の上空に留まり、全方向に風の魔法を放った。


『全員に聞いて欲しい。ボクは国務第四階申のケイニー。ゼムレヴィンを浮かせているのはボクの魔法だ』


 ケイニーの声がゼムレヴィン全体に届いた。


「すごいですね。シナはできますか?」

「いいえ。同じ風魔法だけど」

「そうなんですか」

「音は空気が震えるから、その振動を風に乗せて相手の耳元に送れば同じ音が聞こえる。と言っていたけどなんのことかさっぱりだったわ」

「研究者ですからね。僕にも理解できないことが多くあります」


 魔法を使い、魔法を研究するケイニーの凄さを二人は実感した。


『怖いのは分かります。怒りも分かります。ですが、ゼムレヴィンは今!戦争の場になろうとしているのです!ボクたち階申は文明の発達、生活水準の向上などに貢献してきました。そして、国民の命を守り、勝利に導くことも義務の一つとして活動しています。あなた方の安全を最優先に考えた結果、この魔法を使うことにしました。正面から敵を迎え撃つことも考えました。しかし!!ボクたちは!民を死なせてまで勝ちたいとは思いません!!戦争には必ず勝ちます。そして、全員の命も同時に!全て!!守ります!!!そのために、協力をお願いします。ボクたち階申を信じてください』


 一通り述べると、ケイニーの熱い気持ちが伝わったのかゼムレヴィン内の騒動が少し落ち着いた。そして、完全に無くなった。


 ケイニーはシナとレナードの元に戻り、満面の笑みを浮かべた。


「流石です。まさに階申の鏡です」

「まさか一人で解決するとは思ってなかったわ」

「これぐい余裕ですよ。ボクは」


 天才ですから。


「ま、ホントは使いたかっただけなんだけどね」




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