第三者の限界
五国同盟から四ヶ月半。
アイゼンは南のレブーフモルゲンから北東のジェストレインに向かった。
ジェストレインとレブーフモルゲンを筆頭に五国同盟は成り立っている。それに続きロブロン・ランス。そして、ヴェントガーデンとハインシスとなっている。
本来なら弱いものから説得し取り込んでいくのが教本通りだが、相対する人物によってその難易度は大きく変わる。悩んでいる者、損得で考える者、執着する者など、それぞれの意思がある。そういう意味ではジェストレインにいるヴィンガーは私の説得に応じてくれるだろうと思った。最後のロブロン・ランスは、スリンディオが非常に面倒だ。好戦的、かつ、一度決めたら変えない性格であるため説得は容易ではない。
ここからが一番大変だ。気を引き締めていこう。
ジェストレインは銃火器で有名である。様々な国があり、その中でも魔法よりも技術が発展していると言える。魔法の無い国ともいえる。そのためか、ゼムレヴィンなどと比べると素っ気ないような街並み見えた。鉄製の棒を支えに、石材で造られた建物は無機質であった。ジェストレインは発砲の際に出る硝煙を浴びないよう肌を出さない独特な服装であるため、私の格好は少しだけ目立った。
「…それと、それ。あと、こいつも」
「はいよー。8千フィルになりまーす」
「ヴィンガー様ご自身が買い物に行かなくても我々が…」
「散歩のついでに、なんとなく来たんだ。気にしないでくれ」
紙袋を抱えるヴィンガーとそのお供にアイゼンは出会った。
「これは…偶然か……?」
「た、アイゼン?」
「手間が省けた。お前に用があってな…」
「分かりましたが、待たせてる人がいるんで一緒でもいいですか?」
「構わない。私のことは後回しでもいい」
「そんなことしませんよ。では、営政殿まで」
ジェストレインの重要人物が集まる営政殿にアイゼンは案内された。それまでに他愛のない世間話をした。政治のこと、戦争のこと。
「同席することになるがその相手は誰なんだ?その話は聞いても大丈夫なのか?」
「多分…大丈夫です」
ロブロン・ランスのスリンディオですから。
すでに席に座っているスリンディオと目が合った。
「なんかコソコソやってるらしいじゃねぇか。なぁ、おい」
最悪だ。
「何のことだか分からないな」
「はっ、バレバレだっての。中立とか言っといてゼムレヴィン側じゃねぇか」
「そう言うな」
「五対一で可哀想だから味方してやる、ってか?たかが知れてる。てめぇがいくら頑張っても無理なもんは無理なんだよ」
「逆に言えば、五対一にでなければゼムレヴィンと戦えないということだろう?弱者同士が集まって強者を倒すという安易な考えだ」
「誰が弱いって…!!」
「ヴィンガー、お前もだ。お前はあの敗戦で何を学んだ?人間を守ることが私たちの役目のはずだ。それでも戦争をするというのか?」
「自分は……全ての人間を守れるとは思っていません。だからこそ、今いる国の人たちだけでも守りたいです」
「犠牲が出て当然だと言いたいのか」
「…そうです」
「お前は…お前は私の隊で何を学んだ!失ってもいい命が存在をすると思っているのか!!」
「分かっています。分かっています…。隊長が少しでも兵が死なないよう努力していることは知っています。でも、自分は隊長ではないから。隊長のようにはできないから…」
「…」
「説教は終わったか?くだらねぇんだよ。勝てばいいんだよ。邪魔なら誰だろうが関係ねぇ。潰すだけだ」
「お前…!」
「睨んだって何んにも変わんねぇぜ。てめぇのルールはてめぇで守ればいい。俺は俺のルールでやる。それで負けた方が間違ってたってことだ」
「…お前たちはゼムレヴィンとの戦争を止めない、というんだな?」
「はい」
「だから、さっきからそう言ってんだろ」
「そうか…。それで後悔しないならそれでいい」
「何が言いたいんだ?」
「無抵抗で滅ぼされる国があると思うか?お前たちも、それ相応を覚悟しろ」
駄目だ。こいつらは揺らがない。ゼムレヴィンを倒す目的を変えようとしない。
アイゼンはこの二人の説得を諦めた。
今までは間接的に戦争を先伸ばして来たが、この二国は別だ。物理的に止めてやる。
ただし、人間界での事態を天使や悪魔に知られた時。奇襲をかけられるかもしれない。その対策も考えておかなければ…。
ゼムレヴィンには一戦、いや、二戦は交える。前にも言ったようにこの一年はゼムレヴィンの純粋な耐久力にかかっている。
レナード、シナ、ヘイヴェンス、ケイニー、ロッドール。上手くやれよ…。




