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B MAIN  作者: 半半人
人間界編
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第三者の説得

 五国同盟から十日後。


 許可証の再発行に何日か使ってしまったが、アイゼンは何事もなくハインシスに辿り着いた。


「ヴィスティンハイムのアイゼンだ。通るぞ」


 ハインシス、レブーフモルゲン、ジェストレイン、ロブロン・ランス、ヴェントガーデンの五つの国をそれぞれの方法で押さえ込まなければならない。その第一にハインシスを選んだのには理由があった。


「ようこそいらっしゃいました」

「そう畏まるな。こっちはただの話し合いに来ただけだ」


 出迎えたのはセントラだった。


「五国同盟のことです、か。承知しています。立ち話もなんですからこちらへどうぞ」


 案内された個室にセントラと向き合って座った。


「それで会話の内容は?」

「その前に言っておくことがある。私は完全に中立の立場だ。味方とは言えないが、敵になるつもりもないことを知ってほしい」

「…承知しました。ふぅ。てっきりゼムレヴィンと繋がっていると思っていたので少し警戒してしまいました。あの会議でもゼムレヴィンとの関係をはっきりさせましたし、信じます」

「ありがとう。おかげで話しやすくなった。二つ聞きたいことがある。協力してもらえるか?」


 アイゼンは敵ではないこと下手に出ることでセントラを安心させた。


 脅しは不要だ。正しいことのみ言って丸め込む。


「一つはハインシスが本気でゼムレヴィンと敵対するのかを聞きたい。隣接し、恩もある。それでも戦うつもりか?」

「と、とんでもない!あの場では恩を仇で返すようになってしまいましたが。本当はゼムレヴィンと同盟を結ぶのが正しいと思っていたのですが…」

「気にするな。多数に飲まれてしまうのは仕方ない」

「分かってもらえて嬉しいです」

「もし、各国が同時に攻撃を仕掛けると言ったら?」

「その時は参加しません。それに、ハインシスの軍事力は低いですから、どこの国も気にしませんよ」

「そうか」

「こちらからもいいですか?」

「あぁ」

「何故、アイゼンさんはヴィスティンハイムにいるんですか?他の国から優遇すると言われたことはあるはずなのに」

「あの場所が好きだからだ」

「そう、なんですか?もっと他の理由があると思っていたので。その。なんというかありきたり、ですね」

「…何が言いたい?」

「すいません。悪気はありません。ただ、もしお金等の理由でその地に縛られているのならこちらで多少は負担するので」

「仲間になれと?」

「そうとまでは言いませんが、機会があればまた助けてもらいたいと思いまして」

「そうか。個人的な理由だからな。金や理屈は動くつもりはない」

「承知しました。それを聞いて安心しました」

「何故だ?」

「アイゼンさんが他の国に加わることがないと分かったので」

「…なるほど。私がどう思われているのか分かった」

「それで、もう一つの聞きたいこととは何ですか?」

「先ほどの質問に似ているが、しっかりと聞いてほしい。お前は、“ゼムレヴィンを攻めることはない”と言ったな」

「はい」

「これが本音だろうが、嘘だろうが関係ない。が、もしゼムレヴィンが敗北したら、次に潰されるのは確実にハインシス(ここ)だ」

「嘘ではありません…!」

「言っただろう。その言葉の真偽はどうでもいい。注目してもらいたいのは、ゼムレヴィンの敗北後だ」

「それが何故ハイシンスの敗北に繋がると言うのですか?」

「やはり戦略的思考が足りないな。軍事力が無くとも自国を守るだけの戦略と先を読む力を養った方がいいんじゃないか?」

「何が言いたいんですか?友好的だと思っていたのに、その言い方はなんですか!」

「そこまで言わせるお前らが悪い。よく聞け!ゼムレヴィンが負ければ、その土地は誰の物になる?人間界第二位の力を有するのはどこか?自分で考えろ」

「ゼムレヴィンの土地、第二の力……!?」

「ゼムレヴィンと戦争をし、勝利すれば手に入れた土地、資源は山分けになるだろう。しかし、その戦いで活躍した国に多く配当されるのが当然だ。そして、最も活躍するだろうと思われるのは人間界でゼムレヴィンに次ぐ軍事力を持つ国である可能性が高い」

「あっ!」

「隣国のジェストレインだ」


 簡単に言うと。ゼムレヴィンは西、ハインシスは北、ジェストレインは北東に位置する。ゼムレヴィン敗北後、その土地をジェストレインが有することになれば。西のジェストレイン、北のハインシス、北東のジェストレイン、とハインシスがジェストレインに挟まれることになる。人間界第二位のジェストレインと軍事力の低いハインシス。あとは言うまでもない。


「私は、ゼムレヴィンを打ち倒すことは自らの首を絞めるのと同じだと言いたいんだ」

「…確かにそう言えるかもしれない。だが、ジェストレインがここを攻める根拠は無いじゃないか?」

「あくまで私の考えだが。ジェストレインに限らず他の国が“ハインシスを潰したら戦いで得た土地を譲る”と交渉していたらどうする?」

「…最悪です」

「五国同盟を組んだ時点で幕を開けたと言ってもいい」


 人間界統一戦争の始まりだと。


「全員が理解しているんだ。天使と悪魔に負けないためにはバラバラである人間界を一つにする必要があり、人間界で統治される国が出てくるということを」

「少し時間をください…。一度、状況を整理します。五国同盟…戦争……ゼムレヴィン敗北後…隣国……」

「どうだ?」

「…つまりは。とても簡単に言うと、ゼムレヴィンを攻撃しない方がハインシスのため。ということですか?」

「結果だけ言えばはそういうことだ」

「なるほど…うん、なるほど。分かりました」

「さっきは話を真剣に聞いてもらいたくて悪意を含む発言をした。すまないな」

「いいえ。もし、ああでもしなければ適当に話を流していたかもしれません。とても大事なこと話してくださってありがとうございます」

「礼には及ばない」


 セントラとアイゼンの対談の末、ハインシスはゼムレヴィンを一切攻撃しないことを約束したのだった。

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