代役
帰りの馬車の中でレナードとスフィードは落ち込んでいた。
「…どうしますか?」
「今のところ何も言えません。突然、五国から襲われるということもありえますから」
「最悪です…」
「久々に腹が立ちましたが…。三人の階申には何と伝えましょうか…」
「そんなに落ち込むことか?」
同車したアイゼンが二人に疑問の目を向けた。
「この状態から奴等の信頼を得れば安い同盟以上の結束力を手に入れことができるチャンスではないか」
「あなたは黙っていてください」
「ゼンさんはこの状況を覆せると?」
「私には無理だ」
「だったら…!」
「しかし、私がお前だったらできる」
怒鳴るスフィードを無視し、レナードを指差した。
「必要なのは個人の力と信頼だ。私にはそれが足りない。しかし、お前なら基準を満たしている」
「詳しく聞かせてもらえませんか?」
「教えるメリットがあるならな」
「…なるほど。いや、その方が遠慮しなくていいですね。何が望みですか?」
「今までの貸しも返してもらおうか」
「それは…可能な範囲でお願いします」
「人間界統一後、ジェストレインとロブロン・ランスを管理する権限をもらう」
「随分と自信があるんですね。ちなみに、成功率はどれほどですか?」
「成功率以前に、ゼムレヴィンの耐久力が全ての要になる」
「耐久力?」
「今後ゼムレヴィンは弱化し、他の国から攻められることになるだろう。それに対する耐久力だ」
「つまり。僕たちが滅びるのが先か、ゼンさんが目的を達成するのが先か。ということですか」
「ちなみにどれぐらい掛かりますか?」
「最短でも三年は必要だ」
「さ、三年!!そんなに待てるか!」
「…僕もそう思います。色々と考えましたが、戦争になったら半年と持ちませんよ」
「そうか…そうだった。ならば、四年は掛かる」
「無理だ…っ!」
「が、二年は時間を稼げる。最初の案は移動や準備に一年。残りの二年でそれを確実にものに仕上げる。だが、次の案は五国を抑えるのに最初の一年を使う分四年も掛かるが確実に二年間の安全を保証できる」
「…最短の三年か、安全の四年か」
レナードはアイゼンの言うことを理解し、深く考えた。
時間を優先するなら三年で終わらせてほしいです。しかし、何の対策もできずにこの時間を過ごすには長すぎる。
「ゼンさん。後者を選べば、二年間だけ耐えればいいということですか?」
「そうだ。ただ、回りにも時間を与えてしまうことになるが…」
「それは仕方ありません。ぜひ、四年でお願いします」
「分かった。先に言っておくが私は失敗しない。お前らがその二年で潰れてしまえば全てが無駄になることを忘れるな」
「僕は結構しつこいんで、簡単にはやられませんよ。それと、僕たちでゼンさんを支援するので必要な物があれば言ってください」
「…言いづらいんだが、通行許可証の再発行を頼む」
「いくつ用意しますか?」
「一つで十分だ」
アイゼンもゼムレヴィンまで同行し、身支度を整えた。
◇◇◇◇◇
「はぁ!?五対一!?」
「…これは……とても危険ね。私たちだけでは対処できないわ」
「いくら人間界最大、最強と言われても成す術なし」
「僕のせいじゃないから。…フリッド・フランの作戦を考えたのは僕だけど、変に受け取られただけですから」
「だから貴様に非はない、とは言んぞ。そこまで考えるのが役目だろうに」
「それを言われたらそうなんですけど…」
「ただ、連帯責任なんで責めることはできないんだけどね。何かこの状況を変える方法はあんの?」
「ありません。今できることは大人しく、目立たないようにすることだけです」
「実際は違うでしょう?私たちは何をすればいいの?」
「御察しの通り。ヘイヴェンスは引き続きフリッド・フランの復興と防衛を。ケイニーは魔法での防衛に集中してください」
「了解した」
「氷漬けの人はどうすんの?」
「後回しです。能力者を殺して即解凍の方が楽ですから」
「了解」
「シナは魔法騎士団と兵士に加え、隠密に優れた部隊を作ってもらいます。怪我もありますから当分はこれで」
「分かったわ」
「レナード。俺は、何か手伝った方がいいか?」
「すっかり忘れていました。ロッドールは……特に無しで」
「了解!」




