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B MAIN  作者: 半半人
フリッド・フラン編
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空っぽ

 駄目だったか…。


 対岸からイーリス達の戦闘を眺めていたジェリテは能力を解除した。


 短時間で仕掛けたものだ。こんなものだろう。一応戦った仲間として最後まで頑張ってみたがここまでだ。


 戦犯として責任を取らされる前に逃げる。


 ジェリテは自分の命を第一に考えるのであった。



◇◇◇◇◇


「げほっげほっ!!…あぁ……邪魔が入りましたね」


「う…うぅ…っ!」


 肩と脇腹に矢が刺さったイーリスは恐怖した。能力を再び発動したレナードがゆっくりと近付いて来た。


 このままで本当に殺されてしまう…。


 足を引き摺りながら、アイゼンは二人の間に割り込んだ。


「もういいだろ。何も殺すことはない」

「何を言ってるんですか?敵である時点でそれを免れようなんて虫がよすぎます。フリッド・フランでのこともありますから」

「お前の復讐はこの程度満たされるのか?サイリスの娘を手に掛け、それで過去と決別できるのか?」

「…できませんよ。ただ、これはサイリスを倒すためのいわば準備。次は彼女を殺します。逆に、アイゼンは過去のことを諦めているんですか?仕方のないことだって片付けるんですか?」

「あの時の私たちは最善を尽くした。それで負けたのなら…」

「ふざけないでください。僕は悔しくて、辛くてどうしようもないんですよ」


「その原因を排除するしか思い付かないんです」


 二人の会話の最中、イーリスは逃げる機会を伺っていた。だが、人間側には恐ろしく厄介な狩人がいると聞いていた。そいつが空を飛んで逃げる様をただ黙って見過ごすはずがない。怪我を負い、更にはここにいる三人に追われながら逃げることは不可能に近い。


 アイゼンを押し退け、レナードはイーリスに歩み寄った。そして、拳を振り上げた。


「逃げろぉぉぉぉ!!」


 イーリスを庇ったのはエルドだった。自身も深い傷を負い、満身創痍だというのに。


「早く、行け!」

「エルド…」

「ゼンさん。駄目じゃないですか」


 息の根を止めないと。


「多分、長くは無理だ。何でもいい。ここから離れれば何でもいい」


 そこでエルドは笑った。


「お前一人で何ができる小僧が」

「…ドラギオン」


 エルドに引き続き、ドラギオンが階段から現れた。


 感謝する。アイゼンはドラギオンからそう言われた気がした。


「サイリスに遣えた身ゆえ、お嬢を死守させていただきます」

「素直に守りたいって言えばいいじゃん。ま、ありがたいけどね」


 


「…じゃあな」


 レナードは容赦なくエルドとドラギオンを殴り倒した。だが、その度にエルドは立ち上がり必死にレナードに食って掛かった。ドラギオンも変身し対抗するが手負いでレナードの相手になるはずがなかった。


「しつこいですよ…。ほら、逃げられてしまった」


 結果として、敵の主力を全撃破・領地の奪還に成功したのだったが、なんとも納得のいかない終わりであった。フリッド・フランにいた人達は未だに見付けられていないが、レナード達の勝利と言っていいだろう。


「怪我をしてるとはいえ、追えたんじゃないんですか?ゼンさん?」

「…」

「ロッドールは頑張ってくれた方だと思いますからあまり言いませんが。ゼンさんには追う理由があったんじゃないんですか?」

「なぁ、レナード。もう止めにしよう。お前が憎んでいるのはサイリスだろう。関係のない敵にその矛先を向けるのは間違いではないのか?」

「何か勘違いしていませんか?これは戦争なんですよ。敵を殺すことに復讐を結び付けてはいけないんですか。ゼンさんだって、自分の邪魔になる者に力を使いますよね?それと同じですよ」

「お前と一緒にするな…!」

「正直に。この際だから言います。この能力僕にくれませんか?ゼンさんより僕の方が上手に扱えますし」

「断る」

「ゼンさんから相手を絶対に殺す、みたいな気迫が感じられないんですよ。力を持っている者がそれを使わないでどうするんですか?このままいけばあの時の二の舞ですよ」


 アイゼンを殺して、能力を奪ってもいいんですよ。


「…なんて、冗談です。でも、ゼンさんにはがっかりしました」

「私も…いや、止めておこう。それと。余裕が無い時、咄嗟の時、アイゼンと呼ぶ癖を直した方がいいぞ」

「え、使い分けてました?」

「あぁ」

「気を付けます」


 レナードはアイゼンに能力を返し、ロッドールと共にシナの元に戻った。


「後のことは僕がやるので休んでいてください。色々ありましたが、力を貸して頂いて本当にありがとうございました」


 一歩間違えば死んでいたかもしれないというのに、よく働く奴だ…。いや、レナードは死地に赴くことでしか生きていけないのかもしれないな。


 三人はレナードの背中を見送った。


「…イーリス、か」


 フリッド・フラン戦。13時間48分の交戦の末、人間側・ゼムレヴィンの勝利で幕を閉じた。


◇◇◇◇◇


 レナードはふぅーと大きく息を吐いた。


 この戦いは全てが計算通りだった。サイリスの偽の情報から最後にアイゼンとロッドールと僕が最終対象と居合わせ勝利するまで、全てにおいて。


 ただ、そのことには誰も気付いていない。


 ゼンさんは自分の意思で色々戦っていたようですがそれも全て予想通りでしたし、シナが負傷してロッドールと交代するのも自然な流れで行えましたし、完璧でしたね。先に味方を送り込むことで、最後の良い所まで体力を温存できましたし、文句なしです。


 イーリスと一対一で戦いたいという理由だけで、レナードはこの作戦を起用した。


 能力が封じられた時が一番驚きましたね。次はもう少し上手く立ち回れるようにしないと。


 レナードは淡々と自分の役割をこなしながら、今日の反省を頭の中でするのだった。


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