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B MAIN  作者: 半半人
フリッド・フラン編
72/173

貫くもの


 残るは上の階にいる天使だけか。


「……」

「ゼン?ボーっとしてんのか?」

「…少し考えていた。気にするな」

「で、どうすんだ?」

「半数はここで門を守れ。追撃、挟撃を許すな。もう半数は上の階には行かず、捕らわれた人を探せ」

「一人であいつの相手すんのか?」

「そのつもりだ」

「そっか。別に心配してるわけじゃないけど、無理すんなよ」

「…あぁ」


 アイゼンが悩んでいることにロッドールは気付いた。それとなく気を使ったことに察したアイゼンはロッドールにほんの少し感謝した。


「レナードへの合図を忘れるな」

「わ、分かってるよ」


 忘れているだろうと思い釘を刺しておいた。


 ロッドール達を銃弾から守りつつ、最後尾の騎士がいなくなるのを見送ってから警戒を解いた。

 数と能力でこの天使一人を倒すことは簡単だ。自ら戦いから身を引いてくれるとありがたいが…。


「ん?どこかで会ったか?」

「…はい」

「名前は?」

「ルキエラ」

「そうか。名前は知らないが見覚えがあるのでな」


 それに先程の戦いの時から殺意や敵意が感じられなかった。何か訳があるのだろう。


「あのときと…ぎゃくね」


 エスティアーナでの攻防を表しているのだろう。


「お前は、ルキエラはこの戦いになぜ参加している?」


 人間への攻撃性がほとんど無いのにはわけがありそうだった。


「そっちがさき…でしょう?」

「先?」

「あなたはなぜ、わたしをみのがしたの?」

「それは…」

「また…みのがしてくれるの?」


 アイゼンはルキエラに自身にしか知らない、根本的な部分に触れられた気がした。



 殺しはしないと決めたあの日から、その信念は変わってはいない。

 

「人払いをした理由は分かるだろう?」


 味方の目の前で敵を見逃したとなれば、示しがつかないからな。


「空は飛ぶな。ずば抜けた軍師が見張っているぞ」

「なぜ…」

「質問の多い奴だ。全ては私のためだ。それ以上聞くな」


 エルドを派手に殴り飛ばしたのは仕方なかったが、本意ではないことを理解してもらいたい。


「私の……私の手を汚させるな」

「…」


「深く考えるな。全く…」

「……とう」

「何だ?」

「…ありがとう」


「言うな。あくまで、敵味方の関係だ」


 天使だろうが、悪魔だろうが。死んでほしくないだけだ。


「ゼン!上に行った奴等がやべぇことに!!」

「行くなと言ったはずだが…。すぐに向かう!お前はそこで待っていろ!」

「了解!」


「時間があればもう少し話したいところだが、今回はここまでだ」



 また会おう。


◇◇◇◇◇



 騒がしい。


 いつもそう。初めは煩くてしょうがない。



 でも、一振りで、



 終い。




 捜索を終えた魔法騎士と最上階に登ると同時に彼女は現れた。


 着地の瞬間。数人の騎士が斬り倒された。


 身を潜めていた私とロッドールは、


「ぉぉおい!!何かめっちゃヤバイ奴いるじゃん!」

「腰に提げている刀…」


 その強さを見せ付けられた。


 湖に落ちる時、塔の上に視線を奪われた理由が分かった。



 彼女がいたからだ。レナードの情報に間違いはなかった。



「ロッド。あいつは一人でも国を滅ぼす力を持っている」

「えぇ!?」

「刀剣を扱い、並外れた身体能力でそれを振るう」


 最強の敵だ。



 そこでアイゼンは自己完結した。この天使側の戦い方がはっきりと分かったからだ。

 フリッド・フラン内では能力を封じ、かつ、元々の戦闘力の高い者が防衛するということ。つまり、能力が無くても強い者がいれば、魔法が使えない人間を潰すだけの一方的なものになるはずだった。外では湖の適応した天使や空中戦で人間を迎撃できる。


 だが、それは最善とは言えない。


 もっと綿密に策を練れたはずだ。そこが引っ掛かっていた。



 サイリスへの絶対的信頼。戦術よりも、圧倒的な力を持つ彼女の一人の方が勝利に繋がると信じているから。



 私はエスティアーナでのことを思い出した。


 くそっ。最悪の光景がこびりついたままだ…!


 ただの敗北とは重みが違う。エスティアーナの国民全員の命を背負っているということを自覚していた。それでも敵わなかった。


 その敵が、今!


 ここにいる。



「…貸し一つだ」

「ばっ、ゼン!?」


 私は姿を現し、サイリスに近付いた。


 フードを被っているが構えや佇まい、足運びがそうだと確信していた。



 能力、銀姫の…。



 それよりも早く…!!



 能力、グラビトン!!!



「十年前の敗北に決別させてくれ」

「……」


 運命というものを信じてはいないが、この巡り合わせには感謝しなければな。


 あの時は最善を尽くした。今も一切の油断無く、全力で戦うつもりだ。



 私自身のために!

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