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B MAIN  作者: 半半人
フリッド・フラン編
71/173

綺麗事


 8バースト。それは西方にあるテーブルゲームである。1から3のカードを使い互いに攻守を切り替えて行う。ルールは簡単。守がカードを裏側にして伏せる。攻はその中から一枚選ぶ。それを交互に行い、出た数の合計が8以上になった方が負けとなる。最短三回の攻守で決着が着く。


 厳密には、1を選んだ時のみ合計から引くことができる。2、3は加算されていくが、1は減少していく。駆け引きで何倍にも楽しめる仕様になっている。



 奴の能力もそれに忠実ならば一歩的な加算はあり得ない。拳と拳がぶつかった場合、互いに加算されてしまうのではないか?それでは相討ちも考えられる。


 そこでエルドの言葉を思い出した。能力名を明かす前、「何回食らって、何回食らわせたか数えてる?」と言った。攻撃回数が最も重要であり、変動がする要因がこれしかないとすると。


「攻撃を食らうと加点され、攻撃を当てると減点される」


 ロッドの魔法を食らった時にかなり焦ったが、この予想があっていれば私が当てた分2発の余裕がある。


 悩むより、実際に手の甲を見ればいい。


 視線を移すと、そこには予想通りの数字が浮かび上がっていた。

 


 やはりな…。




 私の考えで合っているようだ。能力が分かれば恐れることはない。


 

 能力、グラビトン。



 近付かなければいい。至極単純なことだ。


「…エルド?」

「ロッド!」

「あいさ!」


 私に銃口を向けたルキエラより早く、ロッドールが壁を作成した。


「うぐぐ…っ!」


 こいつ…!グラビトンの重力の中動けるのか!?


 エルドは崩れた体勢を直し、ゆっくりと動きだした。


「天使だけじゃなく悪魔の能力も使えるんだ。狡いなぁ」


 まずい…。まずいぞ。グラビトン発動中の私の身体能力はディック・アイアン発動時よりも低い。さらに防御力も著しく低下する。一撃で致命傷になりうる。


「ゼン。あいつの能力は大体分かったんだけど。近付かないとなぁ」

「一瞬でも近付ければいいのか?」

「一瞬は無理。何秒か欲しいよ」

「…そうか」


 前方のエルド。上からの銃撃。一つずつ対処するしかない。


「ロッド、騎士達に魔法の数を増やせと伝えろ」

「その後は!?」

「あとは成り行きに任せろ」

「言ってる意味が…」

「その時に分かる」


 混乱するロッドールに構っている暇はない。私はそれ以上に考えなければならないからな。


「手数増やしてください!!」


 必死なロッドールの言葉は魔法騎士団に届き、ルキエラへの魔法の数や威力が増した。


「よし。これでエルドを倒せる。合図をしたら壁を解いて走れ」

「…」

「分かったな?」

「はぃ…」


 今だ!!


 ロッドールが魔法を解き、壁を消すと同時に私の能力も解除した。


 ここからはエルドより速く動くだけだ。


 エルドとの距離が詰まる。少し後ろでロッドールが息を切らしているのが分かった。

 重力が消えたことでエルドは自由になった。こちらが二人いることに動じることなく反応し切れるだろう。


 だが、



 エルドが笑い、私に蹴りを放つ予備動作に入った。このままの速度で走れば確実にその攻撃を食らうだろう。

 ロッドールの顔には「ヤバイ…!」と浮き上がっていた。


 そんなことは分かっている。


 だが、



 エルドの能力に気付いたから。ロッドールがいるから…。


 勝利への要因はいくつかある。



 そして、最もそれに結び付いたのは。




 能力、白玉蛍。




 強烈な電撃がエルドを襲った。



「あっ…!」


 後ろを走るロッドールはそれがアイゼンの能力の一つだと気付いた。そして、先程の言葉の意味も理解した。


 ゼンはこれを狙っていたんだ!けど、いつ仕掛けたんだ?硬化している時は電気は使えないし、電気を使えば硬化できないし…。ま、いっか。距離が詰まればこっちのもんだ!



 能力、フォース・イーレブン。



 電撃で硬直した数秒。能力を奪うには十分だった。


「こん、にゃろ…!」


「終わりだ」



 私はディック・アイアンを発動し、蹴りを放った足を掴んだ。


「げっ!」

「動きを止めれば…」

「くそっ!離せよ!!」


 エルドは滅茶苦茶に抵抗したが、私には何の効果もない。攻撃回数でディック・アイアンに打ち勝とうとしたのは驚いた。だが、これは戦争であり一対一で戦おうなんて都合の良い話はない。


 使えるものは何でも使う。弱点があれば徹底的に狙う。勝つため、生き残るためには当然のことだ。


「出会った時が悪い」


 この場で会わなければ…正々堂々戦えたかもしれない。そうであったなら、勝敗は大きく変わったに違いない。


 だが、責任を負うものとして結果を出さなければならない。



 時を。場所を。恨んでくれ。



 一点硬化…っ!



 私はエルド腹に強烈な一撃を叩き込んだ。衝撃で後方へ吹き飛び城の壁を突き抜けて湖に落ちた。


「圧倒的力、圧倒的数の前に…」


 綺麗事は成り立たない。



 エスティアーナが滅んだ時、私はそう学んだ。

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