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B MAIN  作者: 半半人
フリッド・フラン編
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一新。目的の一つ


「はっ、はっ……!」


 聞いていないぞ!!風の魔法使いはあの場にいた弓使いではないのか!?


 ジェリテはドラギオンの指示通りに動いていた。


 完全に予想外だ…!建物の破壊でギーク・スティエルの魔法陣が解けてしまうとは。


 ジェリテの能力は、魔力で円を描くことで発動する。円の内側ではジェリテ以外の能力を封じる効果がある。


 だが、ロッドールの燕天六輪大砲で円が崩れてしまった。


 もう一度フリッド・フラン全体にギーク・スティエルの魔法陣を仕掛けるには時間が掛かりすぎる。


「この戦いではもう出番無し、か」


 二人の人間にいいようにやられたのは癪だが、ここから先は任せるとしよう。戦いには向かない能力だからな仕方ない。


 ジェリテはとりあえず姿を隠した。


◇◇◇◇◇


「よくも仲間を…!」


 横たわるドラギオンに止めを刺そうとする魔法騎士団。戦闘だけで多くの仲間を失ったうえに、捕食された人達も加わるとなると相当の数になるだろう。


 だが、殺しはしない。


「待て。戦いが落ち着いた以上、こいつをすぐに殺す必要はない」

「しかし…!」

「有益な情報を持っているかもしれない。レナードの元に連れて行け」

「…分かりました」

「ついでにあいつ(シナ)も連れて行け」

「何言ってるの?私はまだ…」

「確かに。お前のその力は必要だ。だが、はっきりと言うと邪魔だ」

「アイゼン…っ!」

「ここから先は更に厳しい戦いになるだろう。その時にお前の命を守れるとは限らない」

「守られなくたって」

「その怪我で何ができる?」

「…随分と言ってくれるわね」

「そうでもしないと引かないだろう?シナ・ハンクが死んだとなったら国にとって、いや人間にとって大きな損失となる」

「…人を物みたい言わないでほしいわ」

「というのは、建前で。お前のことは好いてるからな。なんとなくだか、死んでほしくないと思っただけだ」

「それで私が引くと思ってるの?」

「あぁ。代わりが来たからな」

「代わり?」


 私はシナの後ろを指差した。


 そこには顔を真っ青にしたロッドールが立っていた。そして、次々と援軍が来た。


「レナードがシナさんと交代しろ、って…」

「な…?」

「そういうことだ。随分早かったなロッド」

「空にいた天使は大体抑えたんで。魔法で飛んできたんだけど…なんかめっちゃヤバそう」


 ロッドールは周囲の戦闘痕を見た。砕けた鎧や武器の破片、地面に染み込んだ赤黒い血。そして、多くの死人。それらが戦いの怖さを物語っていた。


「おれっち死にたくねぇよ…」

「こんな人に任せられないわ。貴方、今すぐ戻ってレナードに伝えて。私は大丈夫だって」

「うっ…」

「いい加減にしろ。黙って引け」


 本人だって分かっているはずだ。自分が言っていることがただの我儘だと。


 ここまでだと教えるのが私の役目だと思った。


「強者は引き際を知ってる。お前もそうだろ?」

「…」

「シナ殿。お迎えにあがりました」

「さっさと連れて行ってやれ。これが終わったらまた会おう」

「……分かったわ」


 シナはやって来た部下に肩を借りてレナードの元へ飛び立った。その時に悔しそうな顔を見せたが私には関係無い。


「ゼン、お前。シナさんと仲悪い?」

「仲が悪いというよりは、お互いに納得できないだけだ。あいつは個人の感情を優先していることが多い」


 シナは私の行き過ぎた自己犠牲を理解できないでいた。反対に、私はシナの無駄な思考や効率の悪い考えを理解できないでいた。


「ゼンは自分のことに無頓着だもんな」

「まぁ。そういうことだ。こだわりやプライドは私にとってはどうでもいいものだ」

「…で、これからどうする?」

「そうだな…」


 この戦いの目的はフリッド・フランの奪還だ。そのためには二つのことを達成しなければならない。一つは天使の殲滅。もしくは、総大将の撃破だ。もう一つは人間の救出だ。


 天使は捕らえた人間を殺したりしない。その方が長期的に魔力を得られるからだ。植物と変わらない扱いだ。


「先に救出だ。レナードから何か聞いていないか?」

「多分地下にいるって言ってた」

「水上都市だぞ。地下があるとは思えないが」

「地下なら安全じゃん」

「…探してみるか」


 部下に地図を貰い、それらしい場所に向かったが何も見つからなかった。途中で倒した天使に吐かせようとしたが何も知らないようだった。


「あとは城か」


 二つの橋から最も離れた場所にある。これは偶然ではないだろう。城と巨大な時計盤が一体となった塔のような構造が特徴的だった。


「ロッド。何でお前がここに来たか分かるか?」

「シナさんの代わりじゃないの?」

「ならばシナでもよかった筈だ。レナードはこちらの状況が分からないにも関わらず、お前をこっちに送り出したろ?」

「うん」

「初めからそのつもりだったんだ。前半はシナ、後半はロッド、とな」

「何でなんだろ?」

「さぁな。天使との戦いに関してはレナードほど経験を積んだ者はいないだろう。あいつの考えを理解できなくても、間違っていることはないはずだ」

「ゼンはレナードのこと、すげぇ信頼してんだなぁ」

「…今だけだ」


 勘だが、ドラギオンやジェリテとは全く異なる能力を持つ者がいると予感した。


 このまま進むべきか。範囲や複数の相手を攻撃することのできる天使がいた場合、陣形を変える必要がある。

 色々と考えた末、アイゼンは様子を見ることにした。アイゼンを先頭に、距離を置いて魔法騎士団とロッドールが後続する隊列を組んだ。


 慎重に歩を進め、とても長い階段を上り城の門の前にある広場に出た。


 そこには私たちのことを恐れぬ一人の天使が胡座をかいていた。欠伸をして目を擦ること数秒。はっと我に返り目を見開いた。


「うっわ~……めちゃんこいるやん」


 どうやらこちらの数にがっかりしているようだった。分かりやすい奴だ。


「お前は何故ここにいた?ただ休憩していたわけではないだろう?」


 その門の先に、見せたくないものがあるのか?


 その質問の意味を汲み取ったロッドールが驚いた表情を見せた。保証はないがその可能性は高い。

 私はこれからの戦いに備え、一度気を引き締めてほしかった。ロッドールと魔法騎士団の全員に。


「油断するな。死ぬぞ」

「うっ…!」

「何でこっちに来るかなぁ?こっちに来なければオレは楽できてハッピー。あんたらも戦わなくてハッピーだったのに」


 後悔しないでよね?



 ふざけた雰囲気が一変し、殺気立った空気が辺りを包んだ。

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