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B MAIN  作者: 半半人
フリッド・フラン編
63/173

上策、下策


「ゼンさんからの合図です!シナ!」



「全軍突撃!!」


 先頭に立つシナが勢い良く飛び出した。そして、号令と同時に魔法騎士団も後に続いた。


 アイゼンが敵を引き付けたことにより、天使達の反応が著しく遅れた。そのうえ、多くの人員をアイゼンに送ったためこちらを迎え撃つ者は少なかった。橋を壊そうとするが、シナが風の魔法で相手を近付けず、後ろに並ぶ魔法騎士団がそれを迎え撃った。空中で様子を見る天使には、ロッドールと配置された魔法騎士団が遠距離から攻撃した。



「くそっ!何を慌てている!?冷静に戦え!」

「しかし、橋の破壊が!」

「そんなもの手前で破壊しろ。とにかく、あいつらを足止めするんだ!!」

「了解です!!」


 一人の人間が囮になるのは分かりきっていた。が、たった一人があれだけの力を有しているとは…!攻撃に向かった奴等全員が返り討ちにあうとは誰が想像できようか。戦線復帰が可能だとしても、巻き込まれた奴等はすぐには戻れないだろう。おかけで、こちらの部隊に反応が遅れ、少数で対応しなければいけなくなった!


 しかも、特攻部隊の進攻が速く、魔力の霧に隠れた魔法援護部隊はその実態を掴めていない。どれだけの数がいるのか全く把握できないでいた。



 ここまでが、


 レナードの筋書き通り。



 アイゼンがいくら敵を集めようと、こちらの伏兵に気付かれれば全く意味がない。そのためには、敵の索敵をすり抜ける必要があった。だが、人間は魔力を生まれながらにして備えているものであり体外に流れ出ないようにしても天使には感知されてしまう。


 すり抜けることができないと分かったレナードは一つの細工で天使を、この場合はジェリテの感覚を鈍らせた。


 道中での魔潜石が何に使われたのか?



 その答えがここに繋がる。



 粉々に砕かれた魔潜石は宙に舞い、一時だけだが魔力の煙幕を展開する。


 シナ曰く、その場に留まり続ける風の魔法。浮遊魔法を残せば、その煙幕は晴れることなく敵の目を欺く。魔法を発することでその元を辿られることもない。


 レナードは。予測不能、かつ、完全な隠れ蓑を仕上げたのだった。




 まさか、ゼンとレナードの策がここまで噛み合うなんて…。


 シナが少し驚いている間に、



「後ろへ合図して」


 近くにいる兵が一発、空に火球を打ち上げた。




「レナード、火の玉が打ち上がった!」

「シナが橋を渡り切ったようです。では、次の作戦に移行します」

「…うしっ!」


 ロッドールは水の槍を造り、城を目掛けて放った。


 それが合図となり、湖の全方向からその中心にある城に水槍が放たれた。


「シナ様、第三段階に移行しました!!」

「味方を一ヶ所に固めて。敵陣に拠点を作るわ」

「はっ!」

「私は…」


 本当に手強いのは遠くでこちらを見ている奴だ。雑魚は任せて、風の魔法を展開した。



 シナは飛んでくる水槍に風を添え、軌道を変えた。


「…なっ」

「狩人から逃れられると思ったの?」


 風の流れで場所は知れていた。シナは軌道を変え加速させた水槍をジェリテに向けて誘導した。


「残りは…!」


 目の前にいる天使に向けた。


「貴方に」

「ほっ。冗談を言うには十年早いぞ小娘が」


 能力、枯れ木の龍。


 シナが放った水槍を全て食らったが、ドラギオンに効果はなかった。


「悪魔の様な容姿になってしまうが似合うだろう?」

「…」

「…ジェリテ!!何をしている」


 冗談を無言で返されたドラギオンは堪らなかった。


「…すいません。少し意識が飛んでいました」


 ジェリテも空気を読み、急いで能力を発動した。



 能力、ギーク・スティエルの魔法陣。



 その瞬間、フリッド・フランにいる全員が絶句した。



 魔法が、使えない…。



 しかし、レナード達にはそのことは分からない。シナとそこにいる魔法騎士団のみで対処しなければいけない。



「能力も封じられてしまうが、人間の身体能力だけで天使に勝てると思うかな?」


 矮小な人間どもよ。



「僅かだが、手を貸そう」

「貸して当然だ。口だけ達者になってどうする」

「ヴィクティムが消えたんだ。油断はしないさ」


「全体、防御を優先!互いに背を預けて前にだけ集中すること!!」

「はっ!」


 まずいわね。レナードがこの事態に気付くまで時間を稼がないと…。敵陣のど真ん中では不利すぎる。一度引こうか。


「シナ様!橋が落とされました!!」

「…やられた……!」


 先に退路を断たれてしまった。こうなってしまえば策はない。迫り来る天使を一人ずつ倒すだけ。


 シナは小型の弓にダガーを装着し、身構えた。



◇◇◇◇◇


「ミア姉。ジェリテが能力を使ったみたいだよぉ」

「じゃ、そっちに近付かない方がいいねぇ。でも、湖に落ちた人間…」

「すっごい魔力だったねぇ~」

「中央はミア達はいらないと思うからぁ、あっち行こっ」

「うん!」


 能力、マーシー・ダイバー。


 戦闘に加わらず怠けていた双子はアイゼンに目を着け、湖に飛び込んだ。

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