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B MAIN  作者: 半半人
エスティアーナ編
61/173

ゼムレヴィンの結束


 休憩を終え、再び国会議室に集まった。ロッドールがやや疲れているように見えるが気のせいか。


「作戦は、シナとアイゼンが前線で敵の懐に潜り込んでください。内部から崩していきます。僕とロッドールはそれがスムーズに行えるよう対応します。ロッドールは遠距離攻撃で支援し、僕が指示を伝えます。ここまではさっきと同じですが少し変更があるのでよく聞いてください。シナ、魔法騎士団四千人の指揮権を託します。ヘイヴェンスも異論はありませんね?」

「構わん。シナ殿なら問題ない」

「ということです。頼みます」

「分かったわ」


 本来は私とシナで二千ずつを率いる予定だったが、余所者の私に命を預けて戦えるとは思えない。士気を下げることに繋がるだろう。

 いっそのこと二階申のシナが指揮を取った方が魔法騎士団も動きやすい。


「そして、ロッドールの能力について把握しておいてください」

「え?」

「え、じゃない。私は知っているが、お前が他の奴に説明しなくてどうする」

「そっかぁ…」


「…おれっちの能力は、理解した能力を奪う能力。で、見たり聞いたりて分かったものだけ自分のものにできるんだ。そして、盗った能力を他の奴に貸すことができる。そこのやりとりはおれっちが自由にできるんだけど、奪ったり貸したりするのは至近距離じゃないと駄目。貸した能力を回収するのはどこでも大丈夫」

「同時にどれだけ発動できるんだい?」

「多分無限に。でも、おれっちが魔法とかで戦うなら二つが限界、かな」

「同時に二つかぁ。ふーん」

「ケイニー以外に質問があれば今のうちにしてください」

「技や体術のような技能は奪うことが可能なのか?」

「えっと…」

「ヘイヴェンスだ」

「はい。ヘイヴェンスさん。それは無理です」

「理由は?」

「分かんないけど、やろうとしてもできないから」

「…いい加減だな」

「す、すいません」

「じゃ、私からも」

「ゼン、あの人は?」

「シナだ」

「オッケイ、ありがとう。で、質問は?」

「遠距離攻撃なら私の方が向いてるでしょう?彼が敵陣に突っ込めばいいじゃない」


 確かに。アイゼンを含め全員が納得した。実力のあるシナを前線に出すのは変だ。


 だが、レナードがそう考えたということは何か理由があるはずだ。ロッドールを後方に置いた方が有利だと思ったからこの作戦を私たちに伝えたのだ。


「説明すると長くて信じてもらえないと思うのでやめときます。とにかく、レナードが後ろにいて得する場面が必ず来ます。天使とは縁があるようで戦い慣れてるんですよ」

「それで納得できると思うの?」

「第二階申が第一階申の言うことを信じないんですか?」

「…はいはい」


 面倒になると予想してシナは引いた。その判断は間違っていないだろう。


「シナ。私もそうだが、そいつへの不満を差し引いても実力は信用できる。そうだろ?」

「…」

「そんなに褒めても照れませんよ」

「それは求めてない。が、私のことも信用してほしい。シナ、私が片方の橋から一人で進む。囮となって多くの天使を集め、お前が進攻しやすいように立ち回る」

「また自己犠牲?」

「効率主義なんだ。無駄を省き、有利に戦いを展開するためなら囮になるぐらいどうってことない」

「…分からないわ」

「まあまあ。戦場ではそういのはなしでお願いします。それでは、ケイニーとヘイヴェンスにはゼムレヴィンを託します。僕たちが帰るまで厳重警戒ですよ」

「言わずもがな」

「余裕なんで気にしないでください」


「ま、心配はしていませんから」


 レナードはうんうんと頷くと席を立った。


「僕は上に報告してきますので各自用意してください。明日の早朝には発ちます」


 いよいよか。逸る気持ちを抑え、フリッド・フランの人を救うことを最優先しよう。サイリスについては後回しだ。


 アイゼンは気持ちを切り替えたが、一つのことが頭に浮かんだ。

 レナードはサイリスを討ち取りたいはずだ。それなのに後方支援を選んだ理由は何だ?早い者勝ちと言ったのは私を煽るためか?


「…今回は踊らされてやるか」


 私を焚き付けるのが目的ならあえてそれに乗ってやろう。


◇◇◇◇◇


「魔法騎士団に告ぐ。ゼムレヴィンのため、人間のために命を懸けなさい。私は貴方たちを率いると同時に、誰一人として死なせないつもりです。敵を殺すことが目的ではない!生きるため、勝つために私に全てを委ねろ!!」


 おぉぉおぉ!!!


「お前より階申らしいぞ」

「はい。僕には無いものを持っている三人を選んだんですから。これぐらいは予想通りです」


 シナの淡々とした激励が魔法騎士団の士気を高めた。第二階申だからではない。シナが積み上げたこれまでの信頼とこれからの期待が騎士団の中で一体となっているのだ。


 あの時とは全く違う。ティエナもゼノンもいない。頼れる部下がいるわけでもない。

 個の強さが目立つ私たちが天使に勝つことができるのか。戦いで何が起こるのか一切分からない。


 だが、勝利を譲る気は無い。サイリスとの、いや、エスティアーナの敗戦から私は立ち止まったままだ。十年が経ってもそれを拭えないでいる。



 その先に進むために、私は勝たなければいけない。



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