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B MAIN  作者: 半半人
エスティアーナ編
58/173

強激戦


「…おい、まだ生きてるか?」

「…アホか。てめぇより先に死ぬかよ」

「はっ。どうせ死ぬんだ。先も後もねぇよ」

「…そうだな」

「まぁ、悪くなかったぜ。色んな奴と殴り合いしてきたが、今回が一番燃えた」

「馬鹿が。そんなこと考えたこともねぇよ。こっちは毎日が生きるか死ぬかに関わるんだからよ」

「もったいねぇ。自由に生きりゃあよかったのによ」

「…それもそうだが。終わってみると以外とアリだったな、って思うんだ」

「…それは……俺様もそう思うぜ……」

「天使とこんなに話したのは始めてだ……って聞いてるか?」

「……」

「…てめぇが先に死んでどうすんだよ」


 ゼノンは胴から下が離れているバーレーンを見た。


「…忘れねぇよ。てめぇも、今までの全部な」


 視界の端に見えるのが自分の下半身なのは最悪だけどな。



 ゼノンとバーレーンがいた一帯は巨大で鋭利なもので切断された跡が残っていた。



◇◇◇◇◇


 それはサイリスが名付けたものではなかった。


 生まれながらの美しい白髪と腰に提げた二つの刀剣。そして、圧倒的な強さと冷酷さから。


 佇まいは白金の姫、戦場での字は黒金の嵐。


 美しい容姿に反し、強大な力と撒き散らす破壊の数々で仲間にすら恐れられる存在であった。


 そして畏敬の念を込め、特に強さを称えて天使たちは言う。


 銀姫の鉄刀


 と。



 だが、その呼び名をサイリスは気に入っていた。


 その名に誇りは無い。ただなんとなく。目の前にいるアイゼンにそれを汚されたような気がした。そして、ほんの少しだけ。


 許せないと思った。




 雰囲気が変わった…。


 怒りや焦りではない。見下していた相手を、対等だと見直すような。何はともあれ、ここからの攻撃には油断や加減といってものは無くなるだろう。確実に私の命を取ることに集中するだろう。

 サイリスの攻撃は威力、速度ともに最強と言える。まさに、最も強い斬撃だった。


 だが、抜刀時なら始点が決まっている。


 始まる場所が決まっているなら、そこからの軌道も予想できる。


 さらに。



 先程の斬撃が致命傷にならないと分かったサイリスはこう考えるはずだ。



「「一点」」


 だろ?



 この時アイゼンはディック・アイアンの能力を完璧に扱うことができなかった。


 だが、


 狙うのが首への一点だと予想できれば。



 バキンッ!!



 サイリスは剣を振り抜いた動作のまま停止した。



 まさか…。

 


 砕け散る鉄片の向こうでアイゼンは笑った。



 一点硬化。アイゼンは生死の境でその技を可能にした。



 まだ使いこなせないが…。これでサイリスと戦える。ここからは五分五分の戦いだ!


 全身に硬化を広げ、アイゼンは接近した。刀は剣よりも長いため懐に潜り込まれると攻撃が制限される。これしかない。


 前に突き出した拳がサイリスの左腕を掠めた。


 いけるか……!?


 しかし、サイリスは冷静にそれを切り返し、アイゼンに傷を負わせた。

 攻撃速度、回数、威力。それらをどう乗り越えてサイリスを倒すのかアイゼンは考えた。隙の無い相手をどう崩すか…。どう立ち回るか…。攻撃を受けながらアイゼンは思考を巡らせた。痛みや衝撃で意識が飛びそうにもなった。


 そして、その思考はすぐに放棄した。 



 サイリスとアイゼンの間にレナードが割り込み、攻撃を受け流した。


「十分慣れました。ゼンさん、お疲れ様です」



 ここでサイリスは驚く。アイゼンが能力で受け止めたことは納得がいく。魔力を練り、硬化を収束させることで硬度を上げた。結果、剣は折られた。

 だが、普通の人間に攻撃を受け流された?天使は魔力を見ることができるが、レナードからは何も感じなかった。


 つまり、身体能力だけで斬撃を読み切ったことになる。


 そんなことが…あり得るのか……?人間が能力を発動している天使を追い越すことが可能なのか?


 サイリスの動揺は明白だった。


 それもそのはず。アイゼンでさえそう思ったのだから。



 レナードはアイゼンよりも賢い。特に相手の心理を読み取る頭脳戦に長けていた。優れた洞察力で相手の癖を見抜き、少しの時間でそれに慣れる。


 レナード曰く、相手のすることがなんとなく分かるのだ。


 分かるから予想できる。予想できるから勝てる。ただそれだけのことだ。


 アイゼンが一人で時間を稼いだ理由がこれだった。


「ゼンさん…」


 反撃開始だ!



 サイリスは目にも止まらぬ速さで何度も斬撃を繰り出した。刀身の淡い光沢が残像が軌跡を描いた。

 アイゼンは能力で攻撃を受けることに、レナードは回避と受け流しに集中した。


 その光景に敵味方関係なく、全員が圧倒された。



 斬撃の嵐を食らいながら、アイゼンとレナードは少しずつ、少しずつ距離を詰めた。多くの傷を負い、痛みと出血が増すばかりだった。だが、近付くほどにより速く、より力強くなる斬撃に屈することはなかった。


 そして、互いが得意とする間合いに入ったとき。



 三人は同じことを思った。




 一番始めに気付いたのはレナードだ。攻撃を凌ぐことに集中しすぎていた。

 サイリスが最も得意とする間合いに踏み込んでしまう。


 踏み込んだ瞬間、アイゼンが殺される!




 だが、それに気付き、伝える直前でサイリスが感じ取った。


 間合いに入った者を確実に葬れる。そして、それはレナードよりやや前にいるアイゼンが先に踏み込むだろうと無意識に思った。


 無数の斬撃から、一点への強撃で殺せる。


 攻撃速度に反応できていないアイゼンなら……確実に殺せる!




 最後に、二人に遅れてアイゼンが察した。


 時の流れが緩やかになり、鋭く研ぎ澄まされた殺意そのものが向けられるような感覚。激戦の度に感じる暗く冷たい重圧。


 死に最も近い瞬間、と私は思っている。


 それは距離を置く程度では逃れられない。迫り来る強烈な殺気に全てを奪われてしまうだろう。


 考える時間は無い。次の一動が生死を分ける。



 ほぼ間違いなく死ぬ。先程と同じ様に……!!



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