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B MAIN  作者: 半半人
エスティアーナ編
56/173

各々が背負うもの

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 バーレーンの能力は磁力を体内で発生させるものである。本人の戦闘能力が上昇するわけではないため、ゼノンとの殴り合いは五分五分だった。


「…はぁ……はぁ……さっさとくたばれよ、アホが…!!」

「…人間のくせに、しぶてぇな…!!」


 ゼノン軍は全員この場から立ち去った。殿としての役割は十分に果たした。


 だが、引けない!!


 国を支える将官としてではなく、一人の漢として!こいつの拳から伝わる熱を真っ向から受けて気付いた!!戦場にいる責任、勝利への渇望!!


 オレと同じだ!!




 一方でバーレーンも同じことを考えていた。


 戦いが始まる前。俺様は囮になる軍の指揮官になった。そして、これから死ぬことが分かってる仲間は真剣な顔でこう言ったんだ。「勝利のために喜んで死ねる」って!!


「ウラァァッッ!!」


 なわけねぇだろ!!家族だって、友達だっているくせに!死にたくないくせに!!強がってんじゃねぇよ!!!


 あいつらが掛けた命は無駄にしねぇ。


 どんだけ強くても、絶対に負けねぇ!!!



 互いに譲れぬ思いがある。



 だからこそ、争いは一方が死ぬまで続くのだ。



◇◇◇◇◇


 何故だ…。



 何故だ…?



 何故だ?



 何故だ!?



「何故攻撃が当たらない!?」



 レナードとジェットの戦いは奇妙なものだった。



 能力、L・ジェット!


 ジェットの能力はその名の通り、魔力を体内で推進力に変えるものである。そのため、移動や攻撃の際に速度を上げることで機動力や攻撃力を向上させる。


「何故か、って…?」



 こっちは何人犠牲になってると思っているんだ?



 レナードはジェットの能力の本質には気付いていないが、完璧に回避するコツを掴んだ。


 だが、敵を倒す術がない。



 互いに致命的な一撃を食らわせることができないため、交戦する時間だけが続いた。


 そして、先に動いたのはジェットだった。


 レナードに近付いた瞬間、全身から能力を発動させたのだ。予備知識も無いため、突然の衝撃にレナードは吹き飛ばされた。


 ジェットはそうなると思っていた。




 歩法、蓮捻(はすひね)



 ジェットの接近に反応したレナードは、素早くを足を運び滑らかな動作で背後に回った。その洗練された動きにジェットは追い付けなかった。


 腰に挿していた短剣を抜き、ジェットの背中に突き刺した。だが、さほど深いものではなかった。


「っああぁ!!!」

「仲間の死を償ってもらいます…!」


「…人間風情が嘗めるな!!」



 再び能力で後ろに飛び、レナードを後方の木に叩き付けた。その衝撃でさらに深く短剣が刺さったが気迫が衰えることはなかった。


「がっ!」

「っふぅぅぅ!!刺し傷程度で私が止まるとでも思うか!?」


 木へ叩き付けられた衝撃で肺の空気が一気に外に出た。痛みと共に襲ってくる苦しさに意識が揺らいだ。


 このままでは殺されてしまう!動け…!こいつを倒すんだ!!


 自身を鼓舞し、無理矢理立ち上がった。



「はあぁぁぁぁ!!!」



 短剣を構え、ジェットに向き直った。何が来ても反撃できるよう、全神経を集中させた。


「これで終わりだ……っ!?」



 ジェットが突進の体勢になると同時に視線が左下に移った。


「…死に損ないが!!」


 亡くなったと思われていたティエナがジェットの足を掴んでいたのだ。



 まさに、最後の力を振り絞っての行動に思えた。



 レナードの体は思考を追い越し、ジェットの喉元に短剣を突き刺した。



「…死ね」


 突き刺した短剣を横に払い傷を広げた。


「ぐ…あぁ……」


「ティエナ将官!」


 レナードはジェットを横切り、膝を折りティエナに顔を近付けた。


「よかった…!敵は倒しました。一度引きましょう」

「……」


 ティエナは何も言わず、視線と指先を崩れたテントに向けた。


 そこに何かあるようだ。


「分かりました。あと僕たちが……!!」


 ティエナは差し出されたレナードの手を一度だけ強く握り、それ以上動かなくなった。



 その時レナードに奇妙な感情が芽生えた。自分を指揮する将官として尊敬し頼りになると思っていた。悲しさや虚無感に襲われた。


 だが、一人の人間として。


 仲間として!



 悔しい……!!



 荒々しい憤りとは違う、冷酷な怒り。天使に対する強烈な殺意がレナードの脳内を、内心を満たした。


 ティエナ将官が最後に託したものを僕は受け継がなければいけない。ティエナ将官の死を無駄にしてはいけない!

 崩れたテントを退かし、それらしき物を探した。



「副将!ご無事でしたか!?」

「あぁ…」


 一度撤退させた兵が、更なる兵を連れて戻って来た。


「副将…?」

「……大丈夫。それより、今の戦況はどうなっていますか?」

「はい!ゼノン軍は撤退が完了し、守備陣形で待機。ティエナ軍の前線は右軍と交戦しています。こちらの拠点は見ての通り壊滅しております…」

「B隊は?」

「完全に行方を眩ませ、こちらでも把握できません」

「よし!報告お疲れさん!今は押され気味だが、こっから逆転するぞ!」

「はっ!!」


 レナードが見付けた一冊のノートにはここまでの流れがそのまま記されていた。


 ティエナ将官は捉えたんだ。この戦いの流れを。そして、その流れ掴む手順も見出だしていた。



「すぐに引き返せ!守備をもっと強化しろ!!」



 ノートには簡潔に、こう書いていた。



 中央軍を止められるかが全てを決める、と。





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