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B MAIN  作者: 半半人
エスティアーナ編
55/173

戦術戦

今年最後です。良いお年を。

「たったの二発当てたぐらいで満足してんじゃねぇよ」

「……んだとゴラァ」

「鼻血出てんぞボケが」

「これは戦いに興奮してんだよ。そういうテメェは何本か骨イッてんじゃねぇの?」

「全身筋肉なんだよ。ほぼ無傷と一緒なんだよカス」


「…テメェ、名前は?」

「絶対忘れんじゃねぇぞ!!ゼノンだ!!」

「そうかよっ!!俺様はバーレーンだ!あの世で自慢しな!!」


 振り抜いた拳が互いの頬を掠めた。


◇◇◇◇◇


 ゼノン隊の動きが変や…。勢い良く前に出たと思ったら、ノロノロと後退してる…。罠に嵌められた?


「将官!一体の天使がこちらに接近しているそうです!!」

「慌てず魔法で撃ち落としいな」

「しかし…!!」


 それよりも戦況把握の方が大事…。ゼノンはしぶといから死なんだろうし…。


「将官!」

「うるさいなぁ…」


 ボッ!!


 それは聞き覚えのない奇妙な音であった。ボッ、ボッ、と鈍い破裂音は次第に近付いて来た。


 天使、だね…。でも、普通の奴に比べたら速い…。能力…?


「魔法で撃ち落とせばいい」


 自軍に指示を仰ぎ、接近する天使を迎撃させた。


 だが、秀でた機動力で魔法を潜り抜けた天使はティエナの元に辿り着いた。


「もっと派手に出迎えてくれよ。お嬢さん」


「…何……?」



 ティエナは付近に身を潜めた仲間に密かに合図を送った。



 能力、L・ジェット。



 しかし。攻撃は空を切り、天使の華麗な身のこなしで瞬く間にそれらを制した。


「私の名はリーン・ジェット。貴女を導く天使の名です」

「ちっ…!」


 ティエナはアイゼンを偵察に行かせたことを後悔した。


◇◇◇◇◇


「隊長。周辺の情報集め終わりました」

「よくやった」


 こっそりとゼノン軍とティエナ軍に紛れ込ませていた隊員と合流し、情報を入手した。



 ゼノン軍は対面する一軍を撃破。しかし、エスティアーナを防衛することが目的なのにかなり深追いしてしまった。さらに、敵の能力により撤退に時間が掛かっている始末。


「…明らかに相手の策に踊らされている」

「隊長?」

「気付かないか、ヴィンガー?」


 ゼノン軍が前進しその隙を潜り抜けてエスティアーナに攻め込んでも、身軽なティエナ軍が間に入ることができる。そこから引き返したゼノン軍と挟撃に持ち込むことができる。

 今回のゼノン将官の行進は無謀な作戦に思えるが、裏では緻密に計画された最善の策略になっている。打破することはとてつもなく困難だ。


 しかし、一軍の囮。重装備のゼノン軍に対する磁力での機動力低下。


 おそらく全てが敵の描いた通りになっている。次は何を仕掛ける?何が狙いだ?


 地図を広げ、敵と味方の配置や動きを記してみた。頭の中で考えうる戦略を数度展開した。


「読めた…!」


 この戦いは中央軍が要だ。



 ゼノン将官は中央軍の援護が来る前に左の一軍を潰しに掛かった。だが、何事もなく勝利した。一つの軍を囮にして中央軍が何をしたかったのか?


 それは紛れもなく。エスティアーナへの直接的な進行!



 ゼノン軍の撤退を遅らせ、ティエナ軍の援護を妨害する。するとその二つの軍の間に隙間ができる。


 中央軍は最初から援護ではなく、本拠地だけを狙った来たんだ!!


「ヴィンガー!動くぞ!!急いで中央軍とエスティアーナの中間に割り込むんだ!!」

「はい!全員、全速で行くぞ!!」 


 中央軍との正面衝突は免れない…。それに、ティエナ軍にも何か仕掛けられる可能性がある。後手に回ってしまっている状況を打開しなかれば!


「私の背中だけを追って来い!」



 アイゼンは味方に強い言葉を放ち、目的地に向け馬を走らせた。


◇◇◇◇◇


 突然の撤退を命じられたゼノン軍は半ば混乱状態であった。だが、バーグとレナードによる迅速な指示で態勢を立て直し、国の守りに特化した陣形に配列させ直した。

 そして、バーグは防衛に集中し、レナードは何人かの精鋭を連れティエナの元へ急いだ。



 ゼノン将官のあの焦りようは今までに見たことがない。


「ごめん…もしかしたら、僕たち死ぬかも……」


「副将!我々は覚悟しています。敵を殺すことも、自分が死ぬことも」


 レナードが連れて来た一人がそう言った。そして、後ろの全員が同じで気持ちであることは見なくても伝わってきた。



 全力で馬を走らせ、ティエナ軍の拠点に着いた。



 そこで全員が膠着した。



 ティエナ将官が倒れ、そこに佇む一人の天使。足元に広がっている血溜まりが異常さを物語っていた。


「……っ!!」


 後列に警戒を促そうとしたが声が出なかった。そうなってしまうほどの現状と、そこにいる天使が放つ圧力に怯んでしまったからだ。


「おや?随分とお早い援軍ですね」


 ジェットはレナードに視線を移し、能力を発動した。


 動いた!そう思う頃には後続の兵が何人か吹き飛んでいた。


「安心してください。痛みを感じるよりも早く、あの世に届けてあげますから」


「逃げろ!!」


「逃がしませんよ」



 空気の弾ける音とともに一つ一つ、簡単に命が奪われていく。まさに一撃。目で追って反応できる速度ではない。


 しかし!



「柄じゃないけど……ここは、僕が体を張らなきゃいけないみたいだ……!!」


 高速で移動するジェットの間にレナードは入り込んだ。


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