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B MAIN  作者: 半半人
エスティアーナ編
52/173

二人の過去

 十年前。天魔大戦の最中。エスティアーナは天元界と隣接し天使と鎬を削っていた。今に始まったことではないが、この時が最盛期だった。


 天使は能力のせいもあり、空中戦を行わず陸上での戦いに主であった。そのため、対人のによる戦いと相性が良かった。だからこそ人間は負けなかった。


「左軍退けオラ!!後列と入れ替われ!!ちんたらしてんなクソ共!」

「伝令。陣形を変えて敵陣を蹴散らしい。本陣の守衛も前線に向かわせや」


 エスティアーナの二大将官。見た目に似合わぬ攻守で隙の無い戦いを展開し、自ら先頭に立ち隊を導くゼノン将官。女性独特の状況把握と絶妙な采配で隊を動かすティエナ将官。対照的な戦術でありながらも絶妙な連携で数々の侵略者に勝利してきた。時には天使の軍団とも戦った。


「ガキ!B隊に伝令行ってこい!!」

「あいあいさー」


 ゼノン将官は副将のレナードに伝言を頼んだ。


「バーグ。僕が留守の間隊を頼んだよ」

「副将、それなら俺が…」

「あー、いいのいいの。ここ前線でピリピリしてるしさ」


 副官のバーグを説得し、レナードは馬を走らせた。


◇◇◇◇◇


 エスティアーナから離れた場所で長期に渡り戦闘が展開されていた。だが、それとは全く異なる場所に一つの部隊が隠れていた。敵に悟られず、味方すらその実力を知らない。


「隊長!進行方向から一騎近付いてきます!周辺の兵は構えろ!」


 副長のヴィンガーは隊員に警戒を促した。


「どぅわっ!味方味方!攻撃止め!」


 現れた男は両手を上げ、胸に着いたバッジを見せた。


 ゼノン将官直属のバッジ!?


「相変わらずだな。普通の奴には見付からない位置に配置してあるんだが」

「おぉ!アイゼン、頼むよ!こいつら引かせてくれ」


 当時、私はその部隊の隊長だった。だが、部隊を率いていても将官や佐官のような権限は無かった。


「ヴィンガー、他の奴も警戒を解け。こいつはゼノン軍の副将、レナードだ」

「「「申し訳ございません!!」」」

「あー、いいよいいよ。今は使い走りだから」

「それで、私に何の用だ?」

「ゼノン軍、ティエナ軍の布陣は…」

「全て頭に入っている。もちろん、その先の展開もだ」

「ならいっか。よろしく頼むぜ、アイゼン隊長」

「伝言お疲れ様」


 にっ、と笑ったレナードは自分の部隊に戻っていった。言われなくてもこの部隊の重要さは分かっている。



「隊長。隊員に指示を」

「現在の人員は?」

「八百です」

「そうか…」

「何か考えてます?」

「いや、何でもない。今回もしっかりと付いて来い」


 この隊は他のものとは全く異なる。その理由の一つが人数の少なさである。小数の利で統率力が高く情報の共有が容易だ。故に、戦況が読める上に予想もできる。

 そして、それを実現するための機動力がある。ゼノン軍、ティエナ軍は万単位の人を動かすが、小数である分小回りも効く。



「敵は人間だと思って舐めている。二つの隊に真っ向から立ち向かうような布陣で攻防が繰り広げられている」


 その一つを横から食い破るぞ。



◇◇◇◇◇


「伝えてきたかカス?」

「もちろんです。で、こっちの状況は?」

「ムカツクが苦戦中だ」

「珍しく空中戦が得意な奴がいるんですか?」

「そうだ。お前の勘の良さも腹立たしいな。お前、行くか?」

「いやいやいやいやいやいやいや」

「バカには任せねぇけどな。まぁ、あっちのバカには感謝してもらいてぇけど」



「ティエナ将官。レナード副将から伝言です」

「ゼノンのとこやん。いらんいらん。火矢と一緒に返品してや」

「B隊隊長アイゼンからも伝言です」

「何や?」

「差別ですか?」

「関係あるん?」

「いえ、何でもありません。ティエナ軍はこのままの臨機応変に陣形を変えて良い、と」


「生意気言うねぇ。合わせられるん?」


 ゼノンとティエナはアイゼンのことを頭に入れ、隊の配置を変えた。左軍のゼノンと右軍のティエナは中央に兵を集め、天使の軍を分断しようとした。

 天使もその意図に気付き、配置を変えた。同じように中央に兵を固め、返り討ちにしてやろうと考えていた。


 互いの兵が中央に寄り、左右の布陣が薄れた時。アイゼンは動き出した。ティエナ側の敵軍を右方向から奇襲したのだ。


 利点である機動力を生かし、一気に天使の軍の内部に切り込んだ。



 能力、ディック・アイアン!!



「ヴィンガー!」

「分かってます。隊長の後ろをしっかりと走ってます」

「よし!前進だ!!片方の指揮官を討ち取るぞ!」


 立ちはだかる天使を倒し、奥へ奥へと進軍した。前を走るアイゼンは道を作り、後続は挟み撃ちにされないよう警戒し食い止めることに専念した。

 全ては勝利のため。隊長であるアイゼンが敵の指揮官を必ず倒すと信じていた。それはゼノンもティエナも同じだった。




 アイゼンが敵軍に突入して流れが変わった。


 内部への侵入に対し布陣を変え、B隊を迎撃する陣形に組み直した。だが、それを見据えての戦略はすでに始動していた。中央に寄ったティエナ軍が前進しながら右方向に進路を変えたのだ。そのことにより右からはアイゼンの隊、左からは切り返してきたティエナの兵という大規模な挟撃が完成した。


 本命を狙うアイゼンは指揮官を討つとどめになり、かつ、挟撃を成り立たせる囮にもなる。


 万の数を誇る敵軍が、たかだか八百の隊に掻き乱されたのだ。


 更に数分後。敵の陣形が大きく崩れ、B隊は敵軍からの撤退に成功した。


「ティエナ将官!!アイゼン隊長がこちら側の指揮官を討ち取ったそうです!」

「すぐに陣形を戻してや。防衛が主だから深追いせんように」

「はい!承知しました!」


「アイゼン、やるやん」


 ティエナは不敵な笑みを浮かべ、兵を配置に戻し態勢を立て直させた。


「あとはあっちの馬鹿がヘマしなきゃ…勝てるで」




 素早い奇襲に成功し、戦況を変えた一方。指揮を取っていたゼノンが前線に赴いた。


「ボケが!さくっとやれ!バカ共!」


 巨大なメイス振るい、敵を蹴散らしながら進軍した。苦戦していた天使も一撃で葬った。


「カス!あっち側はどうなった!?」

「多分作戦成功です」

「よぉし!これで楽になるってもんだ!てめぇら、死んでも進めオラァァ!!」


 ゼノンも流れに乗り的確に戦況を読み切り、軍を誘導しながら残党を散らしていった。


「これで!!終わりだ!!!」


 もう片方の指揮官を討ち取ったゼノンは高らかに笑い、エスティアーナに帰還した。


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