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B MAIN  作者: 半半人
ヴィスティンハイム編
47/173

36=36


 ソルネットの栽培を始めて一ヶ月弱が経った。今では私の背を越えるものも現れたりしている。


「上出来だな」


 葉の裏に付着する塩を市場に出すだけだ。


「ヴェイブス、人は集めたか?」

「ざっと30人ぐらいだ」

「よし。根本から刈り取れ。根が残っていれば来年にもう一度収穫できるからな」


 一日を費やしソルネットの収穫を終え、次の日には畑の上部の土を回収した。葉から振るい落とされたものを残さないためである。


「コーヒーを焙煎する施設を借りるぞ」

「この土はどうするんだ?」

「大きな樽に土を入れ、水を入れればいい。土は底に溜まり、塩は水に溶ける。あとはこちらと同じだ」


 刈り取ったソルネットの塩を回収する簡単な方法がある。それが燃焼だ。塩は燃えず、植物は燃えるため簡単に分別擦ることができる。だが、水分も多く含んでいるため一度焙煎し、乾燥させる行程を一度踏む。もちろん、その時に落ちる塩の回収は忘れてはいけない。


「ゼンさん。塩ってこうやって作るの?」


 手伝いに来たヴェルがとなりに立ち、焙煎中のソルネットを眺めた。


「いいや。西方の地では海水という塩を含んだ水を蒸発させるらしい。これは完全独自の製法だ」

「じゃあこれはゼンさんが考えた方法で作ってるってこと!?」

「そうだ」


 書物で得られる知識はこういうところで役に立つものだ。まぁ、西方の塩の作り方をこの辺りで知ってる者はほとんどいないが。


「このヴィスティンハイムの国を強調した、オリジナルの製塩の方が世間も食いつくだろ?」


 何よりヴィスティンハイムの土地と技法を使った製法であるため、他の国が真似ることはできない。

 魔人界に行く前に全て考えていたことが上手くいってよかった。


 乾燥したソルネットを煌々と燃える炉に入れた。


 完全に燃焼し、音も煙も出なくなった頃。念願のものだけがそこに残った。


「灰は…無いようだ。これで一行程省けるぞ」


 塩と灰の重さの違いを利用した分別を最終行程としていたが、その必要は無さそうだ。


「皆、お疲れ様。これで完成だ!」


 数回に分けてできたのは僅か1キロであった。()()()()、とも言えるがコーヒーしかない国に新たな物が生まれたのだ。


 一部の人間だけであるがその事実を大いに喜んだ。


「土地はまだまだある。これからは使われていない土地を利用していこう。それに、塩を取り終えた後は作物が育ちやすい。これを機に色々な栽培に手を伸ばしたらどうだろうか?」


「そんなことより、ゼンさん」



 ヴェイブスが手を差し出した。


「何だ…?」


 真っ直ぐに向けられたその目の意図は何だ?近くにいたヴェルに視線を向けると満面の笑みで返された。


 周囲からも同じような注目されたが…。


「「ありがとう」」

「ありがとう!」

「お疲れ様でした」


 あぁ、そうか。私は感謝されているのか。



「ゼンさん。ありがとな」

「ちょっとカッコ良かったよ」


 ヴェル、ヴェイブス…。


「自分の時もそうだった。村を守って当然、って顔してけるど。皆にとってアイゼンさんは英雄なんだよ。ここの人達も同じ気持ちなんだ」


 ロム…。



 ふっ。


 私はその場に全員と握手した。


「…こちらの方こそ」


 アイゼンの呟きは誰にも拾われず、その夜は宴が催された。


 人混みが苦手な私は隅の方で飲食をしていたが、ヴェルに引き連れられて皆の真ん中で過ごすことになってしまった。


 あまり好きではないんだが…。


 いや、今日ぐらいはらしくないことをしてもいいだろう。


 並々と注がれた酒を掲げ、


「ヴィスティンハイムを変える!私の革命に付いてこい!!」


一気に飲み干した。


 おぉ!と歓声が上がり、そこからの記憶はあまりない。



「お酒飲めないくせに。ふふっ」

「そうなんだ?」


 ヴェルとロムはアイゼンを中心に盛り上がるところを少し離れて見ていた。


「ははぁ、レナの言ってた通りだわー」

「!?」

「あなたは、誰?」


 顔にソースを着けた青年がヴェルたちと同じようにアイゼンを眺めていた。


「どもども。オレはこういう者です」


 名刺を差し出され、それを二人で覗き込んだ。




 上級中間管理職、36=36。




「何て読むんだ?」

「さんじゅうろく、さんじゅうろく?」

「ははは。やっぱりそう読んじゃうかー。じゃ、改めて。オレの名前はサム=サンダース。よーろーしーく」


 そこでロムは悟った。


 サム=サンダース、か…。はっ!上級中間管理職!?


「お前は!?」

「そうそう。ゼムレヴィン直属の商人でーす」


「ちょ、アイゼンさん!」

「…ひひっ」


 アイゼンは全身に酒を浴び、涎を垂らしながら酔い潰れていた。


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