利害の一致
「……うわぁっ!!」
「あ!起きた!」
「うわわわ!天使が何でここに!?」
「ゼンが言ってたよ。仲良くしろー、って」
「アイゼンが…そう、ですか」
「キュリームだよ!よろしくね!」
「…リグリーです。よろしくお願いします」
……
「…ご飯食べる?」
「食べる!」
以外な共通点を持つ二人であった。
◇◇◇◇◇
喫茶店の事務室にはある四人が揃っていた。
「ロム…これはどういうことだ?」
レナードとシナを睨むアイゼンは尋ねた。
「アイゼンさんが言ったように敵に襲われて。そこを助けてもらった」
「そうそう。ロム君の言う通りです」
「私の付き添いで来て、私が蹴散らしたけどね」
「シナの言う通りでもあります」
ちっ。留守の間に人間界でも動きがあったか。
「ちなみにその敵はどこの国だ?お前らが撃退したということはロブロン・ランスか?ジェストレインか?」
「特殊な火器を背負ってたのでジェストレインかな?あ、この間の借りはこれで返したということで」
「…」
「アイゼンさん、顔が怖い」
「レナードも、からかうのは止めた方が…」
「…」
ヴィスティンハイムに恩を売っておいて、それを返せとは言わないだろうな?こいつならやりかねないが。
「シナ。お前には感謝する。」
「え、えぇ」
「だが、納得できないな。第一、第二階申がこんなところにいる理由が。何を隠している?」
「簡単ですよ。皆が大切に思っているコーヒー畑を…」
「本音を言え。お前の上部を聞く気はない」
「…そうですね。無駄を好まない人ですしね。はいはい、分かりました。大きく分けて二つあります」
一つ、ヴィスティンハイムをゼムレヴィンの土地にしたい。
もう一つ、全国を統一したい。
「…本気か?」
「私も初耳だわ…」
「本気ですよ。もっと細かく言うと、ヴィスティンハイムで人を増やし、国を獲るといった方が分かりやすいですね」
土地があれば産業が発展する。そこへ人が集まり、増える。人が増えれば知識が、技術が、文明が発達する。
「果てには悪魔と天使の根絶が狙いですけどね」
こいつは先を見ている。後手に回り続けている人間をまとめ、人類としての力を蓄えようとしているのだ。誰かがやらなければいけない汚れ役を進んで演じるつもりだ。
「ロム君はどうだい?僕の考えは正しいかそうでないかは別として、敵を倒すという目標についてはどう思う?」
ロムの目的は村を襲った悪魔を殺すこと。おそらく他にも被害にあった者は多いだろう。その目的を第一階申であるレナードに付いていけば達成できるかもしれない。天使に恨みはないが、悪魔と同じく敵であることには変わりない。
「自分は……正しいと思う。天使も悪魔もいなくなるべきだ」
レナードはロムを取り込むつもりだ!こいつもロムの能力に気付いたんだ!
ましてや利害の一致と具体的な目標を突き付けることは大きな信頼を生む。もしかしたら、ロムは私の元を離れるかもしれない。アイゼンは焦った。
「どうだい?僕たちと一緒に戦わ…」
「でも!師匠であるアイゼンさんに付いていくと決めたから、恩人であるレナードさんでも付いていけない」
アイゼンと交わした言葉。努力する日々。一度得た勝利。それらがロムの精神を鍛え、成長させていた。
「それに。国とか人類とか、自分にはまだ早い気がする」
崩せると思った意思が思ったよりも上だったか…。レナードは少しがっかりした。ロムの能力は使える。だが、戦闘を見て未熟だと分かった。時期が来るまでこちらで訓練させればいいし、アイゼンとの中継役となってくれれば会話もしやすい。などのメリットに目を着けたが失敗した。
「残念。でも、力は貸すし借りるかもしれない。その時は頼ってください」
しかし、やはりその力は惜しい。そこでレナードは友好的な姿勢を見せつつこの件からは手を引いた。
だが、その隙をアイゼンは見逃さなかった。
「お前はヴィスティンハイムをゼムレヴィン支配下に置きたいと言ったな?」
「そうですね。悪く言えばそうです」
「それはお断りだが、同盟を組むというのはどうだ?」
「…詳しくお願いします」
食い付いた!
「もし、ヴィスティンハイムがゼムレヴィンと統合するとしよう。その場合、他の国がそれを許すか?」
「許すわけないじゃないですか。何らかの制裁を受けるでしょうね」
「だが、国は独立したままで行動を共にしたらどうだ?」
「それは…特に言及できませんね。相手からしたらムカつきますけど」
「それでいい。貿易も交友もそのまま。だが、互いに利用し合う立場でいればいい」
「ヴィスティンハイムは土地を。ゼムレヴィンは何を差し出せばいいのですか?」
「まずは防衛に必要な人だ。それ以外は後々話し合えばいい」
「…なるほどです」
天使と悪魔を根絶やしにするつもりはないが、人間界がまとまれば不祥事も少なくなるだろう。そうなれば、ヴィスティンハイムへの被害が減ることにも繋がる。
両者に有益だからこそ成り立つ交渉である。
「お前は嫌いだが」
「僕は好きですよ」
「「体の良い踏み台だから」」




