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B MAIN  作者: 半半人
ヴィスティンハイム編
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雷撃戦

 悪魔は魂を食らう。そして、魔人界にいる魔物も同じである。人間が養分で生きているように、家畜なども餌から養分を得る。


 ノルード山は魔物の巣であり、そこを通り掛かったアイゼンは絶好の獲物であった。


「食われることはないが…」


 ディック・アイアンで歯が通らないが、数が多くて煩わしい。ディック・アイアンを発動しながら白玉蛍を発動できればなぁと思った。


「レイスのお陰で洞窟を半日で通り抜けたが、これではな…」


 能力に関係する魔力を消費したくはない。だが、体力も温存したい。

 そうと決まれば逃げるのが一番だ。時間も掛からず、魔力も体力も消費しない。完璧だ。


 しかし、



「…そうはいかない、か」


 妙に統率された動きで進行方向が遮られてしまう。現れる魔物も様々で布陣に隙がない。

 こいつらを統べる奴を倒さなければキリがないな。どうするか…?


 平然とやり過ごしてプレッシャーを掛けることもできるが、空振りした時に得られるものが何も無い。一発で状況が変わる一手が必要だ。



 すると、一つの動作が導き出される。



 全身の硬化はそのままに、魔力を右腕に集中させた。最近になってようやく制御できるようになった、硬化を凝縮させる方法なら…。



 右腕に力を溜め、地面を殴り付けた。


 しかし、ここは平坦な地面ではない。不安定な山での一撃は地形を崩すだけでは終わらない。

 以前言ったように、ノルード山には多くの魔物が存在する。魔物の数だけ巣があるとも言える。山の内部に張り巡らされた巣が一つでも崩壊するようなことがあればどうなるか?ましてや、想定外の一撃が叩き込まれたとしたら?


 簡単、かつ、効果的。迅速、かつ、甚大な結果が見込める。地形を変えることで戦況を改め、崩壊に乗じて魔物を疲弊させることもできる。最善の一手であった。



 そこでようやく、遠くからアイゼンを見る悪魔が悟った。


 判断の早さと、実行に移す躊躇いの無さ。そして、それを可能にする身体能力。能力は分からないが決して弱くはない。



「ふぅむ…。手練れの出現か…。(かしら)に報告するべきか…?いや、報告するしかないのかのぉ…?」


 この悪魔の判断と行動も早かった。



◇◇◇◇◇



 ほとんど片付いたな。


 パニック状態に陥った魔物の群れは統率を失い、ほとんどが逃げ出した。向かってくるものもいたが先程の様な脅威は無い。簡単に返り討ちにすることができた。


 硬化上乗せもそこまで魔力を消費しないことも分かったし、まずまずの収穫だろう。山が崩れて道は険しくなったが、距離は縮まった。さっさと先に進もうか。



「…うぅぅぅおぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ!!!」


 な、何だ!?


 遠くから何かが近付いてくる?いや、声らしきものが聞こえるということは悪魔か?


 派手に暴れたからな。見付かっても仕方がない。


「いぃぃぃぃやぁぁっっ!!」


 声の主は目の前の地面に高速で激突した。


 羽があるからといって自身が怪我をするような飛び方はしない。無理矢理飛ばされた来たのか?


「あだだだ…ん?あれ、お前が山をブッ壊したヤツ?」

「…いや、私ではない」


 面倒事の臭いがしたのでアイゼンは嘘を吐いた。それに対しても一切の罪悪感も無く、迷いも無かった。


「お前は何をしに来たんだ?」

「おぁ!?そうそう。この山おれらの領地でさ」

「領地…」

「で、ここで魔物を放し飼いにしてたんよ」

「放し飼い…」

「で、さっきブッ壊れた」

「…一体誰がやったんだ!?」


 知らないフリを続けることに迷いは無かったが、流石に罪悪感を抱いた。


「で、おれはそいつをブッ殺しに来たんよ」

「…」

「そうだ。お前は何でここにいんの?人間だし」


 悪魔の見る目が変わった。これ以上は誤魔化せない…!



「決まっとろうが…。こいつが犯人じゃ」

「先生!」

「…ちっ」


 さらに新手か。上空で待機する悪魔を見た。地上にいる奴より手強そうだ。


「セディエル。構えい」

「オッス!」

「能力を使えい」

「オッス!」


 能力、雷鳴の拳!


「儂は上で眺めておる」


 もちろん、ただではないがな。



 能力、稲魂(うかのみたま)



 セディエルは背後に雷を纏う巨大な二つの腕が出現した。上空の悪魔は雷雲を呼び寄せた。



 これは駄目だ!逃げなければ!!



 ディック・アイアンで足に力を込め、全力で跳躍した。



 しかし。



「逃しはせんぞ。若造が」


 多くの落雷が行く手を阻んだ。上空にいる分、こちらをしっかりと狙って遠距離攻撃を仕掛けられる。そして私には攻撃手段は無い。相性が悪すぎる。


 ならばもう片方を…。



 ドンッ!!




 一瞬の油断。少年だと思って気を抜いたのが間違えだった。

 動きに連動して振り下ろされた巨大な拳はアイゼンを叩き潰した。


「うしっ!ブッ殺し完了!」



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