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B MAIN  作者: 半半人
ヴィスティンハイム編
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一言の駆け引き


「手加減した。生きているなら能力を解除しろ」


 私の白玉蛍はキュリームほどの殺傷能力を持っていないが、動きを止めるぐらいの力はある。相手を殺してしまわないので私は気に入っている。


「…嫌だね」

「そうか。では、聞くが、鬼の状態で制限時間になった場合はどうなる?」

「…二日は目覚めねぇ。死にはしねぇが、気絶する」

「妥当だな。なるほど」


 私はイルベンの元に行き、肩を叩いた。


「お前が鬼だ。続けるか?」

「殺さないのか?」

「あぁ」

「何で殺さない?」

「何でって、私は先に進みたいだけだ。どうしても邪魔をするなら殺すことも考えるが、現時点でお前は邪魔にすらなっていない」

「…ちっ、そうかよ」

「そういうことだ」


 さて、塞がっていた道は通れるようになっているか…?


「ま、待ってくれ!」


 新たな悪魔が現れた。仲間を助けに来たのか?


「レイス!?」

「頼む。そいつを殺さないでくれ」

「あぁ。殺さない」


 ただし、


「この先のノルード山に案内しろ」


 他に悪魔がいるかもしれないからな。能力を温存し先にも進めるうえに、相手も呑みやすい要件だ。


「分かった。案内しよう」

「よし…だが、一つ聞く。なぜ姿を現した?別の場所で監視していた方が安全じゃないか?」


 誘導するための罠であるかどうかをここで確かめる。私は些細な言動も見逃さない。


 対し、レイスは額に汗を浮かべた。おそらく、ここで変な発言をすればただでは済まない…丁寧に言葉を選ばなければ。


「それは、先に進むためにあなたはそこにいるイルベンを殺すかもしれないと思ったからだ。だが、あなたの前に現れても、話の通じない人なら僕も殺される。雨を降らす僕の能力ではあなたには勝てない。そこで、さっきあなたに光線を放った悪魔、シェスナを殺さずに見逃したこと考えて、賭けに出た」


 単純に、正確に伝えたことに嘘は無かった。


 これをどう受けとるかは…運に任せよう…!


「なるほど。では、お前には戦う意思は無いと?」

「…そうだ」

「…」


 アイゼンは考えた。この悪魔は事実を踏まえてしっかりと考察している。この洞窟内の指揮を取っていた者だろう。


「他に仲間はいるか?」

「いない。三人だけだ」


 嘘ではないな。二人も倒されて切羽詰まった状態でのこの賭けは捨て身に等しい。こいつを信じよう。


「案内を頼もう。しかし、場合によっては…」

「分かっている。不審な動きはしない」

「話が早くて助かる」


 嘘であっても余裕で返り討ちにできるしな。


「もう一つ聞きたいが、いいか?」

「何だ?」

「イルベン、だったな。あいつの能力について聞かせてもらいたい」

「…イルベン。話すぞ」

「別に構わねぇよ。痛っ!負けて、見逃してもらってワガママなんてカッコ悪いしよ」

「そうだな。案内する代わりに、二人を管理室まで運んでくれないか?手当てをしたい」

「あぁ、手伝おう」


 途中に倒れていたシェスナとイルベンを担ぎ、レイスの言う管理室へ運んだ。一通りの手当てを終え、本題に入った。


「話は歩きながら。時間を無駄にはしたくないんだろ?」

「あぁ。私もその方がありがたい」


 洞窟の構造をノルード山への最短ルートに切り替え、私とレイスは歩いた。



「悪魔の能力は外面に作用する。と、人間達は思っているんだな?」

「そうだ。天使はどういう認識なのかは分からないが」

「大体は合っているが、厳密には少し違う。外面に作用はする。それは、自分以外に干渉するという風にも言い換えることができる。そのため、悪魔の本当の能力は“自分以外のモノに干渉する”が正しい」

「つまり…」

「つまり、世界の常識をねじ曲げることも可能だ。そして、自分のルールに置き換えることもできる」


 イルベンの能力は普通ではあり得ない状況を産み出した。それは狭い範囲内で常識や世界の決まり事をねじ曲げ、鬼ごっこというルールを強制的に組み込んだとものだ。と、レイスは簡単に付け加えた。


「…人間の扱える五属性以外を放つぐらいに思っていたが、随分と難しいな。内容によっては自分の首を閉めかねないし…」

「天使より万能性低いが、相性が良い相手との戦闘になれば絶対に勝てる」


 絶対、か…。悪くないな。


「それより名前を教えてくれないか?一方的に情報を与えるのは…な?」

「…バーキンス・アイゼンだ。お前の度胸、なかなかのものだ」


 こいつは私の言葉を正確に取り上げ、的確な言葉を発している。引く時は徹底して引き、詰める時には迷いがない。駆け引きに秀でている。


「気まぐれに思われるかもしれないが、私は効率主義なだけだ。そんなに畏まらなくていい」

「今はこれぐらいの距離がベストだと思っただけだ。探り探りだったが、アイゼンが話の通じる奴で良かった」


 洞窟の先に光の粒が見えた。


「ここから先はノルード山だ」

「ありがとう」

「こちらこそ。友達を殺さないでくれてありがとう」



「縁があったらまた会おう」



 私も一度は拾った命。このような出会いも悪くはないな。


 私は洞窟を抜け、ノルード山に辿り着いた。

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