弱者の驕傲
道中で倒れている悪魔を見つけた。光線を放っていた悪魔だろう。凄まじい馬鹿だな。
死んではいないな。良かった良かった。
「以前はいなかったが」
洞窟の構造に目を付けて住み着いた悪魔なのだろう。何はともあれ、邪魔をするなら容赦なく迎え撃つつもりだ。
気を引き締め、先に進んだ。
◇◇◇◇◇
「おいおい。様子見にもなってねぇじゃん、どうすんだよレイス?」
「うーん、これは予想外だ。普通ならもっと焦ったり、長引いたりするんだけど…。まさか、二手目で完全攻略されるなんて」
「魔法も能力も分かんねぇし、どうする?」
「…」
「…ったよ。俺が行くぜ」
「あぁ。援護する」
◇◇◇◇◇
先に進むと広くなっている場所に辿り着いた。誘導されたなどはどうでもいい。おそらく、この場所で有利に戦える者がいるのだろう。
私は能力を再発動した。
「…うっす。俺の名前はイルベン。敵討ちとは言わないが、ここで死んでくれ」
「そうか」
暗くて分からないが、同じくこの広場にいるようだ。
わざわざ近付いて来たということは遠距離の能力ではないということか?
「お前、鬼ごっこ知ってるよな?」
「…あぁ」
時間稼ぎか?
「俺の能力はまんまそれなんだわ。鬼は俺で始まって、制限時間は二十分」
んで、説明が終わった時に能力は発動する。
能力、ヒットエンドラン。
「!!」
「まぁ、適当に頑張ってくれや…」
何?何だこの能力は?
悪魔は外面に作用する能力を使うということは知っていた。しかし、悪魔の能力は外面に作用するという条件さえ満たせば、世界や空間、あるいは、次元にすら干渉することができるという噂は本当のようだ。解明されていない次元のことなど知らなくて当然であり、人間界の書物や記録にはそのような能力については一切無い。そのため、アイゼンは少し動揺した。
焦ってるみたいだけど、一定範囲限定だけどな。
イルベンの能力には二つの発動条件がある。一つは能力の説明。もう一つは一定範囲内でのみ有効だということである。
もう一人が洞窟内を操作し広場を作り上げ、先程同様来た道を塞ぐ。すると、イルベンの能力範囲内に敵を留め、鬼ごっこというルールに強制参加させることが可能となった。
シェスナので分かったけど、アイゼンは強い。頭も相当なモンだ。油断はしねぇ。手加減もだ。
暗闇という条件下でイルベンは魂を感知できる。だが、アイゼンには相手の位置を知る術は無い。発動してしまった能力にこれから対応するしかなかった。
イルベンが圧倒的に有利であることは揺るがなかった。
でも、慎重に行くぜ…!
アイゼンの背後に回り、背中に手を伸ばした。だが、微かな音や気配、風の流れなどを感じ紙一重で回避した。
人間しては良い反射神経だ。悪魔の身体能力に反応できんのはすげぇけど、
「これならどうだ…?」
能力、天帝 の 戒杖。
洞窟内で……雨!?
「はい、タッチ。お前が鬼だ」
「くっ!」
雨の音、地面にぶつかって発生する風…。突然のことで反応が遅れた。その隙をイルベンは逃さなかった。
もう一人の悪魔、レイスの能力は天候を操り、自在に発生させることができる。
こんな早く使うつもりはなかったが、結果オーライってやつだ。
イルベンは心の中で笑い、レイスは安心して一息ついた。
…何てことはない。イルベン以外の悪魔がいて、戦いやすいように支援しているだけだ。その考えに至るのが遅かった。策略にまんまと嵌まった…!
「とでも思っているのか?」
バチチッッ!
雨の降る暗闇の中、一つの人影から放たれた電撃が淡く光った。
感謝するぞ、キュリーム…!
能力、白玉蛍!
アイゼンはイルベンから能力を聞いてから、僅か数秒間熟考した。
鬼ごっこという能力は相手を追える、逃げ切れるということを最重視し、走力と持久力が全てとも言える。しかし、あえて逃げ道を塞いだことでそれらが大きく変わった。狭い範囲で必要なことは、瞬間速度と反射神経。回避と短距離での速度がそれだ。
制限時間もそうだ。もし、私が鬼ならば制限時間数秒前で仕掛け、為す術なく相手を負かす。だが、イルベンは早めに仕掛けてきた。
それは、私が鬼になった時点で勝ちが決まる“何か”を隠しているからだと確信した。
一回の攻撃でイルベンの意図を見抜き最善の答えを導き出したアイゼンは、能力をディック・アイアンから白玉蛍に切り替えた。
雨が降ることは予想できなかったが、イルベンが触れた瞬間に白玉蛍の発動条件を満たした。
それ以上は言うまでもない。
「悪くない戦術だが、まだ浅い」
出直してこい。




