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B MAIN  作者: 半半人
ヴィスティンハイム編
33/173

未知への挑戦

 清々しい晴天と広大な草原の真ん中に立ち、ある男は言った。



「決めた…。俺はここに家を立てる!!」

「ここって…何もないよ?」

「うるせーガキんちょは黙ってろ」

「ガキじゃない!!」

「はいはい。別に付いてこなくてもいいんだぞー?」

「…やだ」

「あいつらもそのうち来るだろうし、早めにやろうか」


 なっ、アイゼン。



 私を撫でた男の手はたくましく、働き者特有の堅さを持つ無骨な手だった。



◇◇◇◇◇



 はっ!


 目を見開き周囲を見回した。視界に映る天井はいつもと同じ。どうやら私は夢を見ていたようだ。いや、思い出していたというべきか。


「…らしくないな」


 先日のロムに感化されて過去を振り返るとは…。


「おっはよー!!」


 抱き付きに来たキュリームを華麗に避け、洗面所へ向かった。どうも頭が冴えない。重りを抱えたような怠さが全身にあった。顔を洗い、歯を磨き、鏡をぼーと眺めた。

 ロムの「悪魔たちを皆殺しにする」という台詞が脳内で繰り返されていた。確かに悪魔と天使は人間に害がある。襲われたとなれば憎くて当然だ。


「…私のしていることは正しいのだろうか?」


 鏡の向こうにいる自分に問い掛けても答えは返ってこない。空しい瞳だけがこちらをじっと見ていた。


「ゼーン!!朝ごはん食べたーい!」


 居間でくつろいでいたキュリームが駆け寄り、笑顔で服を引っ張った。


「お前の元気に感謝だな。ふっ…」

「何で笑ったの?」

「何でもない」

「えー」


「今日は…タマゴサンドでどうだ?」

「うん!」


 キュリームから元気を貰い、今日も一日頑張れそうだ。私はそっとキュリームの頭を撫でた。


◇◇◇◇◇


「え?お父さん?今日は畑の方に行ったよ」

「そうか、分かった。」


 ヴェルにヴェイブスの居場所を聞いてみたが、今日は事務仕事ではないのか。待つこともできるが、直接会いに行くとしよう。


「ねぇ、ゼンさん」

「昨日の件はノーコメントだ」

「う、うん。でも…一ついい?」

「…」

「ほんとに34歳なの!?」

「…あ、あぁ」

「私より11も上だよ!?」

「あぁ」

「結婚してないの?」

「…あぁ」

「えぇー」

「…もう行っていいか?」


 変に詮索されなくてよかったが、その代わりに変には思われるのは心外だ。まぁ、誤解されないだけマシだと思っておくか。


 外に出て、ヴェイブスの担当のコーヒー畑に向かった。




 胸の高さまでに育ったコーヒーの木には日の光を浴びて艶やかに輝く真っ赤な実が映えていた。雲一つ無い青空と一面に広がる緑を見て自然と笑みが溢れた。悩みを抱え葛藤していたのが少し安らぐようだ。


「…あたた、腰痛っ」


 遠くで背伸びをするヴェイブスの姿を見つけた。


「おーい!」

「ん?おぉ、ゼンさーん!」


 ヴェイブスは大きく手を振り、小さく跳び跳ねていた。



「何かあった?」

「特にないが話があってな。ここの貿易についてだ」

「あぁ…それか」

「仕事が終わってからでも構わない。急ぎであるわけでもないしな」

「給料出ないけど手伝ってくれんの?」

「任せておけ」


 手早く実を収穫するヴェイブスをすり抜け、置いてある篭を抱えた。そして、迷うことなく収穫の作業に入った。


「コーヒーを飲むだけだと思ってたよ。すごい早いね」

「まぁ、な」


 本で身に付けた知識もあり、この作業はさほど苦にはならなかった。


 そこで、


「コーヒー以外にも何か作れないのか?」


面白い疑問を持った。


 国とのいざこざを一段落させ、ヴィスティンハイムの発展に力を注げる今のうちに試したいことがあった。


「ハゲー」

「誰も薄れてないわ!!」

「これ、少し貰ってもいいか?」


 私は赤色の実を手にヴェイブスに呼び掛けた。


「まぁ、別にいいけど。何に使うんだ?」

「…色々と」



 ヴェイブスは不思議そうな顔をした。コーヒーの実はコーヒーにする以外に使い道がないと思っているからだろう。


 私は赤い実を口に入れ噛んでみることした。本には書いていないことが多いため、自分で調べるのが一番だ。


「ん…!」


 あ、甘い!?


 中の種を避けながら、果肉を食した。この種がコーヒー豆の原料になるわけだが、この部分は焙煎前の行程でどうしているのだろうか?さくらんぼのような見た目であるし、果物としても売れるのではないか?


 緑色はどうだろう?


 ……。


 熟していない果物が美味しいか?というのは確かめなくても分かる。好奇心程度に留めておき、赤い実を使って何かを考えることにした。


 口の中に残った種を舌で転がしてみた。コーヒーはこの種(生豆(きまめ))を焙煎して香りを高めるのだが、焙煎する前に加工できないだろうか?もちろん、歯で噛み砕くことは難しく、味も香りもほとんど無い。そのままでの活用法は皆無であるが、豆であることには変わらない。茹でるなどすれば新たな食材として使えるのではないか?


 時間がかかるかもしれないが、それは覚悟の上だ。


 国を発展させる最も簡単な方法は、独自のものを産み出せばいい。それが有用なら人は欲し、国を称える。その国でしか作れないなどの強みが国を発展させるのだ。

 その代表が農業・技法・人材である。優れた物は流通し、技は後世へ伝わる。人が偉業を成せば、その人物を生み出した国が評価される。簡単、かつ、確実である。


 この日から私なりの新たなアプローチの始まった。



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