置き土産
キュリームに下手に動かれるのが厄介なので、腹に抱き付いてもらった。
「お前に着せてたコートはどこだ?」
「持ってかれて、燃やされてたよ」
「ちっ!」
コーヒー臭いからか!?少し古い物だからか!?気に入っていたのに…!!
「…誰に怒りをぶつければいいんだ……?」
とりあえずシーフス・カリヴァンにぶつけるか。
「キュリーム。お前を連れて行った奴は覚えてるな?」
「うん!」
「触れたか?」
「うん!!」
「よし、帰りにやってやれ」
私たちは顔を見合わせて笑った。
◇◇◇◇◇
城を出た後、魔潜石に取りに店に向かった。
「いらっしゃいま…。お待たせしました。こちらがお品物になります」
「あぁ。ありがとう」
「こちら、名刺になります。またのご利用お待ちしております」
名刺を貰い、足早に用を済ませた。
「そうだ。お前もバッチを着けておけ。門を潜るときに何か言われるかもしれないからな」
「うん!」
「羽は…ワンピースの一部みたいになってるし、問題ないか」
「これ可愛いよね~。えへへ」
「リガードゥルム。今帰るぞ。もう少しだ」
『グァ!』
門で持ち物を見せるなどの手続きを済ませ、レブーフモルゲンから出国した。
「…よし。もう誰も分からないだろう。キュリーム、やっていいぞ」
「はーい!バチッて感じ?」
「もっと強くてもいいぞ」
「分かった!」
キュリームの周囲にバチバチと音を立てた稲妻がいくつも現れた。
能力、白玉蛍!!
満面の笑みを浮かべたキュリームはアイゼンに体肩車され、リガードゥルムと合流した。
◇◇◇◇◇
レブーフモルゲンの政策会議室。
「あの兵器を逃したのは惜しい…。実に惜しい!」
「まぁ、おっちゃんの言いたいことは分かるけど。オレらってその程度のモンじゃないでしょ?」
「小僧は黙っていろ」
「オレ、王子だよ?」
全政権を担う老人はカリヴァンは睨んだ。それもそのはず。カリヴァンはレブーフモルゲンの王の血を引いてあるだけであって、国政に対する発言力はないのだ。
「貴様は笑顔を振り撒いていればいいのだよ」
「…ムカつくなぁ」
「だが、安心しろ。主の欲は満たしてやる。それよりも、だ」
人間界の各国が策を練っている。
「ゼムレヴィンは階申と魔法騎士団。ジェストレインは対白兵戦用の武器等の製造。ロブロン・ランスは改造人間の研究…。把握しきれていないものも多数あるはずだ」
「天使と悪魔を圧倒できれば、世界を手に入れられる!」
「あー。そういうスケールのデカイ話は興味ないんだけどな……!!」
バチッッン!!!
突然の空気が弾けるような音と同時にカリヴァンの内側から強烈な電撃が発生した。
「何事だ!?」
「…近くに魔力の反応は無いぞ」
「魔法の痕跡も無い…!?どうなっている?」
同然、カリヴァンは重症を負い気を失った。
能力、白玉蛍。自身の体内で生成した電撃を相手の体内に流動し留めるものである。そして、留めた電撃を任意の時に放電することができる。アイゼンは数分間かつ、近い距離でのみ留めることが可能だが、
キュリームは全てが無制限である。
いくら離れようが
いくら時が経とうが
一度残された電撃は残り続ける。
ただし、対象に触れなければこの能力は発動できないという弱点を持つが、触れた時点でー
「…心臓が止まっている!?」
「火傷も酷いもんだ…」
対象は必ず破壊される。
◇◇◇◇◇
家に帰ったアイゼンはキュリームとリガードゥルムに魔潜石を与えた。
「うーん!これ美味しい!!しかもいっぱいある!」
「グァァン…ご主人ありがとう!」
天使二体は大きい石をひたすら舐め回していた。リガードゥルムは分かる。猫が水を飲むように舌を伸ばす仕草にとても似ている。が。が!キュリームに関しては少し下品に見える。
「何見てるのぉ?」
「…いや、何でもない」
飴のように口の中に収まる大きさにすればよかったと後悔するアイゼンのことなど気にせず、キュリームは魔潜石を笑顔で舐め続けた。
魔力は“物に付着し、蓄積する性質”があるため仕方ない。魔潜石は水の入る器と考えると分かりやすいだろう。天使は蓄積された魔力を表面から摂取するということになるが、
「天使が皆こんな風に食事してると思うと…」
無様だな。
私は顔をしかめて天使二体の食事風景を眺めた。




