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B MAIN  作者: 半半人
レブーフモルゲン編
28/173

放置、そして変局

 キュリームは勝手に付いて来ただけだしな。放っておいても構わんだろう。とはいえ、あの金髪の男は何者だったのだろう?少し悩んだが、それも後回しにしても構わないと思った。

 私はバッジを着け、レブーフモルゲンの中心部へ向かった。


 途中欲しかった魔潜石の売店を見つけ、立ち寄ることにした。


「いらっしゃいませー」


 一人の店員が元気よく私を出迎えた。


「ご来店ありがとうございます。本日はどのような物をお求めですか?」

「使い捨てではない、魔力を何度も貯められる物をいくつか買いたい。サイズは大と中が三つずつで」

「かしこまりました」


 店員は棚を探った。


「国外からのお客さんとは久し振りです。どちらからいらしたんですか?」

「…ヴィ、いやゼムレヴィンだ」

「そうですか。最近は天使と悪魔のことで物騒になりましたからね。あなたのような方は珍しいのです」


 棚からいくつの魔潜石を取り出し、広げて見せた。


「こちら、伝導を良くするために加工しますか?」

「…それは知らないな。詳しく教えてもらいたい」

「はい。ハインシスの彫刻技術を真似たこの国独自の技法です。魔力を素早く充填したり、引き出せたりします」

「それは凄い。ちなみに金額は?」

「中型魔潜石が三つで6万フィル、大型が三つで15万フィルです。加工代も含めると、更に十数万ぐらいかと」

「…少し待っててくれ」


 最低でも31万フィルは必要ということか。私は財布の中を確認した。以前に手に入れた金はあるが、普段はそれほど持ち歩くことはない。


「手持ちが…」


 27万フィルと少し。中型を諦めて、加工した大型を三つ買うとするか。


「すまないが、中型をやめて加工した大型を三つ頼む」

「はい、かしこまりました。時間が掛かりますので少しお待ち下さい」


 それなら帰りに受け取りに来るとしよう。先に金を払い、私は店を出た。

 レブーフモルゲンの、騒がしいわけではないが活気のある光景は新鮮だった。厳かな雰囲気をヴィスティンハイムにも取り入れたら…。うん、悪くないな。

 この件については前向きに検討しておこう。


 国の最高機関のある建物は目立つため、寄り道しながら歩を進めた。


◇◇◇◇◇


 レブーフモルゲンにある、教会リーリスイレジア。そこには伝説と言われる聖剣が納められているという。美しい外観に似合わず、中では何重もの魔法により守られている台座がある。


 言い伝えでは、万物を両断する剣ということになっている。が、そんなものはどうでもいい。


「どう?綺麗だと思わない?」


 連れて来た天使の女の子へそう言った。


「あの中に何があるか気にならない?」

「別にー」


 キュリームは怒っていた。アイゼンとの食べ歩きやお喋りを楽しみにしていたというのに。


「戻っていい?」

「あぁ!ダメダメ!まだ早いよ」


 慌てて手を引き、その場に留めた。


「そろそろ名前ぐらい教えてもらってもいいんじゃないかな?ほら、一緒に街を歩いた仲だし」

「やだ」

「うーん。ダメかぁ…」


 この男から離れようと考えるキュリームだが、それは叶わなかった。飄々とした態度とは裏腹に隙がない。実戦慣れした距離感の取り方のような、行きたい方向をさりげなく妨げるような。そんな独特な間合いから、ただ者ではないことを察していた。


「しょうがないなぁ」


 男は魔法の方へ向かい、台座に手を伸ばした。

 伸ばした左手に魔法がぶつかり金属が削れるような激しい音を立てた。普通ならば腕が飛んでもおかしくはないほどの威力であるはずなのに男は平然としていた。


「余裕ー」


 しばらく魔法に耐え、台座の魔法が全て打ち消されて台座の中央が露になった。



 しかし、台座には語り継がれるているものは無い。何も無いのだ。



「オレの名前はシーフス・カリヴァン。レブーフモルゲン第四王子で」


 紳士の挨拶としてカリヴァンが差し出した左手には幾何学模様が浮かび上がっていた。


「聖剣の所有者だよ」


 キュリームは飛び退き、カリヴァンを凝視した。


 この男は自分と同族である。漂っている魔力の質が似ているから間違いない。キュリームは一層に警戒心を強めた。


 このままじゃ危ない。逃げなきゃ…!


 カリヴァンを睨み、隙を伺った。


「目を見てくれんのは嬉しいけど…」


 カリヴァンが空を指でなぞると同時にキュリームは倒れた。


「言ったろ?万物を断つ、って。まぁ、今回は絶つ違いだけどさ」


 一切の隙を与えずない自分の力に、カリヴァンは満足気な笑みを浮かべた。


「一緒にいたバーキンス・アイゼンとか、ただの雑魚でしょ?」


 伝説や、力には興味がない。ただ、王として自分以上だと言われる奴が許せない。それが噂であっても根絶しなければ気が済まないのだ。


「少し目立ちすぎたし一回帰りますかなぁ、っと」


 カリヴァンはキュリームを丁重に抱え、教会を出た。

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