安全第一
「…まさか、な」
金髪を靡かせ、一人の男が何かを感じ取った。
◇◇◇◇◇
「うひょあぁぁぁぁぁ!すっごい速いね!!」
リガードゥルムに跨がり、私とキュリームはレブーフモルゲンに向かっていた。
「先に言っておくが、あまり目立つなよ」
「リガーの方が目立つよ?」
「それは別だ」
今回、レブーフモルゲンに赴いた理由はリガードゥルムの存在にある。現時点でバーキンス・アイゼンが所有していることを明確に示すことで、言及されるのを先に防ぐ効果がある。隠された計画について触れられるのはあちらにとっては避けたいことには違いないはずだ。
ついでにこいつらの腹を満たす。
もう少し欲を出すなら、魔潜石をいくつか頂けるとありがたい。
「あー!見えた!」
常に風属性の魔法で障壁を張り、更に内側は土属性の魔法で厚い壁を形成されている。と聞いていたが、実物を見ると噂以上だった。簡単には突破できそうにないな…。
「なるほどな。風で弓や魔法の遠距離を防ぎ、敵を寄せ付けないという設計か。仮に近付けたとしても、魔力の通う土の壁を壊すのはかなり難しい。よく考えられている」
一人で納得していると、
「上から飛び込めないかなぁ?」
キュリームがそう言った。
「それも予想しているだろう。壁の無い上空から攻めるというのは一見簡単そうに見えるが、一番危険だろう」
「何で?」
「まず、動きが制限される。次に隠れるものがない」
「それで?」
「下にいる魔法使いの的にされて終わりだ」
それに風の魔法も加わり侵入を妨害する役目もある。と付け加えた。
天使や悪魔には羽があることも考慮してのものだろう。全てに対応できていて、隙が全くない。
「本当に上手いなぁ…」
発想はもちろん、この魔法を常に発動させていることにも感服した。見事としか言いようがない。
しかし、
「正門から普通に入ろう」
この防衛魔法に挑むつもりは毛頭ない。
「ほら。その羽なんとかしろ」
「む、無理」
「服のなかには隠せ…」
背中にはキュリームが鋏で穴を開けた跡があった。
「ないか…。リガードゥルムと一緒にどっか隠れていた方がいいな」
「やだやだやだやだ!絶っ対行く!!」
「天使だと知られると面倒だ。諦めろ」
「やーだー!!」
「引き千切るか?」
「それもやーだー」
「わがままな奴だな」
私が愛用しているコートをキュリームに羽織らせた。
「大きいからこれで隠せるだろう。不自然ではあるが、大分マシなはずだ」
「ありが…うっ!?」
「どうした?」
「…コーヒー臭いっ!」
「…すまん」
以前溢したコーヒーだろう。私は嫌いではないが、強い香りなのは確かだ。申し訳ない。
「…とりあえず、それで行くぞ」
それ以外の方法がないと悟り、キュリームは渋々従った。
「リガードゥルム。一番近い物陰に隠れていろ。何かあれば…」
「大丈夫。能力で探れるガァ」
「よし。偉いぞ」
じゃあ、行くとするか!
◇◇◇◇◇
レブーフモルゲンには“聖剣を封印している教会"と“魔法研究所"の二つがあることだけは分かっている。実際に来るのは初めてなので色々なことを知れると思い楽しみにしていた。
さらに、私にはゼムレヴィンから特別待遇として全通行書を貰っている。それを見せればどんな所でも、
「すいません。この通行書有効期限が切れています」
門番に止められてしまった。
「いや、これ、死ぬまで使えるって…」
「あぁ、それねぇ。一年おきに更新すれば何回でも使えるってことですよ」
「発行されてから一回も更新しに行ってない…」
おそらく安否確認も兼ねてのことだろう。
それより、更新しないと入れないとは……。わざわざゼムレヴィンに行くのは面倒だし、かといって諦められるわけもない。どうするか…。
「いいんじゃないっすかね?」
門番の間から、青の制服を来た短い金髪の男が現れた。
「どうせ本物っしょ?じゃ、ここは融通きかせて、ね」
「はぁ…そう、おっしゃるなら」
若者独特の雰囲気で門番を納得させてしまった。いや、門番の態度や口調からしてこの男はかなり高い地位の者だ。
「どこで何をしたお偉いさんか分からないけど。ようこそ、レブーフモルゲンへ」
爽やかな笑顔が似合う男はキュリームの手を引いて門を潜った。
「通行書の持ち主こっちだけどな」
門番から来国者のバッジを二つ受け取り、正式にレブーフモルゲンへ入国した。
そこにはゼムレヴィンとは違う活気を持った街並みが見られた。露店がほとんどないというところが驚きだった。そのためか独特の建物や空で展開されている魔法などの景観が美しく見えた。
研究施設のようなものが多いと聞いたが、そんな風には見えないな。
「…ん?キュリームはどこに行った?」
僅かな間だというのに、全く姿が見えない。背は低いが、あの格好なら簡単に見付かりそうなのだが…。
周囲を見回してもそれらしきものは無かった。
まさか…天使だと気付かれて連れ去られた!?
「まぁ、あいつなら大丈夫だろう」
キュリームが拐われたとしてもそこまで焦ることはなかった。




