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B MAIN  作者: 半半人
グレン・シギア編
23/173

リガードゥルム

 真っ暗な空間に佇む巨大なそれは明らかに人工物ではなかった。

 魔力採取のパイプが集結し、至るところに繋がっている。供給される魔力を蓄えているとしか思えない…。


「な、何だよ…これ…?」

「アイゼンの件といい、ヤバいところに踏み込みすぎたかも……」


 地下に射し込む光がそれを照らした時。周囲の全てのものが跳ねた。止まっていた心臓が動き出すように、一定の間隔で絶えず、少しずつ早く、音を立てながら大気を震わせた。


「…ググ…ガァァァァァ!!!」


 目覚めると同時に放った咆哮は、計り知れない威力を持っていた。


 近くにいたザリオンたちは吹き飛ばされ、周囲の大地は大きく抉れた。グレン・シギアの残骸すら跡形もなく消え去った。



 自身に土の鎧を纏わせさらには壁を作り防御したザリオンは、致命傷は免れたものの何本かの骨は折れ多くの血を流していた。

 ナズンも全力の衝撃波を目の前に発生させることで相殺を試みた。だが、結果はザリオン同様に重傷を負うこととなる。


「何…だ?」


 壊滅的状況にも関わらず無傷で瓦礫に埋もれる男が一人。


「…あいつら、失敗したのか?」


 取り戻したディック・アイアンを使い瓦礫を退かした。立ち上がり、服に付いた埃を払ったところで少し離れた場所に見える巨大な何かに気付いた。

 全身に鏡のような鎧を纏った獣、というべきか。日光を反射して輝いて見える。

 何はともあれ、あれが地下に潜んでいたもので間違いないだろう。破壊するか…。いや、その前に二人から安否確認も兼ねて話を聞いておこう。


「おーい。死に損なってたら返事しろー」


 適当に呼び掛けると二つの反応が同じ方向から発せられた。瓦礫が二つ飛んできたが能力の前では無意味だ。


「生きていたか」

「…ったく、言うじゃない……」

「はぁ…はぁ…死んでたまるか…!」

「とりあえず止血だな。ナズン。傷口に魔法で栓をしろ。折れた骨はザリオンの土魔法で外側から支えてやればいい」

「ワタシたちの心配よりも……あれ、なんとかなるの?」

「分からない。が、何とかなるだろ」

「ちょ、無責任……」

「いいんだ。ゼンに任せておけばいい。駄目だった時はその時だ。咆哮だけでこの様だ。気を付けろ」


 二人に背を向け、


「気楽に待ってろ」


巨大な化物に近付き、その辺に落ちている煉瓦を投げ付けた。


「来いよ」


 能力、ディック・アイアン!!


 全身に硬質化を広げ、戦闘体勢に入った。


 見た目は四足歩行の犬や猫と変わらない。尾は無く、爪も無い。魔法を使えるかは分からない。


 咆哮でこの破壊力ともなれば実際の攻撃は非にならないほどだろう。


「ガァッ!!」


 巨体から繰り出される片足での踏みつけ。全体重の乗った攻撃が直撃すればただでは済まない。そう察するも、回避すると土地が変形してしまいこちらが不利になるとアイゼンは考え至った。


 防御も回避も無理なら受け流す!!だが、受け流せる重量ではないので弾き流す!!


 巨体と重さによる攻撃に対して真っ向から勝負せず、角度と技量で迎え撃つ。右腕に硬質化を収束させ、真横に弾き飛ばすように攻撃した。咄嗟の判断で弾き流すことにしたアイゼンは、攻撃後に最善の一手であったということに気付く。


 全体重を乗せた攻撃ということは、全重心が一点に集まるということ。


 それを逸らすということは、どんな相手であれ体勢を完全に崩されるということに繋がるのだ。


 弾かれた片足は着地に失敗し、本体が片方に倒れた。


 その隙に接近し、急所になりそうな部位を探した。鎧のようなものを纏っているため、間接部を狙うか…。もしくは顔面、正中線等の生物の弱点を突くか…。

 色々と迷うところはあるが起き上がる前に一発。


 アイゼンは高く飛び上がった。


 脳天に食らわせるか。


 落下の最中で体を回転させ、攻撃対象が絶好の間合いに入ると同時に硬質化した拳を振るった。



 全重心と遠心力、さらに硬質化が加わった攻撃が命中し、その頭が地面に勢いよく叩き付けられた。


 よし、攻撃は通るな…。後は決定打だけだ。



 すかさず間合いを取り、次の手を考えた。


 が、


「がふぅ!?この魔力はご主人!??」


 顔が地面に埋もれたそれは喋りだした。そして、勢いよく引き抜き私の方を見た。


「ご主人!?ご主人!!」


 何故か興奮しているようだが、敵意は無さそうだ。ここは会話の流れに乗っかるとしよう。


「あ、あぁ。久し振りだな。あんな所で寝てると体に悪いぞ」


 何を言ってるんだ私は!?


「グガァ。ごめんなさい…」


 おお、思ったよりもずっと大人しいな。


 聞き分けの良いそいつは頭を差し出した。撫でてもらいたいということだろう。

 私はそれに応え、硬質化した手で優しく撫で回した。頭の金属部分がガシャガシャと音を立てたがそれは別にいいだろう。


 すると、頭の中に映像が流れ込んできた。


 この生物と、行動を共にしている人物の風景。ここで現れている人への感情とそれまでの過去というべきものか…。危険な毎日を過ごしているが、それ以上に楽しそうな。そんな様子が一瞬で脳内を駆け巡った。


「そうか…お前は。ディックの…」


 能力を使っている私の魔力を本人と勘違いしているのか…。


 こいつの名前はリガードゥルム。ディックに飼われていたということだけは分かった。


「寝起きで攻撃してごめんなさい。全然気付かなかったグァ」

「気にするな」


 確か…グレン・シギアはレブーフモルゲンという国が管理していたはずだ。ということは、国が隠していたものを私が手に入れてしまったということになるのではないか?




 つまりそれは、また裁判沙汰になるということではないか?



「グガァ?」



「め、面倒なことになったな……」

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