能力、白玉蛍
「ってぇ…!」
アイゼンの攻撃を食らったロッドールは妙な気持ちだった。宣言通り触れてしまったことで何かが起こるかもしれないという恐怖と、能力を奪ったことによる安心感が混ざっていた。
「……何も、起きねぇじゃねぇか!?」
「怖がりすぎだ」
攻撃を食らってしばらく何も起こらなかった。そのことに安堵したのかロッドールは笑みを浮かべた。
「ただのハッタリかよ!?なーんだ。ビビって損したわぁ……」
バチン…ッ!!
「うあぁぁぁぁあぁ!!!」
突然の衝撃音とともに強烈な電気がロッドールの体内で発せられた。悪魔の魔法と落雷の知識しかないロッドールにとってそれはとてつもなく奇妙なものだった。
アイゼンは何もしていないのに、なぜ電撃の魔法を食らったのか?
「言っただろう?お前に触れた時点で私の勝ちは決まった」
能力、白玉蛍。
簡単に説明すると、遅効性の電撃を放つことができる能力である。だが、その仕組みはとても複雑なもので安易に理解することは不可能であった。
「ここまでは予想通り、いや、宣言通りか。最後に、お前の能力についてだ」
ぐったりとするロッドールの胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「お前がフォース・イーレヴンの真意に気付いていないと油断させるためにさっきは嘘を吐いた。本当は、気付いていたよ。能力を奪う条件が何なのか」
この答えに辿り着くのに時間はさほど掛からなかった。
まず、能力を奪った時期がバラバラな理由は能力についての情報が関係している。ナズンは目立った行動をしたために無属性の魔法使いであることが簡単に知られてしまった。そして、その破壊している現場を目撃したことでグレン・シギアに来ると同時に能力を奪うことができたのだ。だが、無属性魔法の詳しいことを知らずにいたため、ナズンの力を完全に奪うことができなかったのだ。
ザリオンの場合。隠れて行われる賭博の関係者のため能力に関する情報は少ない。だが、後に捕まえた者から情報を得るのに二日ほど掛かり、能力を奪うのが遅れた。
そして、私の場合。噂の部分が多いため実際に能力を見ることでしか情報を得る方法がなかった。そのため、ザリオンとナズンを利用しようと考えた。結果は、ロッドールの思い描いた様に事が進んだが、
一つだけ誤算があった。
「忘れるな。お前が敵に回したのが、バーキンス・アイゼンだったということを」
どんと突き放し、遅れて電撃がロッドールを襲った。
「能力は…まだ戻っていないか。見掛けによらず耐えるな」
「っは!!なん、でだ!?遅れる電撃だって分かってるのに何で奪えない!!?」
「馬鹿か?お前が条件を満たせないように能力を使っているんだ。当然だ」
情報を手に入れる他に実際に目で見て理解している部分があると考えた私は、能力の発動が分からない白玉蛍が最も効果的だと判断したが、その判断は間違ってはいなかったようだ。
「てか、何で二つも能力があるんだよ!?五属性じゃないやつが何で!??普通じゃねぇよ!!」
「説明は無用…」
バチンッ!!
追加で放っておいた電撃が会話を遮るように発動した。今度こそロッドールは倒れ、完全に意識を失った。
「ふぅ…やはり扱い難いが強力だな」
ロッドールの我慢強さを褒め称え、自身の能力を再確認した。
「さて、ロッドを倒したことだ。あとはあの二人に任せるとしよう」
能力を取り返すことに成功し、ゆっくりと二人の元へ向かった。
◇◇◇◇◇
「いつ看守が来るか分からな…!?」
「…気付いた?」
ザリオンとナズンはいち早く察した。
「魔法が…使える!」
「早くここからおさらばしましょ!!」
項目の最後に、能力が戻り次第全力で暴れてグレン・シギアを破壊しろと書いてあったのを果たすときが来たのだ。
「大底震!」
地面に干渉し大地震を発生させる、ザリオンの土魔法でグレン・シギアを支える地盤が大きく歪んだ。
「ネクティカルウェーブ…」
全方位に衝撃波を放つ、ナズンの無属性魔法が無差別に建物ごと全てを破壊していった。
「やるな」
「うふ。あなたこそ…」
能力を与えられていた看守も無力化し、グレン・シギアは一瞬で崩壊した。
「あとは地下だな。ゼンも気にしていたようだからな」
土魔法を真下に放ち、大地に亀裂を入れた。裂けた地面の隙間から地下に空洞があることを発見する。
「ワタシたちの役目は終わったけど、行ってみる?」
「…あぁ」
能力を取り戻した他の囚人たちが騒ぎを起こしている間に、気になる案件を解決しておこう。
少しの情報だけでも手に入れようとザリオンたちは地下に向かった。




