自身を殺す
「どうする?お前の能力を使える看守が何人も来たら?」
「安心しろ。一つの能力につき一人が限界のはずだ。そうじゃなかったら諦めろ」
考えるだけでは分からないこともある。割り切ることも大切だ。
「だが、ザリオン。同じ能力を目の前にして、今回と前回の決定的な違いは何だと思う?」
「…ナズンがいる?」
その通りだ。
ナズンは魔法により透明の球体を看守の口の中に生み出した。
突然酸素を絶たれた看守は声も上げれず、激しく動揺した。息ができない、硬質化が効かない。その二つを突き付けるだけでこうも簡単に取り乱すとは。
適当に動きを封じ、失神するまでそのままでいた。
「案外簡単だな」
「能力を回収しにロッドール本人が来るかもしれない。こいつは私の部屋にでも隠しておくとしよう。ナズンは周囲の警戒を怠るなよ」
考えろ。私たちの元に来た看守が、偶然にもディック・アイアンを使えることがあるのか?あらかじめ事情を説明し、近付くと分かってから能力を渡したとしか考えられない。
「近くで、見ているな…」
私たちが新たな対処法を見出だしたことにも気付いている。この手は二度も使えない…。
「ザリオン、ナズン。紙に書いていたのを覚えているか?」
険しい顔で二人が頷いた。
「こいつを連れて人払いを頼む」
時間が経てば経つほど手の内を晒すことになる。ならば早期に決着を着けてやる。
「ロッド!近場にいることは分かっている。場所を変えよう」
普通より一回りほど大きい視聴覚室に場所を移し、ロッドールを待つことにした。おそらく、いや、間違いなくこの誘いには乗ってくるはずだ。
「…失礼しまーす。あ、ホントにいたんだ?あとの二人は、一緒じゃないんだ?」
今の私は無力だと決めつけているからな。
「ゼンさん。あなたが何を考えているかは知らないけど、ちょっと無謀すぎんじゃない?」
「ふっ。お前が思い付くようなことは考えてはいないさ。ただ、確認したいことがあったんだ」
ロッドールは折り畳まれた椅子を持ってきて座りだした。
「お喋りは好きだし。おれっち、一応聞き上手でもあるんで一方的でも良いよっ」
ここまであからさまに余裕であることを見せつけてくるのか…。挑発しているのか?それとも別の、もっと意味のある何か伏せているのか?
「うーん。そうだなぁ。逆に聞いてみようかな。おれっちの、フォース・イーレヴンの謎は解けた?」
何を企んでいるかが分からない。だが、こちらは作戦を実行するだけだ。ロッドールの一挙一動など関係ない。
「いくつかの候補を三つまで絞った。簡単に、“能力を見る”か“能力者に近付く”か“能力名を知っている”のどれか、もしくは、全てだと思っている」
「…やるじゃん。結構惜しいけど、まぁ大体はそんなもんだよ」
「いいのか?そうやって自分の能力を明かす余裕があるのか?」
「だって今のゼンさんは何にもないし、怖くないっていうか。眼中にない、かな?」
「だったらわざわざ会話なんかしないだろう」
「いいんですか?43人ぐらいの能力奪ってるんですよ?」
「人間の五属性だけをよくもそんなに集めたものだ」
「ありゃ?やっぱりバレてます?ホントに頭いいですねぇ。うーん。おれっちにもやることがあるんすよねぇ…」
ここで死にますか?
ロッドールが能力を発動した。
「予想以上に凄すぎて、こんなことになるとは思ってませんでしたよ」
「…私もだ。だが、宣言しよう。私がお前に指一本でも触れたら私の勝ちだ」
「それは怖い、ね!」
鋭利な風を巻き起こし、私に向けて放った。
だが、そんなことは予想済みだ。
わざわざ障害物の多い視聴覚室を選んだのはそのためだ。物陰からロッドールとの距離を置き、様子を伺った。
ディック・アイアンを回収せずに来たのだろう。遠距離からの魔法はそのためだ。
「近付かないようにさせてもらいます!」
土魔法で足場に凹凸を出現させ、機動力を削いできた。なかなか良い判断ではあるが、
「その程度では無意味だ」
あらかじめ仕掛けておいた罠を作動させ、全方位からロッドール目掛けて金属片が飛び交った。
「うわっ、っと、とっ!」
咄嗟に自分の周囲に風を発生させ、飛んでくる金属片を全て薙ぎ払った。
「危っねぇ…」
そこでロッドールは気付く。ゼンの気配が完全に消えていることに。
上!?下!?左右に回り込まれた!?
だが、どこにも姿は無い。
まさか、仲間と合流しに行った!?
扉を開け、廊下に出た時。
「経験値の無さが敗因だ」
アイゼンの拳はロッドールの顔面を的確に捉えた。
「出直してこい」




