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B MAIN  作者: 半半人
グレン・シギア編
21/173

自身を殺す

「どうする?お前の能力を使える看守が何人も来たら?」

「安心しろ。一つの能力につき一人が限界のはずだ。そうじゃなかったら諦めろ」


 考えるだけでは分からないこともある。割り切ることも大切だ。


「だが、ザリオン。同じ能力を目の前にして、今回と前回の決定的な違いは何だと思う?」

「…ナズンがいる?」


 その通りだ。


 ナズンは魔法により透明の球体を看守の口の中に生み出した。

 突然酸素を絶たれた看守は声も上げれず、激しく動揺した。息ができない、硬質化が効かない。その二つを突き付けるだけでこうも簡単に取り乱すとは。

 適当に動きを封じ、失神するまでそのままでいた。


「案外簡単だな」

「能力を回収しにロッドール本人が来るかもしれない。こいつは私の部屋にでも隠しておくとしよう。ナズンは周囲の警戒を怠るなよ」


 考えろ。私たちの元に来た看守が、偶然にもディック・アイアンを使えることがあるのか?あらかじめ事情を説明し、近付くと分かってから能力を渡したとしか考えられない。


「近くで、見ているな…」


 私たちが新たな対処法を見出だしたことにも気付いている。この手は二度も使えない…。


「ザリオン、ナズン。紙に書いていたのを覚えているか?」


 険しい顔で二人が頷いた。


「こいつを連れて人払いを頼む」


 時間が経てば経つほど手の内を晒すことになる。ならば早期に決着を着けてやる。


「ロッド!近場にいることは分かっている。場所を変えよう」


 普通より一回りほど大きい視聴覚室に場所を移し、ロッドールを待つことにした。おそらく、いや、間違いなくこの誘いには乗ってくるはずだ。


「…失礼しまーす。あ、ホントにいたんだ?あとの二人は、一緒じゃないんだ?」


 今の私は無力だと決めつけているからな。


「ゼンさん。あなたが何を考えているかは知らないけど、ちょっと無謀すぎんじゃない?」

「ふっ。お前が思い付くようなことは考えてはいないさ。ただ、確認したいことがあったんだ」


 ロッドールは折り畳まれた椅子を持ってきて座りだした。


「お喋りは好きだし。おれっち、一応聞き上手でもあるんで一方的でも良いよっ」


 ここまであからさまに余裕であることを見せつけてくるのか…。挑発しているのか?それとも別の、もっと意味のある何か伏せているのか?


「うーん。そうだなぁ。逆に聞いてみようかな。おれっちの、フォース・イーレヴンの謎は解けた?」


 何を企んでいるかが分からない。だが、こちらは作戦を実行するだけだ。ロッドールの一挙一動など関係ない。


「いくつかの候補を三つまで絞った。簡単に、“能力を見る”か“能力者に近付く”か“能力名を知っている”のどれか、もしくは、全てだと思っている」

「…やるじゃん。結構惜しいけど、まぁ大体はそんなもんだよ」

「いいのか?そうやって自分の能力を明かす余裕があるのか?」

「だって今のゼンさんは何にもないし、怖くないっていうか。眼中にない、かな?」

「だったらわざわざ会話なんかしないだろう」

「いいんですか?43人ぐらいの能力奪ってるんですよ?」

「人間の五属性だけをよくもそんなに集めたものだ」

「ありゃ?やっぱりバレてます?ホントに頭いいですねぇ。うーん。おれっちにもやることがあるんすよねぇ…」


 ここで死にますか?



 ロッドールが能力を発動した。


「予想以上に凄すぎて、こんなことになるとは思ってませんでしたよ」

「…私もだ。だが、宣言しよう。私がお前に指一本でも触れたら私の勝ちだ」

「それは怖い、ね!」


 鋭利な風を巻き起こし、私に向けて放った。


 だが、そんなことは予想済みだ。


 わざわざ障害物の多い視聴覚室を選んだのはそのためだ。物陰からロッドールとの距離を置き、様子を伺った。

 ディック・アイアンを回収せずに来たのだろう。遠距離からの魔法はそのためだ。


「近付かないようにさせてもらいます!」


 土魔法で足場に凹凸を出現させ、機動力を削いできた。なかなか良い判断ではあるが、


「その程度では無意味だ」


 あらかじめ仕掛けておいた罠を作動させ、全方位からロッドール目掛けて金属片が飛び交った。


「うわっ、っと、とっ!」


 咄嗟に自分の周囲に風を発生させ、飛んでくる金属片を全て薙ぎ払った。


「危っねぇ…」


 そこでロッドールは気付く。ゼンの気配が完全に消えていることに。


 上!?下!?左右に回り込まれた!?


 だが、どこにも姿は無い。


 まさか、仲間と合流しに行った!?


 扉を開け、廊下に出た時。


「経験値の無さが敗因だ」


 アイゼンの拳はロッドールの顔面を的確に捉えた。


「出直してこい」

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