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B MAIN  作者: 半半人
グレン・シギア編
20/173

前進後の欠陥

 二つの扉の隙間を抜け、ナズンの魔法が看守室に辿り着いた。

 無属性の魔法が透明であることもここで役に立った。


「あの()いいわね。可愛いわ」

「意識するものが違うぞ。しっかりと鍵を取ってこい」


 鍵ではなく(えもの)を狙うナズンを制するのは私の役目ではないんだが…。


「何でザリオンを別行動にしたの?」

「お前よりは囚人たちとのコミュニティを築けているからな。私たちは質で、あいつは数で。戦力のバランスを均等にするにはこれでいい」

「ま、別にいいけど」


 第一に鍵を奪ってもらわないと何も始まらない。無駄な話をする余裕があるなら、その分集中してほしい。


「どうだ?」

「ちょ!今頑張ってるの!」

「あぁ、すまない」

「……イッツ・ジャスティス!できたわ!!」

「よくやっ…た……?」


 看守の目を掻い潜り、厳重に管理されている鍵はそのままに。狙っていた男が椅子に掛けていた上着を魔法で手繰り寄せていた。

 何が正義だ、馬鹿かお前は?


「おい。ふざけるな。すぐにバレる。さっさと返せ」

「上下セットなら変装できるでしょ?下は本人から脱がすわよ!」

「…興味本意で聞くが、お前の好みは?」

「もちろん可愛い子。だるそうだけど、しっかりしてるギャップとか最高ね」

「…一人、それに該当する奴を紹介してやる」

「本当!?」

「あぁ。だから、今は鍵だけを狙ってくれ」

「分かった!!」


 目的が定まった人間はとても素直で、とても力強い。この時のナズンの集中力と魔法の操作は圧巻の一言だった。 看守に気付かれないように鍵を盗み出し、誰の目にも着かないようにこちらに引き戻す。それが どれだけ高難度なことか。


 紹介するのはレナードだが、この際関係ないか。


「ふぅ…ざっとこんなもんでしょ」

「流石だ。よし、戻るぞ」

「でも、その前に…」


 ナズンは名残惜しそうに、上着その場に置いてきた。


「ああすれば、看守たちが身内を疑って時間稼ぎできるかも」

「…やはり、仲間にしておいてよかった」


 おそらく前半は本気でふざけていたのだろうが、分別をわきまえ機転の利くところは高く評価できる。


 後はザリオンの報告を待つだけだ。


◇◇◇◇◇


 ゼンの言う通り、魔力採取のケーブルを辿ってみたが…これはおかしい。

 都市の魔力(動力)不足のためと聞いていたが、ケーブルの大半が途中で下に向かって消えていた。地下にほとんどの魔力を送っているということになるが、この刑務所にはそれほどの量が必要だとは思えない。得体の知れない何かが地下に潜んでいる?もしくは、兵器のようなものに魔力を充填させているのか?


 謎ら多いが、一度報告に戻るか。あいつならこの少ない情報でも何かを見出だすかもしれないからな。深追いは禁物だ。


 賭けでもそう。ノーリスク・ハイリターンが理想だ。


◇◇◇◇◇


「なるほど。地下、か…」


 全く予想外の事実を知ったが、


「これを利用させてもらおう…!」


能力を取り返したかったとしても、ここから出ないことには何も変わらない。

 始めは刑期を全うすることも考えたが、この地下にある陰謀めいたものを公にすれば汚名も帳消しになるのではないか?そもそも濡れ衣なのだから、世間体を守りつつ出所することができる可能性が高い。


「進み方は決まった。あとは」


 実行するだけだ。


 そうこうしている間に私たちの元に一人の看守がやって来た。


「お前たち。鍵を、盗んだか?」


 あまり期待していなさそうな顔で尋ねられた。


「いいえ」


 その言葉を合図にナズンに攻撃させた。

 魔力をを一点に集めた衝撃波で看守は後ろに吹き飛んだ。


「よし。作戦通り…」

「…ってぇな。てか、本当に硬くなるんだ、これ」


 ぶつかった壁は凹み、大半が崩れているというのに


 看守自身は無傷だった。



「ゼン……あれはお前の…?」

「前に言ったのを覚えているか?」


 能力を誰かに付与させることができる。だが、それについては深く考えなくてもいい、と。


 しかし、この能力が最も厄介であった。


「雑魚に能力を付与できるうえに、失敗してもまた次がある」

「ちょーっと最悪な予感しかしないんだけど…」


 鳴り響く警報を背に、全身を硬質化した看守が足音を立てて近付いてきた。


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