真意の思考
ナズンの部屋で紙と鉛筆を持ち、作戦会議を開いた。
ロッドールから能力を奪い返す前に。いくつかのことをしなければいけない。
「ナズンにはロッドールからの接触はないのか?」
「ワタシは何も。ザリオンが失敗してからワタシに切り替えるつもりだったのかも」
「そういうことになるな」
「ゼン。もしかしたら俺たち二人に能力を返し、お前と戦わせる可能性もあったんじゃないか?」
「それは絶対に無い選択だ。二人に能力を返し、その二人が手を組んで反撃してきたら?能力を取り上げれば問題はないが分かっていててそんな面倒なことをするとは思えない」
質問はここまでにして。
「まずは対策だ」
条件付きで能力を奪うということは、それさえ気を付ければいいということになる。
「それはおかしくないか?俺たちはもう能力を奪われた側だ。今さら対策しても無意味だろ」
「そう思うのも仕方がない。だが、もしも隠している、または、奪われていない能力があるとしたら?」
「まさか…あるのか!?」
「いや、ない」
「ふざけてるの?」
ナズンとザリオンが立ち上がった。確かに今の発言がふざけているように聞こえるのは仕方ないが、
「相手に警戒させることはできる」
「どういうことだ?」
「…なるほどね」
ロッドールに警戒させることで何か情報を得られるかもしれないというだけの話である。会話に持ち込めれば使えるかもしれない。
「お前たちは何の罪で捕まったんだ?」
「俺は違法賭博」
「ちょ、それ言わなきゃダメ?」
「あぁ。必要な情報だ」
「…色々とぶっ壊しちゃったの!」
器物破損と違法賭博、と。
「ザリオンとナズンはどうやって能力を奪われた?それがヒントになることもあるからな」
「俺はここに来て二、三日目だったか?」
「ワタシはここに来てすぐだわ」
「私の奪われた時期も考えるとバラバラだ。が、条件を絞ることはできたな」
「…嘘だろ?」
「判明していることは、能力を奪えること。それを、誰かに付与させることだけだ。二つ目はあまり深く考えなくてもいいがな。まぁ、色々とまとめてみると…」
一つ。能力者と会う必要があること。
刑務所にいるロッドールに会ってからということからこれは簡単に予想できる。わざわざ私とザリオンの前に現れたことも近距離でしか発動できないことの証明になる。
一つ。満たす条件は比較的簡単だということ。そして、それは複数あること。
ロッドールが私から能力を奪う際「色々と条件がある」と言っていった。敵である私にそれを公言することは、絶対に防げないという自信に他ならない。
故に、ロッドールは自分が圧倒的に優位にあると信じているのも確かだった。
「ナズンの魔法を食らわせる隙ぐらいは作れるかもしれない」
しかし。
「おそらく。いや、間違いなくロッドールが私たちに接触することはないだろう。奪った能力がどれほどあるのかは知らないが、反撃されることを分かっていて私たちに会うはずがない」
「どうするんだ?対策を練る以前の問題じゃないか」
「もう、バカねぇ。会いに来ないなら、会いに行けばいいのよ」
「その通りだ。魔法を使えば鍵を手に入れることは容易いだろう。だが、脱走はしない。誰かが脱走したと思わせるだけでいい。そうすれば看守どもは誰がいなくなったのか確認に来る。そこでそいつらを倒し、変装すれば後は簡単だ。焦る必要はない」
一連の作戦を伝え終わり、私は紙にこれからの行動を書き並べた。
説明を聞き終え紙と向き合っているアイゼンに、ザリオンとナズンはある念を抱く。バーキンス・アイゼンの名前は伊達ではない、と。思考の幅と深さが明らかに常人のそれを遥かに凌いでいる、と。
ザリオンはそこで恐怖した。数少ない情報で戦略の範囲を広げ、先のこともしっかりと見据えているアイゼンの技量に驚きを隠せずにいた。それは現時点では仲間であるが、本当に敵に回したくないと切実に思うほどのものだった。
反するナズンは好奇心でいっぱいだった。今までに出会った人種とは全く異なる存在がこれから何をするのか?自分はその未知なる存在の行動を考えを間近で見物できると分かると面白くて仕方がなかった。
「お前たちがこれに書いてあることをしっかりとこなせれば、成功率はぐんと高まるだろう。私は少しやることがある。後は任せた」
「分かった」
「任せておいて」
囚人とはいえ、聞き分けが良くて本当に助かる。好戦的な面もあったがこれなら頼りになるな…。
本当は友好的、かつ、良心的な奴をできるだけ多く仲間に加えたいと思っていた。だが、ザリオンとナズンの二人の実力なら充分だろう。他の2百人あまりの囚人のことは放っておいてもいいだろう。
最悪の事態も考えたが、順調に事が運べそうだ。




