確固たる証明
「考え直したらどうだ?」
「決めたことだ。歪めはしない」
ロッドールが言っていたナズン・ルメイスとは何者なのか確かめてやる。
ザリオンに聞いたところほとんどが部屋で過ごしているらしい。そうなれば、直接会いに行くしかない。これも最初から決めていたことなので何の抵抗も無かった。
案内された場所は普通の個室であった。何がそれほど危険なのかは全く分からないが…。
扉を軽く叩き、入室した。
「あら?お客さん?」
長い黒髪に整った顔立ちの美男子がそこにはいた。背は高いが痩せぎみで危険な雰囲気は感じられなかった。
「どうも、ゼンだ。いきなりで悪いが話を聞いてもらいたい」
「あらあら、ザリオンまで付いてきて。ロッドールにやられたの?」
女々しい口調や身振りに抵抗があるが仕方ない。話を持ち掛けた以上、不快であることを顔に出すのは失礼だ。
「その通りだ。ロッドから能力を取り返したい。あなたが何者かは知らないが、是非とも力を貸して頂きたい」
頭を下げ、本心で助けが必要であることを示した。
「そうねぇ…。じゃあ、この刑務所についてどこまで分かった?」
「この刑務所について?」
「ほら!違和感みたいなの」
「あぁ。静かすぎるところか。囚人が大人しいとは思ったが、全員が能力を奪われた者だと考えれば納得がいく」
「そうそう!言うまでもないわね」
そうか…。ここにいる者は皆、魔法や能力が使えるのだ。だからこそ、魔力採取を行う本当の理由がある。一般人よりも上質な魔力を手に入れることができる。囚人の義務とすることで世間からの非難もない。ロッドールが詳しいことにも合点がいく。
「ワタシはここの生活に苦はないの。平和だし、静かだし、落ち着くし。別にあんたの力になる必要はないの。分かる?」
「お前は力を取り戻したくはないのか?」
「別に。逆に聞くけど土魔法に価値なんかあるの?」
「ある!ゼンと闘うと分かった一時だけ、能力を返してもらった。その時に思ったんだ。俺にはこれしかないんだと、そう思ったから…!」
「…ごちゃごちゃうっさいのよ」
ザリオンが突然宙に浮いた。
「興味ないの。力が必要?ワタシにはあるからあなたたちに協力する意味はないし、メリットが何もない。ロッドールを倒したその後は?どうせ無策でしょ?」
「落ち着け。ザリオンは悪くないだろ?」
「悪くはないけど、ワタシには不快なの」
ナズンが溜め息を吐くと同時にザリオンの地に降りた。
「…お前のその魔法……無属性か」
人間の扱える五属性に当てはまらない魔法。衝撃波を生み出すぐらいのものだと思っていたが、ここまで応用が利くものだとは。
「その能力も半分にも満たない、残り僅かなものだろ?」
「ロッドールが取り損ねたみたいだけど、こんなもの微々たるものよ」
「…取れる部分、取れない部分があるということか?それとも未達成の条件があったのか?」
「そんなもの考えたってしょうがないでしょ」
「能力を取り返すためだ。情報や不測の事態を考慮しておくのは当然のことだと思うが」
「あは……あはははは!本気で言ってるの!?」
「あぁ」
誰が何と言おうが変わらない。
「逆に尋ねるが、自身の存在意義と同等と言っても過言ではない能力を他人に譲ることがができるのか?」
ましてや、努力の末に手に入れたものだとしたら到底許せないはずだ。
「…ザリオン。あんたはゼンを認めてるの?」
「俺は認めている。だから申し訳なく思うし、賛同したんだ」
「ふぅん…」
会話の流れは好調だ。最初はやや抵抗を感じたが、明らかにこちらの話を受け入れて思考している。ただ、それを決めるものがないのだろう。悩んでいる様子からそう察することができた。
「ワタシ、自分より下の人間に従う気はないの。ゼンはこの場でそれを証明できる?」
「何を示せばいい?賢さか?力か?」
「それはあなたに任せるわ」
「任せる…」
一番困る内容だが仕方ない。自身の力を相手に伝えるには一言で十分だ。二言はいらない。強烈、かつ、明確なものを発することができれば、人は嫌でも付き従う。
私を伝える、か。少し苦手な分野だが…。
「私の名はバーキンス・アイゼンだ」
「「!!?」」
二人が驚愕の表情を見せた。噂にもならない私の名を知っていることに賭けたが……まさか、二人とも知っているとは。
「…ゼン……いや、アイゼン…本物なのか…?」
「これは…とんだ大物に出会っちゃったわね」
「自分を示すものは何も無いが、この名であることだけは確かだ」
「前言撤回。こっちの世界のスターにこんなところで会えるなんて…ドキドキするわ」
そ、そうなのか?そこまで驚かれる人物になっているとは知らなかった。
ナズンとザリオンの口調と仕草に少し変化が表れたが、今まで通りにしてほしい。
「ちなみに、どういった噂をされているんだ?」
二人は顔を見合せて即答した。
「天魔大戦を止めたんでしょ?相当の実力者じゃないかって」
「俺もそういったものだ。最強の人間・魔法使いだと聞いている」
あぁ、あと。
ナズンが一つ付け足した。
「そいつを殺したやつが人間最強だ、って」
…どうやら私は知らない間に討たれる対象になっていたらしい。




