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B MAIN  作者: 半半人
グレン・シギア編
16/173

ホルブミーン

 中庭に連れ出された私はザリオンと向き合った。


「お前結構やるな。8ブレスも途中から見てたが、ブレない姿勢。堂々とイカサマする辺りも評価できる」

「嗜んでいたものでね」


 巨体に似合わぬ観察眼に驚いたが、そんなことはどうでもいい。


「で、何をするんだ?」


 待て待て。そもそもの私の目的は何だ?ここで、ザリオンと争うことに意味があるのか??


「喧嘩をしたことは?」

「…多少は」

「殴り合うのは好きだが、そうじゃない。互いの戦略が光る攻防というものが俺は好きでね」

「…喧嘩は問答無用でするものだろ」

「そこで見付けたんだ。西の国の伝統遊戯、ホルブミーンというものを」


 そうだ。この刑務所内の違和感を突き止めるためだ。犯罪者との関わりを持つことで人脈広げることもそれに含まれるからだ。


 レナードを叩き落とすには悪人を味方にするぐらいでないと。


「それで、そのホルブミーンとはどういうものだ?」

「簡単だ。二回の攻撃で相手を倒せば勝ちというものだ」

「二回…?」

「一方がコイントスを行い、一方が表裏を予想する。当たっていたら攻撃出来る。外れたら攻撃出来ない。それだけだ」

 

 運を絡ませた攻防で相手を制するといったところだろう。


「範囲は?」

「この石畳内だ」


 面積にして約20平方メートル。一歩半で端から端まで行ける間合いと言っていいだろう。


「二回の攻撃が失敗したらもう一度コイントスを行う。それをどちらかが倒れるまで繰り返す」


 逃げ場は無し…。攻撃側は技の精度と威力を。防御側は反射神経と動体視力を試されるということだ。


「組み手とそう変わらないな」


 私は上着を脱ぎ、ザリオンはコインを取り出した。そしてそれを空中に弾き、手の中に収めた。


「さぁ、裏か?表か?」

「表だ」


 コインは裏であった。


「いくぞ!」


 直線に繰り出された右の拳は空を切った。速いが大したことはない…。


「っふ!」


 空振り後の体勢から左足での回し蹴りを放ってきた。動きに無駄の無い切り返しに対応できず、かろうじて防御に成功した。


「…やるな」

「はぁ…はぁ……っ!」


 ザリオンは体の使い方が非常に上手い。二回目の攻撃が確実に当たるように仕掛けてきたことが何よりの証拠だ。


「賭け事なんか止めて、格闘家にでもなったらどうだ?」

「それでは駄目だ。武骨な喧嘩にも華があると知ってしまえば、格闘技などただの綺麗事にしか見えないんだ」


 その意見は分からなくもないが、格闘技にも良さはある。


「さぁ、私がコイントスをする。どっちだ?」


 同様にコインの表裏を尋ね、ザリオンが外れた。


「次は私だ」


 小さく早く呼吸をし、集中力を高めた。生身の人間相手には能力を使わない。


「純粋な武術で相手をしてやろう」

「ほう…」


 左足を前に出し右足を引く。高い位置で拳を構え、ザリオンの目を見た。見たことのない構えにザリオンは少し驚いたが、すぐに平静に戻り身構えた。


 息を深く吸い、


「…っ!」


 一気に距離を詰めた。


 姿勢を低くし、ザリオンの両足に体当たりをした。拳を高く構えたのは意識を上段に向けるためであり、この攻撃の反応を遅らせるものである。

 重心を崩され、地面に倒れた。間髪入れずに肘に体重を乗せザリオンの胴目掛けて落下した。攻撃はしっかりと命中し、ザリオンの腹部に肘がめり込んだ。もちろんこの一動は武術でも何でもないが、話術も闘いに入るということを忘れないでほしい。油断をさせるのも、集中させるのも作戦のうちということだ。


 しかし、


「今の動き。武術じゃないだろ」


平然としていた。


 アイゼンは慌てて飛び退き、距離を置いた。


「随分と…頑丈だな」


 未だに残る手応えを反芻した。普通の人間の強度ではない。魔法による身体強化か?いいや、それとは違う無機質な固さがあった。別の何かによる防御と考えて間違いない。


「魔法を使うようなら、問題無いな」


 能力を発動させることを視野に入れ、次のコイントスに挑んだ。


◇◇◇◇◇


 互いの高等な回避と防御により、相手に膝を着かせることすら出来ない状況が続いた。


 この闘いは技術で相手を倒すことが問われる。防御を潜り抜けるか、回避の先を読むか。たった二回の攻防の中には、洗練された戦略と繊細な動きが短時間に衝突する。故に、相手の力量をほぼ正確に体感していた。


「はぁはぁ……お前、名前は?」

「…ゼンだ」

「はぁ…気に入った。が、手は抜かない…!」

「望むところだ」


 今はザリオンの攻撃する番であった。隙を見せない私に痺れを切らしたのか先手を打ってきた。


 距離を詰めてからの拳撃…!避けろ!


 無意識に叩き出された指令が全身を動かした。だが、足が動かない。違う、足の動きを制限された!?


 眼前に迫るザリオンの拳が私の判断力を奪った。


 能力、ディック・アイアン。


 常人のならば硬質化に負け、拳が砕けるはずなのだが、


「…お前も同系統の能力者か!?」


 私の方が後退していた。硬質化に負けない強度で殴られたことになる。

 ザリオンが驚いている間に足元を確認した。石畳が僅かに変形し、私の靴を捕らえていた。


「土属性の魔法、だな」

「俺はな。お前のはやはり少し違うようだ」


 土魔法はどの魔法よりも持続力がある。植物が地に根を張るように、土は魔法の伝導が非常に良い。そのため長時間維持することができるうえに、地表を伝わせ遠距離で魔法を放つこともできる。

 先程のは私の足元に魔法を放ち、薄く纏わせた土魔法による硬化での一撃ということになる。


「腹部も同様に防御していたわけか…」

「お互いの能力は割れた。次で決めるか?」

「…裏だ」


 弾かれたコインは宙で幾度も回転し、ザリオンの手に吸い込まれた。


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