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B MAIN  作者: 半半人
グレン・シギア編
15/173

8ブレス

フィル。

人間界の共通単価。または紙幣、貨幣を表す。同価値の貨幣と紙幣があるため自由に使い分けることができる。硬貨が使われることが多い。

一週間。


 様子をみるつもりで過ごしたが、私が思っているような情報は得られなかった。


「やはり、この刑務所には何かある…」


 ここは最も危険な人物が最も多く捕らえられているというのに、それに見合ったことが何もない。別の場所には監獄があるというのに、ここにはそこまでの拘束が全く無い。

先日、わざと適当な囚人を挑発してみたが「すいません」の一言で終わってしまったし。私の固定概念が強すぎたのか??全く分からない。

 とりあえず、ロッドールが言っていた二人に会ってみよう。まだまだできることはあるからな。考えるのはそれからでといいだろう。


「ロッド。前に言っていた二人について教えてくれ」

「お、ついに動くのか!いいぜいいぜ。まず一人目にナズン・ルメイス。こいつはよく分からないことを言うし、沸点も低い。こっちから行かなきゃあまり関わらないタイプだ。二人目にザリオン・ラベリアス。賭け事か好きだからこっちから先に会った方が良いと思う」

「なるほど。参考になった」


 ならば、その通りザリオンから接触してみるか。


 自由時間、食堂でチップを場に出し、カードで遊ぶ連中を見付けた。


「今はいないみたいだけど、後から多分くると思う」

「来なかったときはお前が連れてこいよ」

「や、やだよ!」


 慌てるロッドールを置いてそのテーブルに向かった。


「私もいいかな?」

「…新人か。なら、前金を貰おうか」

「いくら必要だ?」

「50万フィルでいいぜ」


 馬鹿げた金額に他の奴等が笑った。単なる挑発だろう。何も動じることはない。


「あいにく、手持ちは100万フィル硬貨一枚だ。止めておくよ」


 私は銀色の硬貨を指で弾いた。

 人間界の共通単価としてフィルが存在する。それは様々な面を考慮して同価値の紙幣と硬貨があるため各々が使いやすい方を持ち運ぶことができる。

 だが、ここにそんな物を持ち込むことはできない。支給されるナイフを能力で圧縮し、硬貨のように仕立てたものでもこうすると、


「ふん。金があるなら話は別だ。さっ、卓に着いてくれ」


 本物に見えてしまうものだ。


「これは何のカードゲームかな?」

(エイト)ブレスっていう、昔からのゲームだ。二人でやるゲームで、先攻が1から8のカードから一枚選び、裏にして伏せる。後攻は出された数が何なのかを予想して、同じように一枚選ぶ。それをひっくり返し、出た数字の誤差を足していく。同じカードは一回しか使えない。一回ごとに先攻後攻を入れ替えて、計八回行い、数が大きい方が敗けだ。単純だろ?」


 なるほど。先攻が当てられないようにカードを出し、後攻がそれを推理するということか。

言う通り、単純な数当てゲームだな。


「一回だけ手本を見せてやる」


 説明通り、八枚の中から互いに一枚のカードを場に出した。


「これをひっくり返して…」


 先攻のカードは5。後攻は2だった。


「こうなると、先攻と3つ離れているということでその数をカウントする。ただし、先攻と同じカードを出しちまったら持ち点が逆になる。一発逆転もできるってわけだ」


 ふむふむ。誤差を少なくすることが目的だが、ぴったりにしてしまうと有利不利が逆転することになるのか。結構難しいな。


「大体分かった。やってみるか」


 このゲームで一番大事なのは4と5の使い所だとすぐに察した。両端の数字から遠すぎない位置にあるため扱いが難しい。


「初心者のお前に先攻、後攻選ばせてやるよ」


 先攻は選択肢が多いため、誤差を広げられる。後攻は選択肢が減る分、予想しやすくなる。簡単に見えて、奥が深い…。


「先攻だ」

「オーケイ。おら、さっさとカードを配ってやれ」


 新品のカードを八枚貰い、しっかり混ぜて場に7を出した。


「いいのか?もっとじっくり考えてもいいんだぜ?」

「…」


 私が本当に相手をしたいのはザリオンだ。それ以外の連中に無駄な時間を費やしたくない。


「なら、こっちはっと」


 カードが出揃い、互いに見せ合った。相手は8だった。


「一発目からラッキー!こりゃいい!」

「最小の誤差…」


 次は相手が7、私は6を選んだ。誤差は最小で済んだものの、危うく大差になるところだった。


「ほら、次はお前だ」


 そう言うと、他の奴が場に出たカードを回収した。


「一度出したらそのカードは使えないからな」


 余裕を見せるが、その程度で動揺すると思ったら大間違いだ。わざと4を出し、相手の様子を伺った。すると、相手も4であった。

 明らかに相手はこちらのカードを把握している。私には分からない細工をカードに施しているようだ。


 差は一方的に開き、八回目に差し掛かった。


「お前が誤差を6、オレが3。残った手札は1と8…」


 そして、八回目ということで後攻は私になる。


「これで終わりだ」


 相手が最後の一枚を場に出し、静かに笑った。


 笑いたいのはこちらだというのに。


「これで、私の勝ちだ」


 場には二枚の8が現れた。


「…!!」

「同じ数ではあるが、()()カードではないが?」


 本当はこのゲームは知っていたし、カードは予備で一枚ずつ持っている。最初から私が勝利することに決まっていたのだ。


「金はいい。お前たちの親玉をさっさと連れて来てくれればそれでいい」

「てめぇ…!?」


「よぉ。俺がザリオンだ」


 巨大な男が上からの覗き込んできた。


「面白そうな奴だ。相手してやろう」


 無表情ではあるが言葉の抑揚から嘘は言っていないようだった。


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