卓抜する者
アイゼンも天使側もディック達の封印が解ける正確な時間を求めていた。だが、そうはならなかった。夜を迎え、互いに手を引き、何の進展も無いまま一日が経過した。
そして、二日目が始まった。
ボルートとノーリアは天使側の戦場に送り、アイゼン達は交戦する様子を真横から眺められる位置で様子を見ることにした。
天使側にアイゼン、ホバック、レニアを。悪魔側にマファリス、ザック、ピリアルトを配置した。目的は情報収集であるため、交戦は避けるようにアイゼンは釘を刺した。
一日目の戦闘から互いの力量を理解した天使軍と悪魔軍は配置を変え、戦術を変え、領主が姿を現した。
天使は遠距離で待ち伏せされている悪魔に遅れをとった。そして、その作戦が有効だと分かった悪魔は同じ配置にし、その周囲の守りを固めた。
先頭に立つドーネルとラッシュ、カーナがいきなりぶつかり合いそれが開戦の合図となり一気に場が乱れた。
そこで悪魔は疑問を抱いた。減らしたはずの天使が今日も戦闘に加わっていることに。それは間違ってはいない。悪魔の攻撃で多くの天使が負傷し、行動不能となる者は多かった。
だが、
能力、アルカンス・クラフィオン。
領主、ブランとその仲間による能力で治療を行っていた。
「昼はバカに任せて寝るよ。夜がうちらの本番だからね」
完全に役割を分担しているため、悪魔がそれを知る術はない。
戦力だけを見ると初日とはさほど変わらない。このままでは結果も同じになる。戦況を変えるため、互いに温存していた人物を動かした。
「逃がさないよー」
「待て!」
交戦中のドーネルがラッシュとカーナから逃げるように後退した。一日目に逃したことを気にしていたのかカーナがその後を追った。だが、具現化した数本の剣に行く手を阻まれた。ラッシュは罠だと考えカーナを止めたのだった。
「ここを守るのが役目だ。逃げたのなら追わなくていい」
「えー。いいの?また逃がしちゃうけど」
「領主との戦いは神経を使う。戦う気がないのならそれで……カーナ、飛べ!!」
「!!」
地表に現れた僅かな凹凸にラッシュが気付いた。そして、それが先程逃げたドーネルの棘によるものだと分かり、すぐに回避に移すことができた。
「回りの木々が邪魔だな。飛んだせいで余計に分かりにくくなったな」
「でも、これじゃ私達の方が目立つよね」
「めずらしく賢いじゃないか」
能力、オリハルコン・ソード。
強烈な殺気を感じ、ラッシュは身構えた。そして、その直後に同じく剣を持つ天使が奇襲を仕掛けた。迎撃した後、空中で体勢を立て直し二人は向き合った。その死角からの現れた新手をカーナが盾で受け止めた。
「二対二か」
天使が動かしたのは三人。そのうちの二人は、サイリスとイーリスである。武器を扱う者には同じ者をぶつけるという判断である。そして、余裕のあるドーネルは深部にいる遠距離攻撃部隊を突撃するという作戦である。
能力、銀姫の鉄刀。
能力、銀姫の瞳。
能力、オリハルコン・ソード。
能力、オリハルコン・シールド。
二日目はまだ始まったばかりだ。
◇◇◇◇◇
奇しくも悪魔側も同じような人選で同じような作戦を実行していた。
近接向きの能力を持つ二人が天使の軍の真ん中を何の抵抗もなく突き抜けていた。正面に立つ者は全て凪ぎ払い、蹴散らしていった。
一人は領主、タリエット。もう一人はタリエット領所属、セディエルだった。
「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁ!!!」
「うわあぁぁぁぁぁあぁぁあぁ!!!」
二人は奇声のような雄叫びを上げ、全指揮を担う天使軍の本陣、グラウスの元へ一気に走り抜けたのである。
だが、
「あちちちちちっっ!!」
「うわっちゃあぁ!!」
二人の進行は炎に阻まれた。
「大将んトコに行かせっかね、間抜けが」
「女!?」
二人の正面に立つのは腕を組んだ口の悪い女の天使だった。彼女は領主、ヴリエストであった。
「勝手に前出んじゃねぇよ、口悪女」
「ここにも間抜けがいんの忘れってた」
「あぁ?殺すぞ…!」
「うらぁ!」
能力、雷鳴の拳!
ヴリエストはジェネックスの服を掴み、正面に引き寄せた。
「…この野郎」
「あら。盾代わりにはなるってね」
「マジで殺すぞ」
「セディエル君!」
「タリエットさん!」
悪魔の二人はジェネックスに攻撃を繰り出そうとした。
「うるせぇ!!」
能力、ラクト・リエット。
能力、ラフイゴの炎拳!!
ジェネックスは腕を振り、二人に炎を浴びせた。
「…」
だが、そこで違和感を抱いた。
「おい。俺に何した?」
「無駄口叩いてないで働け。来るよ」
巨大な拳が炎を払い、無傷のセディエルとタリエットが現れた。
「二対二…。上手くやれるかな?」
「大丈夫!自分を信じてセディエル君!」
「はい!」
「うるせぇな。こいつら殺したら次は自分だからな」
「ご自由に」




