拳と刃
次回の投稿は6/22です
天使側で交戦するアイゼンとマファリス。予定では多くの天使を足止めするつもりだった。
だが、相手が悪かった。
能力、銀姫の鉄刀。
能力、銀姫の瞳。
先頭にいたのはサイリスとイーリスだった。
「アイゼン殿!」
「来るな!!」
マファリスを制止し、アイゼン立ち上がった。硬化をものともしない攻撃が内部に響いていた。
「この二人には…」
大きな借りがある。
能力、ディック・アイアン。
「不意打ちが決まったからといって満足するなよ」
「イーリス!」
「!!」
アイゼンは一歩で間合いを詰めた。それにより二人の扱う刀剣の長さを殺し、マファリスからの注意を逸らした。その意図に気付いたマファリスは身を潜めた。
イーリスは回避に徹し、アイゼンを引き付けた。追うように踏み込みを狙いサイリスが切り払った。当然それに対応し、一点硬化の腕を盾にした。
アイゼンは僅かな時間で自身の硬化を強化していた。領主との戦いでは今までのものとは比べ物にならないと予想していたからだ。そして、鍛えていたのは硬化だけではない。
能力、グラビトン。
二人を間合いに入れたアイゼンは周囲の重力を増やし跪かせた。
これはあの時の…。
イーリスはフリッド・フランでの攻防を思い出していた。
サイリスは重力の中すぐに体勢を立て直し納刀した。居合いを放つ構えに入り、イーリスに目を向けた。
イーリスもすぐに立ち上がり構え直した。最速の突きを狙い澄ました。
最初にアイゼンに迫ったのは突きであった。回避を先読みした急所を狙うものである。それを掌で擦るように逸らし、肘で顔を押した。続けて攻撃を出すサイリスの壁として誘導したのだ。しかし、サイリスは構わずに抜刀した。
「まさか、娘ごと切るとは…」
「信じているから。ただ、それだけ」
イーリスは体を捻り、峰で剣撃を防いだ。信じているとは建前で何も考えていないのではないかと疑うほど躊躇いのない攻撃であった。
それゆえに一瞬遅れた。
アイゼンは急いで距離を空け、首にできた浅い傷を撫でた。
「もしかして、一人で私たちに勝てるとでも?」
「あぁ。根拠は無いがな」
相手が一人なら対等以上に立ち回れる自信があった。二人となれば話は別である。攻撃の有無、回避か防御か。それらの判断を瞬時に定め、行動しなければならない。それが最善であっても敵わないことも頭に入れていた。
数回の攻防を繰り返し、傷が増えるアイゼンは決断する。
アイゼンはサイリスの懐へ潜り込んだ。戦いでは弱者から倒していくのが効率的である。そのためには、
能力、ディック・アイアン。
サイリスの攻撃を受け、隙の大きな攻撃が来ると察した時。
能力、グラビトン。
自分の周囲の狭い領域の重力を最大に上げた。それにより剣撃を下に逸らし、跳ねて攻撃を避け、
能力、ディック・アイアン。
一点硬化…!
空中で体勢を整え、サイリスに全力の一撃を放った。
回避が不可能と判断したサイリスは、剣を地面に突き刺し体を捻り蹴りをアイゼンに放った。アイゼンの拳はサイリスの肩にぶつかり、サイリスの蹴りはアイゼンの横顔に当たった。二人はその衝撃で後ろに倒れた。
一点硬化で守られていない顔への攻撃は予想外であった。対し、サイリスも驚いていた。アイゼンの拳が軽いことに。
能力、白玉蛍。
サイリスは突撃の電撃で体が硬直した。
アイゼンは一点硬化での一撃でサイリスを倒すつもりだった。だが、それが不可能と分かり硬化を解き、白玉蛍に切り替えた。
能力、ディック・アイアン。
再び能力を切り替え一点硬化の一撃をサイリスに叩き込んだ。それによりサイリスは大きく吹き飛ばされた。
「これで一対一だ」
アイゼンは戦闘経験のあるサイリスを後に回すことにした。一人になったイーリスをここで倒す。
アイゼンはすぐに距離を詰め、イーリスに攻撃を仕掛けた。この時、イーリスがサイリスの方へ逃げないよう立ち回りに気を付けた。
しかし、サイリスのに劣るとしてもイーリスは強者である。アイゼンの重い通りに事が運ばず、時間だけが過ぎた。
その間にサイリスが体勢を整え、戻って来てしまった。
「よくやったわ」
「…別に」
イーリスは母であるサイリスに対して劣等感を抱いていた。自身の未熟さと前回の敗北を引き摺っていた。期待を裏切ったようか気がしてならないのだ。さらには父の能力を使える分、余計なことを考えてしまうといってもいい。
だが、この場でアイゼンを倒すことでそれが払拭できるとおもった。
能力、銀姫の鉄刀。
イーリスは攻撃に集中し、身構えた。




