なんとなく
能力、サン・ピエール!
能力、オリハルコンソード!
二人の領主が激しい攻防を後から来た部下は眺めることしかできなかった。剛石、軟性硬玉、鋭棘昌石と三種の宝石の特性を生かし、近・中・遠距離の攻撃に対応できるドーネル。対して、自由に剣を具現化できるラッシュ。能力の差でドーネルに軍配が上がる。だが、ドーネルは攻め切れないでいた。具現化できる剣に制限はなく、幅の広いものや破砕に耐性のあるものを壁としてドーネルに接近し、近接戦闘にもつれ込ませた。その激しい攻防に割っては入れる者などいなかった。
「その硬度、見切った」
「!!」
ドーネルが防御した腕にひびが入った。すぐさま距離を取りひびを修復した後、ラッシュに向き直した。
ラッシュは具現化する剣の刀身を厚くし、形状を切るものから叩き砕くものに変えた。
ラッシュの戦い方は相手の弱点を突く武器を具現化するところから始まる。ドーネルの能力を打破する方法を見付け、状況は停滞した。互いに切り札を隠しつつ、相手の隙を探していた。
「なーに見てんのよ?」
「あ…っ!」
「しぃー!そだ、あっちに天使がいるからよろしく」
「はっ、は…」
「しぃーってば!もー!」
傍観する悪魔に指示を与えた本人は二人の領主の戦いを見ていた。
先に仕掛けたのはラッシュであった。大剣を具現化し大きく振りかぶった。それに対し、ドーネルは体を軟性硬玉に変えて身構えた。攻撃を受け流しつつ、大振りの隙を突けるよう集中した。
助走を利用し、大剣を勢い良く横に振るった。さらに、剣をすぐに消し、細身の長刀を具現化し体を捻りながら回転切りを放った。重い一撃の余力を生かした連撃である。その二撃をドーネルは軟性硬玉の弾力を生かして弾いた。攻撃の方向をしっかりと見極め、大振りの隙が更に大きくなるように仕向けた。
結果として、攻撃を誘いそれを上手く利用したドーネルに上手だったと言える。伸ばした腕を無数の棘に変え、ラッシュを貫いた。
「置いてかないでよね。あんまり先に行かれると」
守れないでしょ。
能力、オリハルコンシールド。
ドーネルの攻撃は真っ向から受け止められた。手応えからしてラッシュが具現化する物に似ている何かだとすぐに分かった。
「じゃまがはいった、な」
「あーやだやだ。これだから男は」
「危なかった… 」
「ありがとーは?」
「あぁ、感謝する。と言うと思ったか。近くで兄が危険になるのを見計らっていたくせに」
「なーんだ、バレてたか」
ラッシュを助けたのは、ラッシュ領、領主代理、カーナ・ランディールであった。能力は名の通り、盾を具現化する。
「次が来る」
「って、後ろに隠れないでよ、ね!」
セカンド・シールド!
全方向から迫る棘をドーム状の盾で凌いだ。
「行っちゃえ!」
「あぁ、貰った」
ドーネルの死角にあたる後ろに隙間を作り、ラッシュは接近し終えていた。反撃するが数回の攻防の後、ラッシュは距離を置いた。
エイト・シールド。
超巨大な盾がドーネルを押し潰した。
「ふぅ、もう少し離れてもよかったか」
ラッシュは巻き上げられた砂埃を片手で払った。そこへカーナはにやにやとしながら近付いた。
「私のおかげだからね」
「お前の手柄だ。よかったな。足元に注意しろ。地中に棘を潜ませてるかもしれない」
「もー、可愛い妹が頑張ったんだよ。もっと褒めてもいーんだよ?」
「よくやった。これでいいか?」
「もっと気持ちを込めて!って、どこ行くの?」
「領主がこれで終わりのはずがない。捕縛系能力者を連れてくる」
「えー、私一人?」
「近くに何人か潜ませている。安心して一人でいろ。それと…いい連携だった……」
「え?」
「何でもない」
ラッシュは他の激戦区に向けて飛び立った。
◇◇◇◇◇
これは急がないと!!
ピリアルトは奇襲を仕掛けながら断片的な異変を繋ぎ合わせていた。数をこなすほどにそれが確信に変わった。
「ホバッち!」
「おぉ。どうしたピリアルト?」
「戦うの止めて一回帰ろう。多分、今日は本番じゃない気がしてさ」
「…理由は後で聞こう。そうなると、中央が心配だ」
「じゃ、ボクは先にノーちゃんとレニアちゃんを…」
「行かせっと思ってんのか?」
能力、ブラスター・ショック!
能力、ディプト・トリガー。
ホバックはパラジエルの爆撃を成長させた蔓を何重にも重ねて防いだ。
「何で天使と悪魔がつるんでんのかは聞かねぇよ。ここで死ぬからな!!」
再び繰り出される爆炎に二人は飲み込まれた。
「副長、二人の姿はありません!探しますか?」
「いらね。追っ払えたならそれでいい。それより、他の状況は?」
「はい。こちらに被害はあるものの、作戦通り中央に来た天使を一網打尽にすることに成功したようです」
「領主は何人戦った?」
「天使がグラウスとドーネル、こちらはラッシュのみです」
「よし。配置を変えずにここを陣取る。敵が来たら誘い込んで囲め」
「はい」
長い戦いは始まったばかりである。




