魅了の仕方
一足早く魔人界側に着いたピリアルト。ホバックもボルートもおらず一人で戦うことになってしまったが、能力的に単独行動が好ましいため進行する敵にわざと囲まれに行った。
「見たことのない奴だ。貴様、所属は?」
「何だっていいでしょう。敵だと思うなら掛かってきなよ」
ピリアルトの挑発に全員が攻撃を仕掛けた。
「この数を相手に愚かな…」
「立ち去るには早いんじゃないかい?」
「!?」
平然と佇むピリアルトは囲んでいた悪魔全員を倒していた。
「貴様、何をした!」
「さぁね。それを考えるのがお客さんでしょう?」
能力、稚拙な手品。
「種も仕掛けもございません」
「何を…!?」
そう言い残すとピリアルトは姿を消した。
ピリアルトの役目は敵を撹乱することであった。一ヶ所に留まらず少しずつ戦力を削ぐことに尽力していた。そして、大物が釣れるのを待っていた。前線の異常を取り除くために領主が出てくるであろうと。
「ふぅ…」
持って来た水筒の水を飲み、小さな地図に印を付けた。戦闘開始から数時間が経っている。少しでも気を休めることが大事である。その点、ピリアルトは間の取り方が上手かった。
もう少し休んだら次は奥に行ってみようか。
そして、その性格と戦い方を理解しているアイゼンの配役は最適だといえる。
ピリアルトが戦局を大きく変えるのはもう少し後である。
◇◇◇◇◇
「下がってろ!!」
軟性硬玉、ソウゾ・ラフィア。展性の性質を利用し腕を伸ばす攻撃を仕掛けてきた。それをザックは逸らしていた。
「レイス!何とかできねぇか!?」
「言っただろう!天気の操る以外に何もできない!」
「おめぇら二人とも使えねぇじゃねぇか!」
攻撃に転じる間もなく繰り出される連撃を逸らすので精一杯だった。
「くそっ!ラチがあかねぇ!なら…!」
ザックはの目前に迫る拳をイルベンの元へ逸らした。
「伸びきった今なら無防備だ!触れ!」
「言われなくても!」
拳を縮めるより早く、イルベンは手を伸ばした。
しかし、腕から無数の棘が突出しイルベンを襲った。
「くっ…そっ…」
「イルベン!!」
「おい、勝手に動くんじゃねぇ!」
続いてレイスを狙う棘をザックは逸らした。ドーネルが変質したのは鋭棘昌石、ウラウルイルトと呼ばれる鋭利で先の尖った宝石であった。
「おい!気ぃ失うんじゃねぇぞ!」
イルベンの能力がなくなれば勝つことが不可能になる。だが、助けに行く暇はない。
「イルベン!イルベン!」
「死ぬんじゃねぇ!!」
「つぎはそっち、だ」
くそ!手数が多すぎる!捌ききれねぇ!!
ザックの能力をすり抜けた攻撃がレイスを襲った。
それと同時にイルベンの能力が解けた。周囲からの干渉を受けるようになった。そこでザックは気付いた。地面が濡れていることに。
「ご苦労」
能力、オリハルコンソード。
剣を持つ悪魔がドーネルに襲い掛かった。
「だれ、だ?」
「ラッシュ領、領主。ラッシュ・ランディール。お前の首、貰いうける」
「ころしてやる、よ!」
全身を最高硬度の宝石、シュドルニアに変えたドーネルはカーサスの剣を防いだ。
「今のうちだ!逃げるぞ!」
ザックとレイスはイルベンを引き擦り距離を取った。
「何でここが分かった?」
「ここの上空だけ雷雨にしておいた。異変を察した誰かが駆け付けられるようにな」
「他の天使が来てたらどうすんだよ、ってのは置いといて。やるじゃねぇか。んじゃ、共闘は終わりだ。おれぁ、嬢ちゃんの守らねぇとよ」
「ま、待て!」
「待たねぇよ。とりあえず助かったぜ。まぁ、死んでなかったらまた会おうや」
ザックは空を飛び、周囲を見渡した。ノーリアの心配はしておらず、同じく戦闘向きではないレニアを探した。すると、先ほど戦っていたファースが横たわっていた。胴には穴が空き、すでに亡くなっていた。遠距離でレーザーを放った者だろう。そう思ったザックはなんとなく会釈した。
「どこだ嬢ちゃん?いたら返事してくれ」
「あ、いたいた!」
レニアの手を引いたノーリアがザックの元へ駆け寄った。
「もう一人はどうした?」
ノーリアと交戦していたツアンの姿が見当たらない。疑問に思ったザックは尋ねた。しかし、その返答は予想外だった。
「うん?蹴ったらどっか行っちゃったよ」
「あ、あぁ、そうか?」
ザックにはその言葉の意味が分からなかった。
近くの領主の戦いに巻き込まれないよう三人は身を引いた。




