勝利への道標
戻ったアイゼンはホバックと共に地図を眺めた。そして、現時点で入手した情報と照らし合わせた。
天元界では。戦闘派のグラウス領、ジェネックス領、ドーネル領。能力派のボルート領、ブラン領、ヴリエスト領。
ここでの能力派は戦闘向きではなく補助や防衛に向いた能力を有していることが多い。単独では十分な力を発揮できないが数を増すほどに手強くなる。だが、一時的に協力するもののジェネックス領とボルート領、グラウス領とヴリエスト領は仲が悪いためそこを弱点として攻めることもできる。
それに加え。魔人界、四領。カーサス領、タリエット領、ラッシュ領、アキュエル領。少しながらも能力については把握したが、
「ボルートは大丈夫だろうか…?」
◇◇◇◇◇
アイゼンと別れて二ヶ月後。天元界では領主の集会が行われた。そしてそこには当然ボルートも呼ばれていた。場所は最強と言われている領主、グラウスの元へ集まった。
「…すんげぇプレッシャー」
集結した領主とその補佐の威圧にボルート気圧された。そして、一人では心細いということで連れてきた妹に助けを求めた。
「兄ちゃんもう帰りたい…」
「帰っちゃえば?」
「んなことしたら殺されるって」
そうこうしている間に全員が揃い、グラウスが口を開いた。
「えぇ、皆さん。本日は集まっていただき、えぇ、誠にありがとうございます。突然だったのでジェネックス領主がいませんが、えぇ、話を進めさせていただきます。まず始めに、この集会の意味をお話しさせていただきます」
グラウスは隠し持った何かを読み上げるようにして呼び掛けた。ボルートよりも緊張しているのは誰が見ても明らかだった。
「ご存じだと思いますが、えぇ、ヴリエスト領主のお父様。エウィン元領主の封印が解けることは事実であり、えぇ、ディックとその仲間が近々野放しになる可能性があります。そこで、天元界では一時停戦の後、ディック達を阻止することに尽力することを、えぇ、約束する集会になっています。不明な点も多いのでそれを話し合っていこうと思います。ここまでで何か質問はありますか?」
「グラウス。もっと堂々足したら?貴方は少なくとも今は皆の上にいる者なのだから」
「どうも慣れなくて。すいません」
小言でグラウスはサイリスに注意された。
「はいはーい。うちら参加しなくていい?」
手を挙げて発言したのはブラン領主だった。それもそのはず、ブランの能力は治療に特化したもので戦闘向きでないからだ。
「はい。それは皆さんも知ってると思うのではい。ブラン領主には負傷者の治療に専念してもらって結構です。他に何かありますか?」
そこでボルートはアイゼンとのやり取りを思い出した。
「アイゼンさ、領主でまとまるかもしんないのに悪魔と戦うのって無理じゃね?方向も反対側だし」
「もちろんそのことも考えている。お前は集会や話し合いのときに発言すればいい」
「何て?」
「こう言うんだ」
「あの、オレ、ディックとかヤバイのと戦うの怖いんで悪魔の足止め役やっていいっすか?」
アイゼンはボルートに説明した。今回の天使と悪魔の戦いには一つの目的がある。それは、ディック、もしくは、その仲間を殺すことである。その条件を満たした領主が天元界、魔人界で有利な立場になり、行く行くは全土を支配する権力者になることが考えられる。力を有していることを見せつけて他を威圧、牽制することにも繋がる。
「んっと…簡単に言うと?」
「ディック達を殺せた奴が偉くなるということだ」
「おぉ、分かりやすい」
全領主がいち早くディックを仕留めたいと考えているということは、仲間であっても競争相手であるということ。それを利用するのだ。
「お前が囮になると言えば、競争相手は減るうえに、悪魔に邪魔される可能性も低くなる。断る奴はいないはずだ」
「なるほど。それなら怪しまれず悪魔側に行ける!」
アイゼンの説明を聞き、ボルートは自分なりに言葉をまとめて発言した。わざとらしくなく、それっぽい雰囲気を出すことを努力していた。
「ちょっと待ってください」
「!」
ボルートに声を掛けたのはグラウスだった。
やべっ、何か変に思われたか!?
「ありがたい提案ですけど、えぇ、それだとボルート領主が一番被害を被るのではないですか?」
「え?あ、あぁ、オレらの心配のしてんのか。いやいや、多分そっちの方が向いてるし、マジでヤバそうなのとは戦いたくないんで」
「そう、ですか…」
「まかせた」
「は、はい」
ドーネルは席を立ち、ボルートの肩を叩きながらグラウスに呼び掛けた。
「分かりました。本人がそう言うのならお願いします。では、次に、えぇ、戦いの日と場所ですが……」
「おっと、メモメモ」
「兄ちゃん何してるの?」
「忘れないようにしとかないと」
「ふぅん」
と、言ったがこの会話の内容をアイゼンにしっかり伝えないと怒られると思ったことはノーリアには言わなかった。




