自責と後悔
「やったぞ!師匠!!」
「いいから早くメルの所に戻れ!」
「は、はい!」
不意打ちとはいえ大役をこなしたバーキンスは少し舞い上がっていた。だが、リースの喝で平常心を取り戻し、メルトリープの元へ戻った。
ウラビスは意識はあるようだが動けなくなっていた。骨折や肉体の疲労が限界に達していたのだった。
「あとはお前だけだ。エウィン!」
「うるさいなぁ。言われなくても分かってるよ」
ディックは攻撃の機会を伺っていた。一撃で決めなければいけないと分かっていた。攻撃回数を増やすということは、相手にも触れる機会が増えるということになるからだ。
「…あの娘本当に邪魔だな」
エウィンの呟きをディックは聞き逃さなかった。
「バーキンス!」
「了解!」
言われなくてもバーキンスは何をすべきかを察し、メルトリープを突き飛ばした。「敵に狙われているから庇え」ということだった。メルトリープは触れられたことで顔を少し歪めた。
右手でメルトリープを押した。
その時、
能力、クル・オリカルコ。
その手首に金属製の手錠が形成された。
その速さはレッズの認識してから対応できる限界を越えていた。そこで初めて今までは手加減していたことに気付いた。
「やっべ…!!」
「バーキンス!!」
能力、バリデビ。
体を磁石に変えるアグナの能力でバーキンスは引き寄せられた。そして、アグナの元に一番近いのはエウィンであった。
全てはエウィンの思い描く通りであった。ナポロン、ヒイス、ウラビスはディック達の魔力を消耗させ、アグナ、トゥティスはジョインを足止めすると見せた罠だったのだ。そして、この罠の相手はディックであったはずだ。ディックを確実に殺すために。
だが、封じる能力を持つメルトリープを優先した。そして、それを庇ったバーキンスの判断は正しかった。卑屈ではないがディックより、メルトリープより価値がないと自覚していたからこそ、躊躇なく体を張ることができた。
全てが想定外であった。
「な、何で…何でだよ……」
引き寄せられるバーキンスの手を、メルトリープが掴んだ。それに抗う術はなく、二人はエウィンの元へ近付いていく。
「うわぁぁ!」
「ディック!!」
「おぉ!!」
全員が焦る。思考を巡らせ、最善を模索する。リースの呼び掛けにディックは足に力を込め、地面を力強く蹴った。
それに対し、エウィンも焦っていた。一度きりの策を人間相手に使ったことを後悔したが、狙っていた対象も一緒になって来たのだ。この好機を逃すまいとする焦りと、その後のディックをどう対処するかを考えていた。
何故、嫌がっていたメルトリープがバーキンスの手を掴めたのか。咄嗟であるとはいえ、危険であることは十分分かっていたはずだった。
ただ、エウィンとメルトリープには一つだけ能力に差があった。発動できる能力の間合いである。触れる前に能力を封じる算段がメルトリープにはあった。当然、失敗することも覚悟していた。極限まで集中し、射程距離に入るまで待った。
「バイバイ…」
エウィンは二人を殺せることを確信した。
だが、それは失敗に終わる。
トゥティスとアグナに近いということは、その場にいたもう一人もその限りではないというこであった。
能力、時限雷電。
「もうちょっと休ませてほしいよ」
陰で横になっていたジョインが木に寄り掛かりながら姿を表した。
「隠れていたのに悪いな」
「よく言うよ。能力を発動させろ、ってしつこいからさ」
電撃を食らったエウィンは体が硬直し、痛みで思考が止まった。そして、その間にメルトリープの間合いに入った。
能力、クリティカル・アウト。
近くにバーキンスがいることもあり、能力を封じることにした。
メルトリープが能力を発動した瞬間、レッズだけは青ざめた。
「…そこの人間といい、今の電撃といい、ここまで追い詰められて切り札を使うことになるなんて。おかげで魔力ももう空だ」
電撃に耐えたエウィンは最後に笑った。
「全員逃げるぞ!!」
レッズが声を張った。
「もう遅いよ」
メルトリープには能力が届く範囲があった。そして、それはエウィンにも同様にあった。
あの時、メルトリープとエウィンは同時に能力を発動し互いに干渉した。
「うっ…ぐぅ…!!」
「メル!?はっ!これはさっきと同じ…!」
体が内側か膨れ上がるような感覚に襲われた。エウィンが二人の魔力を暴走させたのだ。
メルトリープは自分に能力を使った。だが、エウィンから受けた魔力が多過ぎたことと、能力が強過ぎたことで解除は不可能だと察した。
「…バーキンス……その、今までごめんね」
能力、クリティカル・アウト…。
メルトリープは魔力量の少ないバーキンスは助けられると考え、そして触れた。
「何でだよ…そんなこと……今言うなよ!!」
魔力が暴走したメルトリープは大きく膨らみ破裂した。




