期待と楔
冷気による攻撃で飛行することが困難となった。全員が凍傷を負い、地上に降り立った。
そこでレッズは思考した。エウィンの能力は強化ではなく、「枷を外す」と言った。それはつまり、体が壊れないようにする制御を無理矢理解放するものであると考えた。力を解放すれば強くなるのは当然である。だが、それにより魔力が抑えられず体が膨張し、ナポロンに関しては破裂した。
諸刃の剣。いや、それよりも悪質だ。もし、殺すつもりでディックやリースに触れていたら…。考えたくもないな。
トゥティスもエウィンにより無理矢理起こされ能力を発動させられた。ジョインが倒し、行動不能にしたことで油断していた。こうなると予想してのことならば、相当の切れ者だ。
「皆、動けるか?」
「俺は大丈夫だ!」
「私も」
「…心配いらねぇ」
「!」
能力、パーラー・エンディエンド。
冷や汗を流すリース。その魔力はほとんど無かった。持久戦、かつ、レッズを守りながらの戦闘の結果だった。
「で、どうすんだ?触れちゃいけねぇあいつを倒すにはどうすればいい?」
「…待て」
「何かいい考えでもあんのか?」
「いらねぇよ。オレはまだやれる…!」
「レッズ、指示をくれ!」
「黙ってろ!今は待つんだ!」
「あ!」
殺気立った中、メルトリープは気付いた。
「……ぉぉぉうおおぉぉぉらぁぁぁ!!」
そして、事が起きてからディックとリースは気付いた。
突然空から現れたバーキンスがエウィンの脳天に拳を振り下ろしたのだ。
「バーキンス!?」
「いや、カフィーア!」
「途中で拾ってきたの」
バーキンスは空を飛べないためメルトリープより遅れた。だが、そのおかげでカフィーアと合流することができ、大規模な氷を目印にディック達の元へ来ることができた。そして、敵だと思われるエウィンの頭上でバーキンスを落とした。
「それよりも…バーキンス!大丈夫か!?」
「痛いけど大丈、うっ!何っ、だ!?体が……!」
「…痛いのは僕の方だよ。頭から血が出ちゃったじゃないか」
能力、ラクト・リエット。
「弾けなよ」
「バーキンス!」
「おい!!」
「掴まって!!」
「メル…!」
メルトリープは震える足でバーキンスに駆け寄った。凍傷でおぼつかないその足で急いだ。
能力、クリティカル・アウト!
メルトリープはバーキンスの内側で発動する能力を封じた。
「はぁ、はぁ…。よく分かんないけど…助かった……」
「間に合った…はっ」
メルトリープは掴んだ手を拭った。
「君はいらないなぁ。その能力、目障りだよ」
「「!?」」
「させねぇ!!」
メルトリープに接近したエウィンをディックが追い払った。
「ディック、触れるなと言ったろ!」
「うるせっ!それにさっきので分かったろ!触れた後、メルに治してもらえばいい!もし、間に合わなくても」
一撃で仕留める!
硬化した右腕でエウィンを指差した。
「その頭かち割ってやるよ」
「…」
ディックは知っていた。エウィン自身の身体能力は低い。そして、その性格はわがままな子供と同じであることを。自分の思い通りにならない、痛みに滅法弱い。そこが弱点だと。
「レッズ。勝算はあるの?」
「お前の能力が通じればとっくに終わっているがな」
カフィーアの能力は魔力量が少ない者に幻覚を見せる。エウィンはもちろん、強化されたウラビス達にも通用しなくなっていた。
「カフィーア。お前はリースの側にいろ。バーキンス!お前はメルトリープを死守しろ!」
「了解!!」
「ちょっと!」
「ディック!…あいつはお前が倒せ」
「任せろっ!!」
レッズの指示に全員が納得した。だが、レッズだけは悩んだ。カフィーアが戻ってきた時点で目的は達成した。この場から逃げることもできた。それよりもエウィンが後々の脅威になる前に倒すべきだと判断した。それが正しい選択だったのか、悩んだ。
「こっちにはウラビスが!」
「くそっ!リース!お前はカフィーアを守れ!」
「うるせぇ!端っからそのつもりだ!!」
駄目だ。今のリースが真っ正面からウラビスと交戦してはいけない。数値の大小でレッズは察した。そして、残る手段は一つだった。
「バー……!」
「させるかあぁぁぁ!!」
「一発に込めろ、てめぇ!!」
呼ぶ前に本人は動いていた。
リースの「一発に込めろ」は組手の時によく言われた。攻撃する部分に魔力を集中させる。それを“込める”と表現した。その意味がなんとなく分かった。
バーキンスが繰り出す初撃には影が纏われていた。
「!?」
「外すんじゃねぇぞ!!」
ほとんど空になった魔力を絞り出し、それをバーキンスに託した。
横から飛び出したバーキンスに、ウラビスは対応できなかった。
「うおぉぉぉぉおぉッッ!!」
ウォンステッド・ナックル!!!
一発一発に力と魔力を込めた連撃をバーキンスは放った。




