能力、ラクト・リエット
ウラビス、ヒイス、ナポロンは負傷により動きが止まっていた。それ以上の攻撃は不要と判断し、ディックとリースは攻撃を止めた。
「まだ警戒を解くな。今周囲を確認する」
リガードゥルムの能力でレッズは周囲の状況を確認した。近くに二人の魔力を感知した。カフィーアとジョインから逃れたということはそれなりの強者であると判断した。
「一人、新手だ。注意しろ」
一人で接近するということは自分の力に自信があるか、策を用意しているか。どちらにせよ警戒するべきだ。
「何者だ?」
「…いなぁ、すごいなぁ。本物か、本物だ」
「気持ち悪りぃ」
「変に刺激するな。だが、いつでも攻撃を仕掛けられるようにしていろ。メルトリープは能力が分かるまで待機だ」
「そっか、名前を言わなきゃ。私は、僕は、エウィン・ズオー。君達に会いたくて、友達になりたくて」
エウィンは手を差し出した。握手を求めているが、罠であることは明らかだった。
能力、残像。
「馬鹿が」
リースは遠距離からエウィンを攻撃した。
「様子見とかいらねぇだろ。近距離向きなら、オレがセオリー通りやるだけだ」
しかし、その攻撃はヒイスによって止められた。
「馬鹿はお前だ。能力が分からない敵に迂闊に攻撃を仕掛けるな。だが、今の攻撃で魔力の揺らぎを感知した。こいつがウラビス達を操っていてる者だ」
レッズはあえて伏せた。エウィンから感じ取った魔力の量か一番多いディックを遥かに越えるものだと。
冷静に考えればそうだ。領主を操るとなれば相当の魔力を使うに決まっている。そして、その能力はとてつもなく強力でなければ不可能だ。
それに加え、行動不能のヒイスを動かしたということは駒は他にはいないということだ。体が膨張したウラビス、ヒイス、ナポロンにさえ警戒していれば大丈夫だ。
「おい。そいつはもう戦えないだろ。それでも戦わせるのか?」
「戦う?違うか、違うよ。皆友達だから。僕を助けてくれるんだよ」
「…てめぇ、いい加減にしろよ」
「そういう勘違い野郎は」
「「ぶっ倒すッ!」」
軽率な態度とそれを当たり前だと思い込んでいる奴を許せない二人に火が着いた。
「ディック、防御退かせ。オレがあの馬鹿を殺る」
「うっせぇな、分かってるって。んじゃ、レッズ見てくれ」
「…はぁ。結局、私か」
怒鳴ろうとしたがそれで二人の意思が変わらないと思ったレッズは、言葉を飲み込んで補助に専念することにした。
「お前は行くなよ」
「分かってる」
心配はしていないが一応メルトリープにも釘を刺しておいた。
能力、鉄の心臓!
硬度を上げた拳がヒイスに直撃した。しかし、
「いてっ」
「何?」
レッズはすぐにヒイスを見て変化を解明した。
「硬度を更に上げろ!今のヒイスは世界最高硬度の宝石、シュドルニアだ!」
「ディック。世界最高だとよ。そんなんに負けんのか?」
「はぁ?んなわけねぇだろ!!」
一点硬化。
ディックは右腕に全身の硬化を集めた。
多層硬化。
魔力が多いため一点硬化の上にさらに硬化を重ねた。
「で、世界なんだっけ?」
負けず嫌いのディックの硬度はヒイスのそれを上回った。
「全身もこれにできるけど」
「自慢してんな。さっさとやれ」
ディックの渾身の一撃は軽々と最高硬度を砕き、ヒイスを遥か後方に吹き飛ばした。
一方でヒイスが時間を稼いでいる間にエウィンはナポロンとウラビスに触れていた。それにより二人は強化されていた。
「こそこそしてんじゃ…」
「危ねぇ!」
残像を放とうとするリースをディックが庇った。ウラビスの斬撃を間一髪で受け止めたのだった。
まただ。エウィンに触れた者は強くなる。だが、明らかに限度を超えている。能力は制御できてこそ最大の力を発揮する。自我を失い、体の原型も留めない。それを強化と言えるか?
「リース!ディック!連携技だ!エウィンには絶対触れるな!」
「「!!」」
ディックは左腕も硬化させ、力を貯めた。リースはディックに影を纏わせ周囲に防壁を作った。
「いくぜッッ!!」
ウォンステッド・アイアン!!
繰り出される拳が一つ一つ影を生み、影を残す。ディックの連撃はエウィン達を飲み込んだ。硬度と威力を持つ拳の影を防ぐことは不可能であった。
不可能であるはずだった。
エウィン達を影が包み込むと同時に光が瞬いた。
「あ、壊れる」
閃光の元はナポロンであった。淡く残った光が消えるとナポロンの体は弾け飛んだ。能力が封じているにも関わらず能力が使えたのは何故か。技を放ったリースとディックは困惑した。
「な、何でだ!?オレは、全力の魔力を込めたぜ!」
「慌てんな!次、もういっちょいくぞ!!」
能力、アイス・ワールド。
次は無かった。
レッズの注意をすり抜け、地表でトゥティスの能力が発動した。トゥティスは意識が無かった。それなのに何故か。
「ここでネタばらし。私の、僕の能力は枷を外す」
能力、ラクト・リエット。




